アメリカでは州が独立性の高い立法権を持っているため、地域ごとに柔軟な法整備ができますが、ヤマアラシとの性行為を禁じる州法 など、奇妙な法律が制定されることもしばしばです。フロリダ州議会で2025年4月3日に、気象の操作を重罪とする法案が上院を通過しました。
共和党所属のフロリダ州上院議員であるイレーナ・ガルシア氏が起案した「SB56 」は、気候に影響を及ぼす目的で化学物質・化合物・物質・装置を大気中に注入・放出・拡散することを禁止する法案です。
賛成28対反対9で上院を通過したこの法律が成立した場合、違反した人は第3級重罪に問われ、最高10万ドル(約1420万円)の罰金が科せられることになります。また、州の環境保護局には、疑わしい気象現象を報告するためのホットラインの設置まで義務付けられているとのこと。
ガルシア氏は、新法の理念について「私が望んでいないのは、抜け穴が拡大し続けることです。気象や気象改変のような強力な技術が兵器化される事態は避けたいのです」と説明しました。
この州法が提案される発端となったのは、2024年にフロリダ州に上陸して大きな被害をもたらしたハリケーン・ミルトン にまつわる陰謀論です。
被災者への支援の在り方などが大統領選挙の争点になるなど、ハリケーンはアメリカの政治に大きな影響を及ぼしましたが、同時に「アメリカ政府が気候を操作した」という陰謀論も巻き起こりました。
連邦議会の下院議員であり、陰謀論者としても知られるマージョリー・テイラー・グリーン氏はX(旧Twitter)で「そう、彼らは気象をコントロールできます。誰かがそんなことは不可能だとうそをつくのは、ばかげています」と述べました。
グリーン氏のこの発言はすぐさま与野党の議員から否定されましたが、「飛行機雲は政府や秘密結社が化学物質や生物兵器を散布している証拠だ」と主張するケムトレイル の陰謀論に飛び火しました
ガルシア氏は2025年3月の公聴会で「私たち上院議員の多くは、いわゆるケムトレイルに関する懸念や苦情を定期的に受けています」と述べました。一方、専門家はケムトレイルでハリケーンを発生させられるという主張を否定しており、地元のニュースメディア・Gulf Coast News and Weatherの気象学者であるローレン・ホープ氏は「誰かがハリケーンを発生させることができるという科学的コンセンサスは存在しません」と断言しました。
人工ハリケーンに関する陰謀論が物議を醸す一方で、世界の干ばつに苦しむ地域ではクラウド・シーディング などの人工降雨技術がよく用いられており、例えば中国ではロケットや大型ドローンでヨウ化銀などの人工降雨剤を散布する「人工降雨作戦」が長年にわたり実施 されてきました。
法律が現実的な取り組みに与える影響などが十分に審議されないまま、性急に立法が進められていることに対する懸念の声が上がっているほか、下院に送られた修正法案「HB477 」では全面的な禁止ではなく無許可での実施が禁止されるにとどまるなど、内容が緩和されているとのこと。
法案が上下両院で可決され、ロン・デサンティス知事によって署名された場合、法律は2025年7月1日から施行されます。ただし、法律が成立するにはフロリダ州議会の会期が終わる2025年5月2日までにSB56とHB477の内容をすり合わせる必要があります。
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