Intelの取締役会は半導体に詳しくない人物が大半を占め無能な決定でIntelを死に追いやっている – GIGAZINE


Intelは業績の低迷が続いており、2024年8月には100億ドル(約1兆5000億円)のコスト削減計画の一環として全従業員の15%に相当する約1万5000人の人員削減を実施しました。また、競合他社によるIntelの一部事業の買収計画も報じられています。いったいなぜIntelがこれほどまでに没落してしまったかについて、テクノロジー系メディアのSemiAnalysisが「Intelは死の瀬戸際にいる(Intel on the Brink of Death)」と題した分析記事を公開しています。

Intel on the Brink of Death | Culture Rot, Product Focus Flawed, Foundry Must Survive – SemiAnalysis
https://semianalysis.com/2024/12/09/intel-on-the-brink-of-death/

SemiAnalysisは記事の冒頭で「Intelの取締役会は無能であり、数十年にわたるひどい決定がIntelを死に追いやっている」と述べ、Intelの取締役会を厳しく非難しています。SemiAnalysisは「Intelの取締役会の無能な決定」の一例として「パット・ゲルシンガー氏をCEO職から解任し、(半導体の専門家ではない)最高財務責任者やクライアント・コンピューティング事業部のトップを暫定CEOに据えたこと」や「ファブへの投資を削減して、再度x86に重点を置くという方針転換」を上げています。

Intelがパット・ゲルシンガーCEOの退任・退職を発表、「Intelファミリーの一員として一緒に働いてきた世界中の仲間たちに感謝」 – GIGAZINE


AMDやNVIDIAといったIntelのライバル企業は「チップの設計は自社で行い、製造は他社に委託する」というビジネスモデルを構築しています。一方で、Intelは「自社で設計したチップを自社工場で生産する」というビジネスモデルを長年維持しており、Intelの工場では基本的にIntelのチップのみを生産していました。そんな中、ゲルシンガー氏は2021年3月にファウンドリサービス拡充戦略「IDM 2.0」を発表し、他社の設計したチップの生産を受託する体制の構築を進めました。IDM 2.0は着々と進んでいましたが、Intelの業績が回復する前にゲルシンガー氏はCEOを退くこととなりました。

Intelのファウンドリサービス拡充戦略「IDM2.0」はIntel復活の糸口となるのか? – GIGAZINE


SemiAnalysisはゲルシンガー氏がCEOを退いた理由について「取締役会がゲルシンガー氏の計画を好ましく思っていなかったため」と推測しています。また、「ゲルシンガー氏はAI戦略の失敗やTower Semiconductorの買収断念など複数の失敗を犯してきたが、現状の取締役会の中では最もCEOに適した人物だった」とも指摘しています。

SemiAnalysisはIntelの取締役会の問題点として「半導体に詳しい人物が少ない」という点を挙げています。以下の画像は2024年12月時点の取締役会メンバー11人の経歴をまとめたものです。11人のうち、7人は半導体業界での実績がなく、実績のある4人のうち2人は学術的な功績はあるものの業界関係者ではありませんでした。SemiAnalysisは半導体業界について詳しくない人物が重職に就いている状況を「Intelの文化的腐敗」と呼んでいます。


Intelの文化的腐敗の始まりは、2005年にポール・オッテリーニ氏がCEOに就任したところまでさかのぼります。当時、オッテリーニ氏とゲルシンガー氏がCEOの有力候補として上がっており、半導体の技術面の専門家であるゲルシンガー氏に対して、オッテリーニ氏はビジネス面の専門家として評価されていました。CEOに指名されたオッテリーニ氏はAppleとの間で「MacにIntelチップを搭載する契約」を交わすなど、Intelの業績向上に尽力しました。以下の動画は、Intelチップ搭載Macの発表時にオッテリーニ氏がスティーブ・ジョブズ氏にシリコンウェハを手渡したシーンです。

First Intel Mac (10 Jan 2006) – YouTube


オッテリーニ氏は一定の成果を上げましたが、同時にPCメーカーに対して「AMD製品を採用しない代わりに金銭を支払う」という反競争的な契約を持ちかけるといったビジネス偏重な姿勢も見せていました。また、オッテリーニ氏のCEO就任以降、Intelでは技術的な重要性よりも政治的な決定が優先されるようになり、セキュリティ企業のMcAfeeを買収したりモバイル市場でのArmの台頭を許したりといった戦略的失敗を犯すことになりました。

IntelがMcAfeeを77億ドルで買収、ハードとソフトの両面からのセキュリティ技術の向上を目指す – GIGAZINE

by Josh Bancroft

オッテリーニ氏からCEOを引き継いだブライアン・クルザニッチ氏も、「10nmプロセスへの移行を大幅に遅らせる」という失態を犯しました。SemiAnalysisはクルザニッチ氏を「Intel史上最悪のCEO」と評しています。

ムーアの法則に黄色信号点滅、Intelの10nmプロセス移行の遅れが確実に – GIGAZINE


クルザニッチ氏の次にCEOに就任したのがボブ・スワン氏です。スワン氏は多数の企業でCFOを務めてきた人物で、IntelにもCFOとして在職していました。つまり、スワン氏は根っからのビジネスマンであり、Intelにとって初の非技術者CEOでした。スワン氏のCEO在籍期間中に、Intelは設備投資に380億ドル(5兆7000億円)を費やしたのに対して、自社株買いにも360億ドル(約5兆4000億円)を費やしました。世界最大のファウンドリであるTSMCに対して最先端プロセスへの移行で出遅れていたIntelにとって、設備投資の軽視は致命的な打撃となりました。また、クルザニッチ氏とスワン氏のCEO在任期間中には技術系の人材が大幅に削減されました。これらのCEOを含む取締役会の決定がIntelの現状を生み出したとSemiAnalysisは指摘しています。

なお、2025年3月には元取締役のリップ・ブー・タン氏がIntelの新CEOに就任しています。シンガポールの南洋理工大学で物理学士号、マサチューセッツ工科大学で原子力工学の修士号、サンフランシスコ大学でMBAを取得した人物で、2009年から2021年まで半導体開発用ソフトウェアを手がけるCadence Design SystemsのCEOを務めた経験を持ち、半導体工業会の最高栄誉であるロバート・N・ノイス賞も受賞しています。

Intelが新CEOに元取締役のリップ・ブー・タン氏を任命 – GIGAZINE

この記事のタイトルとURLをコピーする


ソース元はコチラ

この記事は役に立ちましたか?

もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

関連記事