廃棄された食材、枯れ枝、エビやカニの殻といった天然素材を利用して製造できる「分子機能化バイオマスハイドロゲル」で、1日の間に素材1kg当たり14リットル以上の水を大気から生成することに成功したと、テキサス大学オースティン校の研究グループが発表しました。
Molecularly Functionalized Biomass Hydrogels for Sustainable Atmospheric Water Harvesting – Guan – Advanced Materials – Wiley Online Library
https://advanced.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.202420319
From Scraps to Sips: Everyday Biomass Produces Drinking Water from Thin Air
https://cockrell.utexas.edu/news/archive/10158-from-scraps-to-sips-everyday-biomass-produces-drinking-water-from-thin-air
Kitchen Scraps and Seashells Pull Drinking Water from Thin Air – ScienceBlog.com
https://scienceblog.com/kitchen-scraps-and-seashells-pull-drinking-water-from-thin-air/
研究チームが開発した「分子機能化バイオマスハイドロゲル」は、大気中の水分を捕獲する「吸着剤」として機能し、穏やかな熱を加えることで収集した水分を液体として取り出すことができるというもの。これは、シリカゲルのような乾燥剤などと同じ原理ですが、バイオマスハイドロゲルは生分解性があるので、廃棄する際の環境負荷は最小限です。
また、石油化学製品を使ったり、水を取り出すのに大量のエネルギーが必要だったりすることが多い既存の合成吸着剤とは異なり、新しいバイオマスハイドロゲルは天然の多糖類から作ることが可能で、水を放出するのに必要なエネルギーも少なくて済みます。
研究チームが実地テストを行ったところ、バイオマスハイドロゲルは1日に素材1kg当たり14.19リットルの清浄な水を生成できました。これに対し、一般的な吸着剤が1日に生成できる水の量は1kg当たり5リットル程度しかありません。
テキサス大学オースティン校で材料科学および機械工学の教授を務めるGuihua Yu氏は「この画期的な成果により、多様な天然素材を高効率の吸着剤に変えることができるような、普遍的な分子工学戦略が生まれました。これは持続可能な水の収集について考える上でまったく新しい方法を開拓するもので、家庭や小規模コミュニティーにとって実用的な水収集システムに向けた大きな一歩です」と話しました。
バイオマスハイドロゲルがこれほどうまく機能する理由は、植物の細胞壁を構成するセルロース、ジャガイモやトウモロコシに含まれるデンプン、甲殻類の殻などからできるキトサンといった天然素材を吸着剤へと変化させる2段階の分子工学プロセスにあります。
このアプローチで、研究チームはまず天然の多糖類の分子に熱応答性基を付与し、温度変化に対する反応性を高めます。次に、正と負の両方の電荷を持つ分子である両性イオン基を追加することで、素材の吸水能力と貯水能力を向上させます。
これにより、研究チームは室温で空気中の水分を効率的に収集し、太陽熱や廃熱などで十分に達成可能な60度という低温でその水分をきれいな水として放出するハイドロゲルの開発に成功しました。
今回開発された「分子機能化バイオマスハイドロゲル」は、清潔な飲料水にアクセスできない人々のための解決策を開発するYu氏の長い取り組みのひとつで、研究チームは、以前にもコンニャクの成分であるグルコマンナンを使って空気から水を得る「高吸湿性ポリマーフィルム」を開発したことがあります。
「コンニャク」で砂漠の空気から大量の水を生み出す新素材が開発される – GIGAZINE
研究チームは目下、携帯型集水装置や自律水利システム、緊急用の飲料水供給装置など、生産の拡大に向けた実用的なシステムの設計に取り組んでいるとのこと。
論文の筆頭著者であるWeixin Guan氏は「きれいな水へのアクセスはシンプルで、持続可能で、スケーラブルであるべきです。その点、この素材は自然に最も豊富にある資源を利用して空気から水を作る方法を与えてくれます」と話しました。
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