はしか(麻しん)は麻しんウイルスによって引き起こされる感染症であり、39度以上の高熱や発疹といった症状が現れ、脳炎や肺炎などの深刻な合併症による重症化や死亡のリスクもあります。近年、はしかのワクチン接種率が低下していることが問題視されていますが、新たな研究ではワクチン接種率がわずか10%下がるだけで、はしかが爆発的に流行してしまう可能性があると示されました。
はしかは高熱や発疹などの症状が出る感染症であり、肺炎や脳炎といった合併症のリスクもあります。特に脳炎はおよそ1000人に1人の割合で発症するほか、10万人に1人ほどの割合ではしかが治ってから数年後に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という治療法がない脳炎になる可能性もあるとのこと。はしかを発症した子どもの死亡率は1000人あたり1人~3人といわれており、これは風邪やインフルエンザなどよりはるかに高い数字です。
また、特にはしかが危険視されている理由に、その感染力の高さがあります。感染症患者1人が免疫を持たない集団に加わった場合に直接感染させる人数の期待値を示す基本再生産数は、はしかの場合「12~18」とされています。一般に感染力が高いとされ、頻繁に職場や学校などで流行が報告されるインフルエンザや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でさえ、基本再生数が「1~4」であることを考えると、はしかの感染力がどれほど高いのかがよくわかります。
はしかが人から人に感染するのを防ぐには、人口の少なくとも95%が予防接種を受ける必要があります。しかし、近年は世界的にワクチン接種率が低下しており、2024年にましん・流行性耳下腺炎(おたふく風邪)・風疹のワクチンをまとめた新三種混合ワクチン(MMRワクチン)を2回接種したイングランドの5歳児の割合は、たったの84%にとどまったと報告されています。
今回、スタンフォード大学やベイラー医科大学などの研究チームは、ワクチン接種率の増減がはしかなどの流行に及ぼす影響を調べるため、シミュレーションモデルを用いた研究を行いました。シミュレーションモデルはアメリカの50州とコロンビア特別区を対象としており、今後25年間にわたって小児期のワクチン接種率が異なるシナリオを評価したとのこと。
シミュレーションの結果、記事作成時点のワクチン接種率が維持された場合、今後25年間ではしかの発症例が約85万1300件に達し、再びはしかが風土病としての地位を確立する可能性が高いと示されました。
さらに、ワクチン接種率が記事作成時点よりも10%減少した場合、25年間ではしかの発症例は約1110万件に達し、爆発的に流行する可能性があることも判明。仮にワクチン接種率が50%も減少した場合、25年間で5120万人がはしかを発症する可能性があるとのことです。
一方、記事作成時点よりもワクチン接種率が5%上昇した場合、25年間でのはしかの発症例はわずか5800件にとどまり、流行をかなり抑えられることもわかりました。これらの結果は、小児期のワクチン接種率が少しでも低下すればはしかの爆発的な流行が引き起こされる一方、ワクチン接種率のわずかな上昇でも流行を劇的に減らせることを示しています。

今回の研究には関与しておらず、グラスゴー大学で感染症・微生物学講師を務めているアナスタシア・テオドシウ博士らは、ワクチンが普及していない国々では、いまだにはしかなどの感染症が風土病となっていると述べています。しかし、ワクチン接種の普及によってはしかの流行がほぼなくなった国々でも、ワクチン接種率が低下すれば再び風土病になる可能性があると指摘。
世界的にワクチン接種率が低下している理由には、「子どもにワクチンを接種させることの手間」「副作用への懸念」「感染リスクの過小評価」などさまざまなものがあります。特に感染リスクの過小評価については、ワクチン接種率が高くなったためにはしかの患者がほぼいなくなり、結果としてはしかのリスクを認識できなくなってしまったという皮肉な状況もあるとのこと。テオドシウ氏らは、「この点でワクチンは、それ自体の成功の犠牲者といえます。ワクチンのおかげでほとんど消えた感染症の影響を想像するのは、難しいことかもしれません」と述べています。
ワクチン忌避の主な原因はソーシャルメディアを通じて拡散される誤情報だそうで、2021年の調査ではわずか12人の反ワクチン主義者が、FacebookとTwitterで拡散されている反ワクチンコンテンツの3分の2を生み出していることが判明しています。さらに一部の専門家らは、メディアによる報道がワクチン忌避の原因の一端を担っているのではないかとも指摘しました。
また、1998年には「MMRワクチンが自閉症と関連している」という論文が発表され、いまだにMMRワクチンを忌避する人々の間で支持されていますが、この論文は捏造(ねつぞう)されたデータに基づく虚偽のものであることが判明しています。すでに論文の著者であるアンドリュー・ウェイクフィールドは医師免許を剥奪され、論文の結果を否定する研究結果も報告されています。
新三種混合ワクチンが自閉症とは無関係であることが示される – GIGAZINE

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