GoogleはYouTubeにアップロードされた動画をAIのトレーニングに使用しているがクリエイターはあまり把握していないことが判明 – GIGAZINE


Googleは、チャットAIのGeminiや最大4Kまでの解像度の動画を作成できる動画生成モデルの「Veo 3」を展開するにあたり、YouTubeにアップロードされた膨大なライブラリをトレーニングに活用していますが、その事実をクリエイターの多くはあまり認識していないことが明らかになりました。YouTubeは動画クリエイターの権利を保護する姿勢を表明していますが、一部の専門家は投稿動画をAIのトレーニングに使うことは知的財産の危機につながる可能性があると指摘しています。

Google is using YouTube videos to train its Gemini, Veo 3 AI models
https://www.cnbc.com/2025/06/19/google-youtube-ai-training-veo-3.html


Googleは動画生成AI「Veo 3」をYouTubeショートに統合する計画を発表していたりアーティストの音楽を模倣するAI音楽生成ツールを開発していたりとAIツールへの取り組みに積極的です。一方で、YouTubeで「サードパーティーが自分の動画でAIをトレーニングすることを許可するかどうか」をクリエイターが選択可能にする仕様や、「リアルなAI生成コンテンツ」にラベル付けするためのツールを展開するなど、クリエイターの権利がAIによってみだりに侵害されないよう保護するための取り組みも積極的に実施しています。

2024年9月にGoogleは、クリエイターが自身の顔や声などの肖像がコピーされてほかの動画で使用されるのを防ぐためのAI検出ツールを発表しました。発表に際してYouTubeのブログ記事で「YouTubeのコンテンツのスクレイピング(情報の収集・抽出)を含む不正アクセスを検出してブロックするシステムへの継続的な投資を含め、利用規約が順守されるための措置を引き続き採用します」とプラットフォーム上のコンテンツをスクレイピングすることは利用規約違反であることを指摘しています。

YouTubeが顔や声を含むクリエイターの肖像のコピーを防ぐAI検出ツールを発表、AIのトレーニングのためのスクレイピングも厳しく批判 – GIGAZINE


YouTubeではコンテンツのスクレイピングを禁止しているのと同時に、YouTubeのコンテンツは「機械学習やAIアプリケーションなどを通じて、製品体験を向上させるために活用できる可能性がある」と示しています。一部の専門家は「Googleが自社の動画ライブラリを使ってAIモデルをトレーニングしていることはクリエイターやメディア組織に広く理解されていない」と指摘し、クリエイターやメディア企業にとって知的財産の危機につながる可能性があると問題視しています。

専門家が指摘する問題点として、YouTubeはプラットフォーム上にアップロードされている200億本もの動画のうち、どれだけの動画がAIのトレーニングに使用されているか、どの動画が使用されているかについて明らかにしていません。実際に、CNBCが複数の一流クリエイターや知的財産専門家に話を聞いたところ、誰も自分のコンテンツがGoogleのAIモデルのトレーニングに使用される可能性があることを認識しておらず、YouTubeからもそのことを知らされていなかったと回答しました。

CNBCの取材に対し、GoogleはAIのトレーニングにYouTubeの動画を活用していることを認めた上で、トレーニングには動画の一部のみを使用しており、クリエイターやメディア企業との特定の契約を順守していると主張しています。YouTubeの広報担当者は「私たちは常にYouTubeのコンテンツを活用して製品を改善してきました。これはAIの登場後も変わりません。私たちはガードレール(安全のための制限)の必要性も認識しており、だからこそ、AI時代においてもクリエイターがイメージや肖像権を守れるよう、強力な保護策に投資してきました。私たちは今後もこの取り組みを継続していくつもりです」と語りました。


クリエイターのデジタルアイデンティティ保護に取り組む団体の代表を務めるルーク・アリゴニ氏は「クリエイターが時間と労力、そして自らのアイデアを注ぎ込んで制作した動画を、YouTubeがAIのトレーニングのために取得している可能性は十分にあります。Veo 3は、これらのクリエイターの合成版、つまり粗悪な複製を作成してしまいます。これは必ずしもクリエイターにとって公平とは言えません。仮にYouTubeがどんな動画でトレーニングしたのかを明らかにした場合、クリエイターとの関係性に影響が出るでしょう」と批判的な意見を述べています。

Googleは、Veoを含む自社のAI生成製品に「補償条項」を盛り込んでおり、ユーザーがAI生成のコンテンツで著作権侵害の訴訟に直面した場合、Googleが法的責任を負い、関連費用を負担することを定めています。また、2024年12月にはYouTube投稿時の設定項目に「Third-party training(サードパーティーのトレーニング)」が追加され、自分たちのコンテンツでYouTube以外がAIモデルをトレーニングすることを許可するかどうか、選択できるようにすると発表しました。さらに、同じく12月にYouTubeはクリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシーと提携し、クリエイターが自身の肖像を含むコンテンツを識別管理して動画の削除をリクエストできるツールも発表しましたが、一部の専門家はこのツールの信頼度にも疑問を呈しています。


YouTubeのプレス向け発表によると、YouTubeには毎日2000万本以上の動画が投稿されており、2025年4月時点でYouTube上には200億本以上の動画が存在しています。専門家によると、プラットフォームの規模があまりにも膨大なため、わずか1%の動画をトレーニングに使用していたとしても、競合するAIモデルが使用するトレーニングデータの40倍以上に相当するとのことです。

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