KADOKAWAは2026年1月に、3つのYouTubeチャンネルが著作権侵害にあたるとして、個人情報の開示をYouTubeに求めるDMCA召喚状をアメリカの連邦裁判所に請求しました。対象となったYouTubeチャンネルは「自分たちの動画は韓国語圏の視聴者を対象にした解説・レビュー・分析であり、フェアユースにあたる」と取り消しを求めていましたが、主張は退けられ「フェアユースの原則による保護を受けられない」と結論付けられました。
Court Rejects Fair Use Claim, Orders YouTube to Unmask Anime Recap Channels * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/court-rejects-fair-use-claim-orders-youtube-to-unmask-anime-recap-channels/
今回対象となったのは、約50万人の登録者がいるキム・ボンソプ氏、ヤン・ウヒョク氏、約35万人の登録者がいるコ・ヨンユン氏の3つのYouTubeチャンネル。それぞれ「忍者と殺し屋のふたりぐらし」「【推しの子】」「ある魔女が死ぬまで」といったアニメコンテンツの一部を切り取った上で、韓国語によるカスタム字幕・リアクション・ストーリー解説・レビュー・メディア分析などを発信しています。以下はキム氏のYouTubeチャンネル。
KADOKAWAは、各YouTubeチャンネルの動画が自社アニメコンテンツのクリップにナレーションや解説を加えただけの著作権侵害にあたると主張して、YouTubeに対し彼らの個人情報を開示するよう強制するDMCA召喚状を請求しました。
一方でYouTubeチャンネル側は「これらの動画は、韓国語のナレーション・解説・要約・コメント、そして制作者独自のプレゼンテーションに関連して、原作の特定の部分を使用しています。著作権で保護された作品の生の完全なエピソードとして、または複製としてアップロードされたものではありません」と述べ、自分たちのYouTubeチャンネルは単なる著作権侵害行為ではないと反論しました。
その上で、自分たちの動画はオリジナルコンテンツと競合するものではなく、むしろオリジナルコンテンツを宣伝してアクセス数を増やすものだと主張しています。実際に、3つのYouTubeチャンネルすべてにおいて動画の説明欄と固定コメントで韓国の公式アニメ配信プラットフォームである「Laftel」へのリンクを掲載しており、キム氏が共有した分析データによると、それらのリンクのエンゲージメント率は82%で3人の動画を合わせた総クリック数は11万4494回に達していたとのこと。

YouTubeでは著作権侵害のコンテンツを報告することが可能であり、実際に3人のチャンネルの動画が削除されたこともあります。しかし、3人が異議申し立てを行った際にKADOKAWAは法的措置を取らなかったことで動画が復元されています。それを理由に、3人は「このような行為が繰り返されていることから、今回の召喚状は訴訟を起こすという真の意図に基づくものではなく、むしろDMCA手続きの過度に広範または強圧的な利用を反映している可能性があります」と指摘しています。
KADOKAWAによるDMCA召喚状の請求とYouTube側による却下申し立てを受けて、カリフォルニア州北部地区連邦裁判所のトリナ・L・トンプソン判事は2026年4月に、公正使用に関する補足的な意見書を提出するよう双方に命じました。これに対しYouTubeチャンネル側は、「1つの動画で使用しているのはアニメ本編の約15%程度で、公式リリースと競合することなく、限られたコンテンツのみを使用した」ことなどを改めて強調しました。一方でKADOKAWAは、問題のある動画は3本中2本が既に削除されており、残り1本もストーリーを要約しただけでオリジナル性はないと主張しました。
審理の結果、2026年7月17日に出された命令において、トンプソン判事は訴訟却下申し立てを却下しました。動画が非公開設定になっていたこともあり「事実関係の記録が乏しい」と判断された上で、「著作権で保護された作品を批判したり、パロディ化したり、その他の方法で改変したりすることとは異なり、申立人による著作物の扱いは、法律で認められているような、著作権で保護された作品の『創造的かつ変容的な使用』には当たらない」と命令書には記されています。
今回の重要な論点として、「フェアユース」の概念があります。著作物を許可なく複製(コピー)して自分のコンテンツとして発信する行為は、厳密には著作権侵害にあたります。しかしアメリカの著作権法では、無断利用の場合でも「フェアユース」として認められれば違法性は阻却され利用OKとなっています。フェアユースにあたるかどうかの判断要素として、アメリカ著作権法は「作品の利用目的と性格」「著作物の性質」「利用された作品の量や重要性」「その利用行為が市場での作品の価値に与えた潜在的な影響度」を定めています。
ネット上の著作物の公正な利用「フェアユース」を裁判所はどのように認定しているのか? – GIGAZINE
今回の判決では、YouTubeチャンネルらがKADOKAWAのコンテンツの「重要な部分を複製」しており、十分な変容性を示していないため、フェアユースの原則による保護を受けられないと結論付けています。
トンプソン判事はまた、2026年2月の「Barnes vs Sanchez訴訟」の判決を引用しています。Barnes vs Sanchez訴訟では、著作権で保護された書籍の章を朗読したYouTubeチャンネルが、同様のフェアユースの保護を認められないと判断されました。短期間にYouTube動画のフェアユースに関する2件の判決が出たことで、裁判所が「朗読と要約を組み合わせた動画形式」に懐疑的であることを示唆しています。
今回の訴訟はまだ終了しておらず、3人のYouTubeチャンネルは第9巡回区控訴裁判所に控訴状を提出しています。彼らはまた、控訴審理が係属している間は個人情報の開示を延期するよう申し立てており、この申し立てについても、記事作成時点で決定は下されていません。
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