インフルエンサーから若者が「ガスライティング」で受ける悪影響とは? – GIGAZINE


SNSの流行により、「インフルエンサー」と呼ばれる影響力のあるアカウントが人気を集めています。特に10代の若者はインフルエンサー文化の誘惑に弱く、悪い影響を受けてしまうこともあります。SNSとインフルエンサーが若者の精神的健康に有害である側面について、イェール大学の心の知能指数センターの共同設立者で精神分析医のロビン・スターン氏が解説しています。

Likes and Lies: The Effects of Influencers on Teens | Psychology Today
https://www.psychologytoday.com/us/blog/power-in-relationships/202503/likes-and-lies-the-effects-of-influencers-on-teens


スターン氏は精神分析医として、主に「ガスライティング」を専門に研究しています。ガスライティングという言葉は「ガス燈」という映画に由来するもので、夫が妻を悪く言って精神的に追い込むことで妻が自分の正気を疑うように仕向け、夫の望み通りの行動を行うように操作する心理的虐待を指します。

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by Send me adrift.

スターン氏は心の知能指数センターとの共同研究で、SNSの悪影響について調査しました。Metaに務める知り合いや、スターン氏が主導する「10代の若者とソーシャルメディアに関するグループ」に参加した高校生と共同で行われた調査の結果、10代の若者の生活の中心的かつ避けられない部分として「インフルエンサー」が中心にいると指摘しました。

10代の若者がインフルエンサーに魅力を感じる理由は、男女で差があるとスターン氏は述べています。女の子の場合、メイクやスタイル、ファッションといったセルフケアのインフルエンサーに魅力を感じる傾向が強く、それらをフォローすることで自信を高め自己表現のヒントを得るロールモデルとしています。一方で、完璧な写真や洗練された生活を見続けることで、現在の自分に不十分さを感じたり、自尊心が損なわれたり、より良い見た目に執着しすぎたりといった悪影響も発生しがちです。

男の子の場合、スポーツやゲーム、金もうけなど、競争の激しい世界で成功したインフルエンサーをフォローすることが多いそうです。このようなインフルエンサーは、自己鍛錬を促したり努力を肯定したりする効果もありますが、一部のインフルエンサーは有害な攻撃性を持っていたり、何が何でも勝つという考えを称賛したり、「こうしない人は愚か」と他人の意見を全否定したりと、極端な考えを発信します。結果として、「男らしさ」という固定観念や不健全な願望につながる可能性があるとスターン氏は指摘しています。


インフルエンサーが若者に与えることの多い悪影響は、ガスライティングに類似しているとスターン氏は述べています。多くのインフルエンサーは、素晴らしい成功体験を語り、ぜいたくな生活やきらきらした見た目を発信します。それが行き過ぎると、特定の行動を取ったり特定の商品を購入したりしなければ、自分は決して十分ではないと感じるような現実感を若者の中に作り出します。インフルエンサーは何らかの特権や努力、環境によって裕福さや地位を得ているという舞台裏を隠すことが多いため、若者は「なぜ自分はああいうふうになれないのか」「自分の何が間違っているのか」と自問することになります。

SNSによって不安や混乱に陥らない対策として、スターン氏は以下の4点を挙げています。

・目にするものに疑問を持ちましょう。インフルエンサーは自分の本当の生活を共有しているでしょうか。それとも、商品やイデオロギーを売り込むためにウソもしくはごく一部の真実だけを見せていないでしょうか。ソーシャルメディアに関する批判的思考力を養うことは、インフルエンサー文化の罠に陥らないための鍵です。

・よりポジティブで本物のコンテンツを閲覧しましょう。すべてのインフルエンサーが有害ではなく、インスピレーションとモチベーションを正しく与えてくれる人もいます。

・ある状況に対する見方を変えることは、否定的なメディアを消化する際に有益となることがあります。

・ソーシャルメディアの使用に制限を設け、オフライン活動に参加し、現実の友人や家族と多くの時間を過ごせば健全なバランスを保つことができます。また、インフルエンサーをフォローしていて気分が悪くなることがあったら、速やかにフォローを解除しましょう。

また、10代の若者は有害なインフルエンサーにガスライティングされていることに気付かないケースもあるため、親や周りの人が子どものフォローしているインフルエンサーについて尋ねて評価しつつ、子どもがオフラインで活動する時間を増やせるよう奨励することが重要です。スターン氏は「インフルエンサーは今後も存在し続けるでしょうが、だからといって若者が彼らの影響に流される必要はありません。自己認識、健全な境界線、そして親のサポートを充実させることで、自分自身に対する感情を左右することなくコンテンツを楽しむことができます。インフルエンサーのエンターテイメント性とインスピレーションを評価しつつ、一歩引いて現実を見据えるべき時を知ることが大切です」と述べています。

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