家畜を飼育して食肉や乳製品などを生産する畜産業は、全世界の温室効果ガス排出量のうち14.5%を占めており、地球温暖化を阻止するには肉や乳製品の消費量削減が必要だとする意見もあります。そんな中、デンマーク工科大学の研究チームが、「持続可能な食生活を送っている人は1週間にどれほどの肉を食べられるのか」を計算した結果を報告しました。
Diets can be consistent with planetary limits and health targets at the individual level | Nature Food
https://www.nature.com/articles/s43016-025-01133-y
A sustainable diet leaves room for two chicken breasts a week
https://www.dtu.dk/english/news/all-news/a-sustainable-diet-leaves-room-for-two-chicken-breasts-a-week?id=9f92aab8-678d-4e81-a651-110b464fed82
Scientists Calculated How Much Meat You Can Sustainably Eat in a Week : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-calculated-how-much-meat-you-can-sustainably-eat-in-a-week
近年は畜産が環境に悪いということが広く知られるようになり、環境保護のために肉の摂取量を減らした方がいいと考えている人も増えています。また、赤身肉や加工肉を食べることが健康に悪影響を及ぼしているという研究結果もあり、健康を考えて肉を食べないようにする人もいます。
しかし、長らく肉を食べて生活してきた人がいきなり肉を断つのは難しいもので、多くの人は「環境を守りつつ欲求も満たせるライン」を見極めたいと思っています。論文の筆頭著者であり、デンマーク工科大学の博士研究員であるキャロライン・ゲバラ氏は、「今ではほとんどの人が、環境と健康の両方から肉を食べる量を減らすべきだと認識しています。しかし、『減らす』というのがどの程度なのか、それが本当に全体像へ違いをもたらすのかを関連付けるのは難しいものです」と述べています。
ゲバラ氏らの研究チームは、地球にとって持続可能でありながら健康的な食事について調査しました。研究では、アメリカで消費される2500種以上の食品について環境的・栄養的特性を評価し、二酸化炭素排出量・水の使用・土地利用・健康への影響といった要因を考慮して、地球に負担をかけずに個人が1週間で食べられる量を特定したとのこと。
分析の結果、持続可能な食生活を送る人々が1週間に食べられる肉の量は、「255gの鶏肉または豚肉」だと示されました。これは、スーパーで売っている鶏むね肉2ブロック程度の量であり、2021年に平均的なアメリカ人やヨーロッパ人が食べた量の6~10分の1ほどです。
また、牛肉や羊肉といった赤身肉については、たとえ少量の摂取であっても持続可能ではないという結果になりました。科学系メディアのScience Alertは、「これはおそらく、牛や羊のような家畜を飼育するために、より多くの土地を開墾しなくてはならないからでしょう。また、牛や羊は排せつ物や飼料作物を通じて、二酸化炭素の28倍の温室効果を持つメタンや、二酸化炭素の270倍の温室効果を持つ亜酸化窒素などを排出します」と指摘しています。
ゲバラ氏は、「今回の研究で調べた環境要因に基づいて、私たちの計算では食事に含まれる赤身肉の量が適度であっても、地球が再生できる資源とは相いれないことが示されています」と述べました。
持続可能な食生活において肉の摂取がかなり厳しい一方、ベジタリアンやビーガン、ベジタリアンに魚介類を加えたペスカタリアニズムといった食事は、地球にとって持続可能だと報告されています。また、ベジタリアンでありながら乳製品や卵を食べるといった風に、状況やニーズに応じてさまざまな食品を組み合わせることも可能です。
ゲバラ氏は、「たとえば私たちの計算では、健康的でありながら気候に優しい食生活をしつつ、必要ならチーズを食べることが可能です。卵・魚・白身の肉についても同じことが言えますが、もちろん残りの食事は比較的健康かつ持続可能であることが前提です」と述べました。
一方、今回の研究では食料システムの変化が世界中に及ぼす影響や、食材へのアクセシビリティや価格、文化的に受容されるかどうかといった点は考慮されていません。論文では、「真に持続可能な食生活を実現するには、普遍的な利用可能性が必要であり、それはあらゆるレベルの政策立案者によって支援されなくてはなりません」と記されています。
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