スイス連邦政府がMicrosoft 365への依存を減らしてデジタル主権を強化するため、オープンソースソフトウェアを中心とした独立した業務環境を約3000人の職員に2027年末までの導入を目指して提供する計画を開始しました。
Microsoft: l’administration fédérale teste des alternatives | RTS
https://www.rts.ch/info/suisse/2026/article/microsoft-l-administration-federale-teste-des-alternatives-29346805.html?ref=itsfoss.com
Switzerland’s Federal Government is Replacing Microsoft on 3,000 Computers
https://itsfoss.com/news/switzerland-replace-microssoft-pilot/
スイス連邦政府ではWordやExcel、Teams、OutlookなどMicrosoft製品が広く利用されています。しかし、特定の海外企業への依存はサービスが利用できなくなった場合に行政機能を維持できなくなる可能性など、デジタル主権の観点からリスクになるとして問題視されています。スイス連邦内閣は「政府の職務遂行のための電子的手段の使用に関する連邦法(EMBAG)」を制定し、オープンソースソフトウェアを利用することでMicrosoft 365から離脱する選択肢が現実的に存在するのかを調査する「PoC BOSS」を進めてきました。
スイスは政府機関が政府向けに作ったソフトウェアをすべてオープンソースにするよう義務づけている – GIGAZINE
PoC BOSSでは、ドイツのデジタル主権センターであるZenDiSが開発を主導するオープンソースの業務環境「openDesk」を採用。複数の省庁から172人の職員が参加し、文書編集、ファイル保存、共同作業、メール、カレンダーなど、日常的な業務に必要となる機能を実際に試しました。
openDeskは単一のアプリケーションではなく、複数のオープンソースソフトウェアを組み合わせた業務環境です。PoC BOSSではメールやカレンダーにOpen-Xchange、ファイル管理にNextcloud、プロジェクト管理にOpenProject、WikiにXWiki、音声・ビデオ会議にJitsi、インスタントメッセージにElement、ID・アクセス管理にUniventionなどが利用されます。基本的にはウェブブラウザから利用できますが、オフライン利用などを検証するためWindowsやLinuxのデスクトップ環境も試されています。
テストの結果、文書処理やファイル保存、共同作業、メール、カレンダーなどについては高い評価が得られ、連邦内閣は「主要な標準業務については原則として利用可能」と判断しました。また、Microsoft 365で障害が発生した場合などに利用する緊急用の業務環境としても有効だと評価されています。一方、多人数が参加するビデオ会議などでは性能上の制約も確認されました。

この結果を受け、連邦内閣はPoCより大規模な「デジタル主権を確保した業務環境」の構築に進みます。対象となるのは各省庁や連邦内閣で特に重要な業務プロセスを担当する職員で、2027年末から約3000人が利用できる環境を整備する計画です。第1段階にかかる費用は約900万スイスフラン(約17億3000万円)と見積もられています。
ただし、この3000人がMicrosoft 365から完全に移行するわけではありません。新しいオープンソース環境は独立したシステムとして構築されるものの、Microsoft 365と並行して運用されます。今回の計画を通じて本格導入に必要な費用や運用上の課題を調べ、その結果を基に、将来的により大規模な移行を行うかどうかを判断することになります。
全面移行の障害となるのが、スイス連邦政府内で使われている多数の専門アプリケーションやシステムです。これらの中にはMicrosoftのアーキテクチャと密接に結び付いているものが多く、技術的にオープンソース環境を利用できることが確認されても、実際にMicrosoft環境から全面移行するには大規模な改修やセキュリティ検証、人材育成などが必要になります。このため、連邦内閣も将来的に業務環境全体を置き換えるかについては、記事作成時点では決定していません。

連邦政府はデジタル主権を、外部の供給者や外国に依存することなく重要な任務を遂行できる能力と位置付けています。Microsoft製品を一斉に排除することが目的ではなく、Microsoft 365が利用不能になった場合でも行政機能を継続できる代替手段を確保し、特定企業への依存を段階的に減らすことが今回の計画の中心となっています。
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