天体の位置や動きなどを社会や個人の性質などと結び付けて占う「占星術」は古代バビロニア発祥とされ、現代でも根強く愛されています。科学的研究によると占星術と社会の出来事や人間の性格を結び付ける証拠は一切見つかっていないにもかかわらず、古代から現代にわたって占星術が求められ続けている理由について、アメリカのコーネル大学で大衆文化に関する大規模講義を担当する名誉教授であるグレン・C・アルトシュラー氏が解説しています。
Examining the Enduring Appeal of Astrology | Psychology Today
https://www.psychologytoday.com/us/blog/this-is-america/202606/examining-the-enduring-appeal-of-astrology
占星術は古代バビロニアで行われた大規模な天体観測が起源であり、ギリシア・インド・アラブ・ヨーロッパ・中国へ伝わったとされています。バビロニア占星術は紀元前3世紀頃にギリシアに伝わり、個人の運勢を占う「ホロスコープ占星術」に発展しました。
紀元前4世紀ごろのローマ帝国時代の司教である聖アウグスティヌスは著書「神の国」の中で、ギリシャ人・ローマ人・イスラム教徒の間で何世紀にもわたって人気があった占星術を「もし人間の行動が星の運行によってあらかじめ決まっているのなら、神の意志や裁きはどこに存在するのか」と攻撃しています。その後、キリスト教がローマ帝国で国教になると、占星術を含む異教の慣習は時に死刑に処せられました。
占星術はその後数世紀にわたり盛衰を繰り返しましたが、20世紀初頭には占星術師たちは未来の予測をするのではなく、個人の誕生時の惑星・太陽・月の位置に基づいて行われる「性格分析と心理カウンセリング」へと方向転換しました。こうして、占星術は改めて絶大な人気を獲得します。
アルトシュラー氏はジャーナリストのカルロス・オルシ氏の著書「What Science Says About Astrology(占星術について科学が語ること)」を紹介する形で占星術について解説しています。書籍によると、占星術市場は現代でも伸び続けており、2020年には128億ドル(約2兆円)の規模でしたが、2030年までに228億ドル(約3兆6000万円)に成長すると予測されているとのこと。
一方で、占星術には多数の科学的反証があり、例えば1000万組のカップルを対象とした分析では、カップルの相性に占星術の影響は全く見られませんでした。また、全く同じ時間に同じ場所で生まれた人でも、性格が同じ、あるいは似ているわけではないことを示す研究もあります。さらに、占星術師が使用するホロスコープは、人によって大きく異なるものを使っており、実際の星の配置を正しく分析していない可能性もあります。
科学的反証にもかかわらず占星術が依然として人気な理由として、オルシ氏は性格分析を受けた人の典型的な反応を挙げています。占星術師の性格分析を受けた患者やクライアントは、分析結果から自分自身に当てはまる部分を見いだし、その診断・治療・理論的見解を有効かつ有用なものとして受け入れる傾向があるとオルシ氏は指摘。さらに、占星術に懐疑的な立場をとる人でさえ、自分に関する概ね好意的な報告があった場合には、それを正確だと判断して占星術に対してより好意的な態度をとるようになる傾向があるとのこと。
経験豊富な占星術師は、顧客との関係の重要性を認識し、顧客に好印象を与える方法を理解しています。自信に満ちた態度を見せ、年齢・収入・学歴・人種・性別など占星術とは別の情報に耳を傾け、観察し、相談者から情報を引き出します。その上で共感的でドラマチックな態度を取り、顧客が聞きたいことを伝えるのが占星術師の仕事であり、「占星術は現実には何の根拠もない」とオルシ氏は指摘しています。
オルシ氏は「占星術は人類が宇宙を理解しようと試みてきた最も長く続く試みの1つであり、自然界に法則を見出そうとしてきたものです。しかし、今や博物館や歴史書の中にこそふさわしいものであり、私たちの日常生活にはふさわしくないものとなっています」と結論づけています。
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