ブローカーによって衣食住や働き口まで管理されているフィリピンの移民労働者と、その労働力に依存している台湾の半導体産業の実態について、非営利メディアのRest of Worldが取材しました。
Taiwan semiconductor boom runs on exploited migrant labor – Rest of World
https://restofworld.org/2025/taiwan-semiconductor-migrant-labor/
Rest of Worldによると、世界有数の半導体生産国である台湾は、 AI向けチップ需要の急増に対応するために近隣諸国から膨大な数の人材を集めており、特に生産ラインの作業員のほとんどはフィリピンから来た移民労働者で占められているとのこと。
台湾に来る移民労働者には、到着前からブローカーが割り当てられており、ブローカーは書類手続き、住居、食事、交通費、保険など労働者の生活のあらゆる物事を取り仕切っています。また、ブローカーは労働者から苦情を受けた雇用主との労使交渉も行うほか、労働者は転職するのにもブローカーの承認が必要になります。
このように、ブローカーと労働者の力関係は非常に不均衡なので、ブローカーによる影響力の乱用も非常に多く、中には基本的な生活用品に法外な料金を請求したり、労働者の苦情を握りつぶしたり、賄賂を要求したりするブローカーもいます。
台中にあるカトリック教会の聖職者で、労働者のための駆け込み寺となっているシェルターを運営しているジョイ・タジョネラ司祭は、Rest of Worldに「移民たちには、ブローカーは自分たちの味方だと教えられますが、実際のところブローカーは雇用主の代理人に過ぎないのです」と話しました。
by Hsiuwen Liu/Rest of World
Rest of Worldは、台湾の半導体産業で働く20人以上のフィリピン労働者と、業界の専門家に話を聞きましたが、労働者のほとんどは身元が割れたら帰国させられるので、名前は明かさないで欲しいとRest of Worldに頼んだそうです。
こうした労働者らに共通する不満のひとつに、給料の中抜きがあります。ブローカーは労働者に、毎月固定のサービス料を請求しており、場合によっては宿泊費、食費、交通費などの追加の料金も取られるとのこと。一部のテクノロジー企業は従業員にブローカー手数料を補助していますが、多くのフィリピン人労働者はブローカーに給料の5分の1を取られていると言います。
例えば、Rest of Worldの取材に応えたルイスさんは、7人部屋に住んでいましたが、1人当たり月々3000台湾ドル(1万4300円)の電気代を取られていたとのこと。これは、台湾の平均的な家庭の電気代のほぼ3倍です。こうした異常に高い電気代など、さまざまな名目でお金を搾取されたため、ルイスさんは半導体のパッケージングの仕事から逃げてシェルターに移り住むことを余儀なくされたとのこと。
ブローカーについて尋ねられたルイスさんは「彼らはみんな嘘つきです。おそらく、彼らは私たちの部屋だけでかなりの金額をもうけたでしょう」と話しました。
by Hsiuwen Liu/Rest of World
このような問題に対応するため、台湾の労働当局は外国人労働者の苦情を受け付ける24時間ホットラインを設置しており、寄せられた苦情は必要に応じて地方当局に照会され、調査が行われることになっています。
台湾労働部の広報担当者はRest of Worldに、ソーシャルメディアやラジオで労働者の権利を周知していることや、労働者の出身国との連携などの取り組みを行っていると述べました。
しかし、労働者と雇用者との間に紛争が起きると、ブローカーはそれを正式な苦情として受け付けるのではなく、「個人的な事情」で転勤させたり帰国させたりすることが多いとのこと。
タジョネラ司祭は「個人的な事情が最も多い理由です。会社や雇用主の責任にはなりません。いつも労働者のせいになります」と語りました。
移民労働者の中には、ブローカーから脱走して不法就労する人もいます。台湾政府によると、台湾の不法就労人口は2021年から2025年までにほぼ倍増し、2025年初頭にはこれまでで最多の9万人に達したとのこと。
日曜日には礼拝堂として使われているシェルターで炊き出しの食事を受け取ったある労働者は、「家族を養う力と、私たちを食い物にしないブローカーをお与えください」と祈りました。
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