映画「アイアン・スカイ」のように、宇宙からの侵略者がその技術力をもって宇宙空間から地球に攻撃するというストーリーは数多くのSF作品で登場します。しかし、現代の科学力では、こうした外敵からの攻撃を防衛する手段はないと考えられています。軍事系ブログ「ToughSF」の管理人であるマター・ビーム氏が、軌道上の攻撃部隊と戦うための最終兵器として「レーザー搭載の原子力潜水艦」について論じています。
ToughSF: Anti-Orbit Laser Submarines
https://toughsf.blogspot.com/2017/10/anti-orbit-laser-submarines.html
もしも惑星間を自由に航行できる技術を持った侵略者が地球を訪れた場合、現代の科学力ではこの侵略者に対抗できる宇宙軍は世界に存在せず、制空権を簡単に握られてしまいます。この結果、敵の軍艦は地球軌道上を自由に航行できるようになるほか、燃料や物資が尽きた場合でも自由に補給を行うことが可能になります。
「神の杖」のように、宇宙から地球にミサイルを発射する場合、地球から宇宙に発射する場合と比べてそれほど大量の推進剤を使用する必要がないだけでなく、運動エネルギーにより攻撃目標を大規模に破壊することができるとのこと。
これに対抗するためには地球からミサイルを打ち上げる必要があります。しかし、大陸間弾道ミサイル(ICBM)のような大型のミサイルは迎撃されるリスクが高く、小型で耐久性に優れる原子力ロケットは十分な加速を得るために非常に高い電力要件が必要になることから、1発あたりの打ち上げコストが非常に高額になってしまいます。
さらに、視認性が高い宇宙空間から見ると地球上のミサイルの発射台は発見しやすく、容易に破壊されてしまいます。そのため、外敵を迎撃するためには、小規模で外敵の攻撃を耐えつつ、短いスパンかつ安価で攻撃が可能な戦略兵器が求められます。
ビーム氏はこの要件を満たせる選択肢として「レーザー装備の原子力潜水艦」を挙げています。水中に潜む潜水艦は宇宙空間からの高速の発射体やレーザーから身を守ることができるほか、数カ月間浮上しなくても問題ない高い電力効率を有しており、地上が大規模な攻撃によって壊滅的な被害を受けた後でも潜水艦は作戦を遂行することが可能です。
ビーム氏によると、海水を使って炉心を冷やすことができる原子力潜水艦は余った電力をレーザー発生器の動力源として使用することが可能とのこと。ただ、この作戦には多くの技術的課題があり、潜水艦から宇宙の目標を攻撃する場合、レーザーは水中、海面、大気という複数の媒体を通過するため、エネルギーが失われてしまいます。
また、海面は平坦ではなく、波や潮汐などによって常に変化しています。この結果、レーザー光は海面を通過する際に屈折や反射して、光線が曲げられたり、予測困難な方向に散乱したりします。そのため、海中からのレーザー攻撃で正確に照準を合わせることは困難とされています。
加えて、宇宙空間に存在する目標は潜水艦から非常に遠い位置にあるため、レーザー光を破壊可能な強度にまで集束させるためには、高度な光学系が必要になります。また、レーザー発射時に潜水艦の位置が露呈した場合、敵の攻撃を受けるリスクも高まるほか、使用するレーザーの波長によっては、宇宙船の材質と効果的に相互作用できず、十分な損傷が与えられない可能性も指摘されています。
こうした技術的課題に対しビーム氏は、水と大気の透過性が比較的高い波長400nmのレーザーを浅い深度から発射することでエネルギー損失を抑えるといった試みのほか、波長1m程度の長波長を利用して水と空気界面でのゆがみの影響を大幅に軽減する、レーザー光が水中から空気中に移行する際のゆがみを補正する「浮上型光学アレイ」を設置するなどの解決策を提示しています。しかし、これらの解決策は非常に大きなアンテナを潜水艦に搭載する必要が生じる、敵の攻撃を受けると使いものにならなくなる、金属は破壊しにくいなどの問題も抱えています。
そこでビーム氏は「光学フェーズドアレイ浮上体」と呼ばれる、水中に隠れた専用のプラットフォームが、短時間だけ海面に浮上してレーザーを発射する手法や、「超空洞化プラットフォーム」と呼ばれる、強力な原子炉を搭載した潜水艦が海中を超音速で移動し、瞬時に海面に浮上してレーザーを発射、そしてすぐに潜行する手法を提示しています。
そのほか、Laser Developed Atmospheric Lens(LDAL)のような、大気中の熱レンズ効果を利用してレーザーの有効射程を延伸したり敵のレーザー攻撃の効果を低減する先進技術を用いるのも有効だとビーム氏は主張しました。
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