「GoogleはChromeを売却する必要がない」との判決、ただし自社サービスの独占契約は禁止&AI検索の未来を見据えて競合他社へのデータ共有を義務化へ – GIGAZINE


2025年9月2日、アメリカのコロンビア特別区連邦地方裁判所のアミット・P・メータ判事は、Googleが検索市場で違法に独占を維持したとされる独占禁止法違反訴訟で、Googleに対する是正措置を言い渡しました。この是正措置では、Googleが独占を維持したことが認定されたものの、司法省が求めていた「Chrome事業の売却」といった厳しい是正措置は退けられました。その一方で、競争を促進するためのいくつかの重要な是正措置が命じられています。

Google Search Engine Monopoly Ruling.pdf
https://www.texasattorneygeneral.gov/sites/default/files/images/press/Google%20Search%20Engine%20Monopoly%20Ruling.pdf

Google’s statement on Sept 2025 Search DOJ decision
https://blog.google/outreach-initiatives/public-policy/doj-search-decision-sept-2025/

Google Doesn’t Have to Sell Chrome Browser, Judge Rules in Antitrust Case – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-09-02/google-not-required-to-sell-chrome-in-court-antitrust-ruling

この裁判は2020年10月に司法省が「検索及び検索広告市場において、反競争的で排他的な慣行を通じた独占状態を違法に維持している」としてGoogleを訴えたものです。この訴訟に対し、メータ判事は「Googleの行為は一般検索サービスおよび一般検索テキスト広告の独占にあたる」という判決を下しました。

Googleが金銭を支払ってスマートフォン検索の地位を維持しているのは独占禁止法違反と連邦判事が判断 – GIGAZINE


そして、司法省はGoogleへの是正措置案として、Chromeの売却・AndroidからのGoogle検索とGoogle Playの切り離し・検索データのライセンス供与を要求しました。

GoogleにChromeの売却・Androidからの検索とGoogle Playの切り離し・検索データのライセンス供与などを強制するよう司法省が迫る予定 – GIGAZINE

今回メータ判事が発表した是正措置の意見書では、Googleが自社の検索サービスであるGoogle検索、Chrome、GoogleアシスタントやGeminiの提供に関して、排他的な契約を新たに締結したり、既存の契約を維持したりすることが禁止されました。具体的には、AndroidのGoogle Playストアのライセンス供与を条件にこれらのアプリの配布、プリロード、特定の配置を義務付けることができなくなります。

ただし、Appleなどのデバイスメーカーに対し、自社の検索エンジンをデフォルトとして設定してもらうために多額の支払いを行う契約は引き続き認められました。メータ判事は、これらの支払いを禁止すると、AppleやMozillaのような他企業の多大な収益を奪い、「深刻な、場合によっては壊滅的な損害」を与えるリスクがあると結論付けています。

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そして、司法省が求めていたGoogleのブラウザ事業Chromeの売却命令は退けられました。メータ判事は、「Googleの独占力とChromeのデフォルト設定との因果関係が証明されておらず、Chromeの売却は非常に煩雑でリスクが高く、製品の大幅な劣化と消費者利益の損失を招く可能性が高い」と判断しています。また、将来的な救済措置が失敗した場合にAndroid事業を売却させるという案も退けられました。

加えて、適切な競合他社が独自の検索技術や能力を開発する間、高品質な検索結果と検索テキスト広告を提供できるよう、Googleは通常の商業的条件で検索および検索テキスト広告のシンジケーションサービスを提供することが命じられました。

さらにメータ判事は、生成AIの台頭が検索市場の競争環境を根本的に変えうる「ゲームチェンジャー」であるとの認識を明確に示しました。当初の裁判ではほとんど議論されなかったAI技術は、是正措置を検討する段階では「初期の競争上の脅威として真正面から」取り上げられ、判決の方向性を大きく左右する要因となりました。

メータ判事は、Googleの独占が続く検索市場に風穴を開ける可能性を秘めているのがChatGPTやPerplexityといった生成AIチャットボットであると見ており、この訴訟の目的が、単に既存の検索エンジン間の競争を促すだけでなく、「Googleの検索における優位性が生成AIの分野に引き継がれないようにすること」にあると断言しています。


そして、AIがGoogleの独占をさらに強化しかねない構造的な課題を指摘した上で、メータ判事はGoogleに対し、適切な競合他社へのデータの共有を義務付けました。

この「適切な競合他社」とは、従来の検索エンジン市場で競合するMicrosoftやDuckDuckGoだけではなく、OpenAIやPerplexityなど、AI検索においても競合する企業、加えてこれから検索市場への参入を計画している企業も含まれるとのこと。また、共有されるべきデータは検索インデックスデータやユーザーの検索行動に関するデータであり、司法省が共有を求める広告データやナレッジグラフは対象外となっています。なお、共有されるデータは専門の技術委員会の監督のもとで匿名化処理などの厳格なプライバシー保護措置が講じられる必要があります。

メータ判事はGoogleと司法省に対して、今回提示した是正措置意見書に基づいて協議した上、修正された最終案を9月10日までに提出するよう命じています。しかし、最終的な是正措置が確定した後も、Googleが上訴する可能性があるため、実際に発効するのは2027年後半から2028年初頭になる可能性があります。

Googleはこの判決を受けて、Googleサービスの配布制限や競合他社との検索データ共有義務については、ユーザーやプライバシーに与える影響を懸念しており、決定を慎重に検討していると述べています。一方で、ChromeやAndroidの事業売却というより厳しい措置が「検索の配布という本来の焦点を越え、消費者とパートナーに損害を与えたであろう」ことを裁判所が認識した点については、肯定的に評価しました。

DuckDuckGoのガブリエル・ワインバーグCEOは、命じられた是正措置ではGoogleの違法行為に適切に対処できないとし、「Googleは引き続きその独占を利用して、AI検索を含む競合他社を妨害することが許されるだろう」と批判的な声明を出しました。

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