ビットコインがスタートした直後に約8000BTC(約979億円)をマイニングしたものの、ビットコインウォレットへのアクセスキーが保存されていたHDDを間違えて捨ててしまった男性が、HDDが埋まっているとおぼしきゴミ処理場の買収を検討していることが報じられています。広大な埋め立て地から10年以上前に捨てたHDDを探し当てるという、まさしく干し草の山から針を見つけるような奇跡が起きる確率を、専門家が計算してみました。
Man wants to search dump for lost hard drive with bitcoin fortune – here are his odds of finding it
https://theconversation.com/man-wants-to-search-dump-for-lost-hard-drive-with-bitcoin-fortune-here-are-his-odds-of-finding-it-249889
なくしたビットコインのためにゴミ処理場を丸ごと買収することを検討しているのは、イギリスに住むITエンジニアのジェームズ・ハウエルズ氏です。同氏は、2008年当時ビットコインをマイニングしていた5人のうちの1人で、2009年2月までに約8000BTCをマイニングしましたが、マイニングをやめた後にそのことを忘れ去っていました。
そして、2013年にビットコインが急騰していることを知ったハウエルズ氏は、ウォレットにアクセスするためのプライベートキーを保存したHDDを誤って捨ててしまったことに気づきます。それから10年以上にわたってゴミ処理場に眠るHDDを探し続け、ロボット犬やAIを駆使した探索チームを動員しても見つけられずにいるハウエルズ氏は、自治体がゴミ処理場を閉鎖するのを見計らって、処理場を購入することを検討しているとのこと。
230億円相当のビットコインが入ったHDDをゴミ処理場で探し続ける人物が16億円を投じてロボット犬やAI専門家を雇用 – GIGAZINE
イギリス・グラスゴー大学で統計学の上級講師を務めているクレイグ・アンダーソン氏は、140万トンともいわれているゴミの山から手のひらサイズのHDDが見つかる確率を計算しました。
まず、ハウエルズ氏が捨てたHDDが埋まっていると思われるドックスウェイ埋立地の面積はサッカー場70面に相当する約50万平方メートルです。そして、長年にわたって積み重ねられたゴミの深さは控えめに見積もっても20メートルで、総容積は1000万立方メートル(10兆立方センチメートル)になるとのこと。これは、2024年夏のパリオリンピックで使われたプールの約3600倍です。
一方、ハウエルズ氏がなくしたHDDは2.5インチなので大きさは約70立方センチメートル(7cm×10cm×1cm)です。従って、ある1カ所を探してHDDが見つかる確率は「70÷10兆=0.000000000007」、つまり約1430億分の1です。
by Robin Drayton / Newport City Landfill Site / CC BY-SA 2.0
これはイギリスの宝くじで大当たりする確率の3000分の1ですが、大金がかかっているのでランダムな場所を1回探して諦めるということはあり得ません。そこで、アンダーソン氏はゴミ処理場を徹底的に探したらどうなのかもざっと計算してみました。
その計算によると、1000立方センチメートルのゴミにHDDが含まれているかを1秒でチェックすると仮定しても、ゴミ処理場全体を捜索しきるのには100億秒、つまり316年かかるとのこと。逆に言うと、不眠不休で探し続けるとすれば1年でHDDを見つけられる可能性は316分の1となります。
苦労して探すだけの価値がハウエルズ氏のHDDにあるのかを推し量るには、「期待値」という統計的概念が必要で、これはあるシナリオを繰り返した際に期待される長期的なリターンの指標です。
例えば「サイコロを振って6が出たら200円もらえるが他の目なら100円払わなければならない」というルールのギャンブルの期待値を考えてみます。この場合、「期待値(E)=1/6×200円+5/6×(-100円)=200/6-500/6=-50円」となり、1回勝負するごとに50円失う計算になるので、分の悪い賭けと言えます。
同様にハウエルズ氏のHDDを1年かけて探す際の期待値を算出してみます。もしHDDが見つかれば8000BTCが手に入り、見つからなければ何も得られないので、計算は「E=1/316×8000BTC+315/316×0BTC=約25.3BTC(約3億円)」となります。つまり、ゴミ処理場を探す年間コストがこの期待値より少なければ利益が期待できますが、多い場合は赤字になるリスクが高いので、そこまでしてHDDを探すべきではないことになります。
もっとも、これらの計算は広大なゴミ処理場を1人で、しかも昼夜を問わず探し続けるという前提なので、実際の費用やそのリターンは正確なゴミ処理場の面積、捜索時間、手分けする人数などによって大きく変わります。
アンダーソン氏は記事の末尾で、「もしハウエルズ氏がゴミ処理場にアクセスできるようになったら、統計学者に捜索を手伝わせる価値はあるかもしれません。私なら、格安の料金でサービスを提供することもやぶさかではありませんが……」と、ハウエルズ氏にアピールしました。
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