MacPaintは1984年にAppleがリリースしたMacintoshに標準搭載されていたペイントソフトで、マウス操作やツールパレット、コピー&ペースト、ズーム編集といったグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の原型を示した革新的なソフトでした。1ピクセルあたり1ビット、つまり黒か白の2色しか表示できない限られた表現の中で作成された「MacPaintアート」について、Appleのユーザーコミュニティを創設した経験のあるブロガーのアンソニー氏がまとめています。
decryption’s blog – MacPaint Art From The Mid-80s Still Looks Great Today
https://blog.decryption.net.au/posts/macpaint.html
バークレー・マッキントッシュ・ユーザーズグループ(BMUG)は、1980年代にカリフォルニア大学バークレー校を中心に活動していたMacユーザーの大規模コミュニティで、初期のMacに関する情報交換やフリーソフトの配布、技術サポートなどを提供していました。BMUGは1980年から90年代にかけて、ソフトウェアや画像を詰め込んだCD-ROMを発行しており、そのCD-ROMには初期のペイントソフトであるMacPaintで作成されたアート作品が数多く含まれています。
アンソニー氏はBMUGのCD-ROMを閲覧して当時のMacintoshに関する情報を得ていた際に、MacPaintアートの素晴らしさに気付き、1980年代~2000年代の貴重なファイルアーカイブにすぐにアクセスできる「DiscMaster」で1万8000点のMacPaintアートをくまなくチェックしたそうです。MacPaintの画像は現在のOSでは直接開く事ができませんが、Discmaster上ではサムネイル付きで閲覧可能です。
以下の画像は、1980年代に開発されたMacintosh向けデータベース管理システムおよび統合開発環境の4th Dimensionを展開した会社である「ACIUS」から見た世界をイメージして、1980年代〜90年代のMacintosh文化やソフトウェア業界の象徴を描いたMacPaintアート。
MacPaintで描かれたポルシェ・911 Carrera。黒と白しか使えずグレースケールすらないMacPaintで、陰影や光沢感、立体感を出しています。
暗い路地裏。
立ち並ぶ摩天楼。
風景画。
宇宙空間を飛ぶ衛星など、さまざまな明るさや暗さがMacPaintの限られたリソースで見事に描き上げられています。
そのほか、未来を感じさせるアートもアンソニー氏は数点取り上げています。例えば以下は、ロボットが料理、配膳、選択をしている様子。
サルバドール・ダリの有名な「記憶の固執」をモチーフに、中央に古いタイプのMacintoshが配置されたアート。右下にあるLouis Markoya(ルイス・マルコヤ)という署名はダリのアシスタントだったことで知られる実在のアーティストで、1980年代に存命の可能性もありますが、1ビットアートを残したという記録はないため、おそらく本人の署名ではなくダリの絵をパロディした一環のユーモアです。MacPaintのコミュニティには、有名人の名前を使ってサインしたり、架空の作者名を入れるジョークが多く存在していたと言われています。
初期型のキーボードと1ボタンの小型マウスを備えた初代Macintoshセット。
そのほか、リアルな人物絵もMacPaintで描かれています。
リアルな人間の手。この絵にある署名されているGerry Phibbs(ジェリー・フィブス)という作家は、1980年代後半から90年代前半にかけて活動していたMacPaintアーティストです。
MacPaintアートの一部には、作者の署名が残されているものもあります。アンソニー氏は「MacPaintアーティストを探し出して、最近何をしているのかみてみたら面白いと思います。40年前の9インチの画面で、1ビットの表現でこのような素晴らしい作品を制作した人は、その後どのような成果をアーティストとして上げたのか見てみたいです」と語っています。
ソーシャルサイトのHacker Newsでもアンソニー氏のブログおよびMacPaintアートが話題になっており、「制約こそが芸術を形作り、芸術そのものにさえなるのです。制約を巧みに操り、一見不可能に見えることを実現することこそが、芸術の正当な一部なのです」と1ビットの限られた世界だからこそ素晴らしいアートが作られたという意見や、「文化、テクノロジー、美学の交差点について考えるのは興味深いことです。ゲームは絵画などでは歴史的な美学を取り入れることがありますが、映画はそうではありません」というコメントなど、ピクセルアートの良さやテクノロジーとアートの関係について考える議論が交わされていました。
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