子どもがスマートフォンを利用することについては、好影響と悪影響の両方が報告されています。サウスフロリダ大学の新しい研究でも、子どもがスマートフォンを利用することのメリットが明らかになりました。
Results from USF study on kids’ digital media use reveal benefits of smartphones and harmfulness of posting publicly to social media
https://www.stpetersburg.usf.edu/news/2025/results-from-usf-study-on-kids-digital-media-use-reveal-benefits-of-smartphones.aspx
サウスフロリダ大学の研究チームが主導する若者のデジタルメディア利用に関する調査「Life In Media Survey」では、フロリダ州在住の1500人以上の11~13歳を対象に、子どもたちがどのようにデジタルメディアを使用しているのかと、子どもたちが成人したあとの幸福度を追跡調査しています。
この調査における主な結果は以下の通りです。
・自分のスマートフォンを持っている子どもは、幸福度のほぼすべての尺度において、スマートフォンを持っていない子どもよりも高い幸福度を記録しました。スマートフォンを持っている子どもは、持っていない子どもよりも、うつ病や不安の症状を報告する可能性が低く、友達と直接会って時間を過ごし、自分に満足していると報告するケースが多いです。
・子どものデジタルメディア使用を制限する取り組みは効果がないことが明らかになりました。調査対象となった11歳の子どもの70%以上が自分のスマートフォンを所有しており、その多くが8歳半までにスマートフォンを入手したと報告しています。
なお、子どもにPCやスマートフォンの使用時間を制限するべきではないという研究結果は過去にも報告されていました。
スマホやPCの利用時間の制限を子どもに強制するべきではないことは研究から明らか – GIGAZINE
・ソーシャルメディア上に投稿することは、さまざまな害と関連していたことも明らかになっています。ソーシャルメディアに頻繁に投稿する子どもは、「まったく投稿しない子ども」や「めったに投稿しない子ども」に比べて、中程度または重度のうつ病の症状を訴えるケースが多く(54%対25%)、中程度または重度の不安症状(50%対24%)を訴えるケースも多く、睡眠障害を報告するケースも2倍多かったそうです。
・ネットいじめは、たとえ些細なもの(オンライン上で意地悪な、または傷つけるような名前で呼ばれるだけ)であっても、悪い結果につながることが明らかになりました。回答者の10人中6人が過去3カ月以内に何らかの形のネットいじめを受けたと回答。いじめを受けた子どもは、いじめを受けていない子どもよりも、過去1年間で落ち込んでいる(32%対11%)ことが多く、怒ってかんしゃくを起こす(36%対10%)傾向にあり、テクノロジーの使用を止めるのが難しい(64%対45%)と報告する傾向が強かったそうです。
Life In Media Surveyの主任研究員であるジャスティン・D・マーティン氏と、サウスフロリダ大学でメディア倫理および報道政策について研究するエレノア・ポインター・ジェイミソン教授は、今回の調査結果について「我々は多くの研究者、教師、その他の観察者が想定していた『スマートフォンの所有は子どもにとって有害である』という結論に期待してこの研究に取り組みました。しかし、実際はそうではなかったばかりか、ほとんどの場合、その逆、つまりスマートフォンの所有は良い結果につながることがわかりました」と報告しています。
今回の調査結果をベースに、研究チームは「子どもにデジタルメディアを使用させる上での推奨事項」として以下の3つを挙げました。
1:11歳の子どもに自分のスマートフォンを持たせることは恐らく問題ないどころか、有益である可能性があります。
2:親は、幼い子どもがソーシャルプラットフォームに投稿しないよう促すべきです。また、ネットいじめの兆候が少しでも見られたら、親は警戒すべきです。
3:子どもがスマートフォンを持ったまま寝ないように注意してください。調査対象となった子どもの4人に1人が、スマートフォンを手に持ったりベッドに置いたりしたまま寝ています。ベッドにスマートフォンを置いている子どもの平均睡眠時間が8.6時間であるのに対して、別の部屋にスマートフォンを置いて寝ている子どもの平均睡眠時間は9.3時間と長いです。
サウスフロリダ大学で心理学准教授を務めるウェンディ・ロート氏は、「私たちの調査結果は、スマートフォンの所有がおよぼす影響が複雑であることを示しています」「スマートフォンを所有することだけでなく、スマートフォンで何をするか、そしてその使用を規制することの難しさが、子どもたちの生活に困難をもたらしたり、逆に利益をもたらしたりする可能性があります」と語りました。
研究チームは今回の調査結果をベースに、思春期初期の子ども約8000人を対象に、生涯にわたって追跡調査を行う全国規模の長期研究を開始する準備を進めているそうです。この調査はデジタルメディアの使用状況を調査する初の生涯調査となる予定で、スマートフォンやソーシャルメディア、その他のデジタルメディアやデバイスが健康とウェルネスにおよぼす長期的な影響について、さらに詳しく知るためのきっかけになることが期待されています。
この研究は今後25年間にわたり、6カ月ごとにデータの収集が行われる予定。デジタルメディアの使用が子どもに与える影響だけでなく、子どもが成人する過程でデジタルメディアから受ける影響について、親、教師、研究者、医療提供者などに継続的な洞察を提供することを可能とする研究と位置づけられています。
調査の共同主任研究員を務めるスティイーブン・ソン氏は、「私たちのデータは、メディアが若者にその瞬間にどのような影響を与えているかを示すスナップショットを提供します。しかし、メディアの使用に伴う問題や利点の多くは、時間の経過とともに蓄積されます。そのため、デジタルメディアが個人の人生を通じて幸福に与える影響を正確に評価するには、長期的な研究を行うことも重要です」と語りました。
研究チームはデジタルメディアが人々に生涯を通じてどのような影響を与えるかを解明したいと考えており、「1日5時間デジタル機器の画面を見つめることで、視力にどのような影響を与えるか」や「幼少期にオンライン上でソーシャルメディアを使用することで、30歳の時に社交性にどのような影響を与えるか」などを解き明かすことができるようになることを期待しています。
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