16人の数学者がAIの精度や信頼性など数学分野への潜在的な脅威について警告する「ライデン宣言」を発表 – GIGAZINE


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数学研究におけるAIの利用が証明の信頼性、著作権や貢献の帰属、研究の自律性などに影響を及ぼすとして、15大学の研究者16人からなる作業部会が2026年6月2日、「Leiden Declaration on Artificial Intelligence and Mathematics(人工知能と数学に関するライデン宣言)」を発表しました。宣言はAIを数学から排除するのではなく、数学の中核的価値を守りながらAIを使うための透明性、査読、人間の責任、産業界との関係に関する規範作りを求めるものです。

Leiden Declaration on Artificial Intelligence and Mathematics
https://leidendeclaration.ai/

Leiden Declaration: AI is challenging the core values of mathematics – Leiden University
https://www.universiteitleiden.nl/en/news/2026/06/leiden-declaration-warns-ai-is-challenging-the-core-values-of-mathematics

ライデン宣言は、数学の証明が人間ではなく、仕組みを完全には理解できないアルゴリズムによって作られるようになった場合、誤りの責任や正しい結果への評価を誰が負うのかという問題を提起しています。また、AIが生み出した証明が本当に新しい成果なのか、それとも既存研究を適切な引用なしに組み替えたものなのかをどう見分けるのかも、もはや仮定上の問題ではないとしています。

この宣言は、オランダのライデン大学ローレンツセンターで2025年9月に開かれた「Mechanization and Mathematical Research」というワークショップをきっかけに生まれました。会合には10カ国から約60人の数学者、コンピューター科学者、人文社会科学の研究者、政策関係者らが参加し、その後、アイントホーフェン工科大学のJim Portegies氏が招集した16人の作業部会が宣言をまとめました。

宣言は数学が単に結果の集積ではなく、理解、明晰さ、判断力を育てる人間の営みだという立場とした上で、数学研究の価値として「証明による高い確実性」「結果への著者の責任」「第三者による検証可能性」「研究の深さや重要性を評価する共同体の基準」「研究課題を自律的に形作る力」を挙げています。


さらに宣言はAIが5つの脅威をもたらすと指摘しました。

◆第1の脅威:もっともらしいが誤っている証明や議論が増えること
宣言は、現在の自動化技術が正しい数学的証明と見分けにくい不正確な議論を生成し得るとし、査読制度が正しさ、透明性、独立した検証可能性を担保し続けられなくなる恐れがあると警告しています。

◆第2の脅威:貢献の帰属と著作権の問題
AIモデルは、公開された数学論文やライブラリを広く利用して学習しながら、出力時に人間の研究成果を適切に引用しないことがあり、宣言はこれが数学における伝統的な評価と責任の仕組みを損なうと指摘しています。

◆第3の脅威:AI技術への依存と不平等
最新の独自AIや高価な計算資源にアクセスできる研究者が有利になれば、採用、資金配分、評価の仕組みがAI利用そのものに引き寄せられ、そうした技術を使えない研究者や使いたくない研究者が不利になる可能性があります。

◆第4の脅威:査読された論文ではなくプレスリリースやブログ記事でAIによる数学的成果が大きく宣伝されること
宣言は、こうした発表がAIの能力を過大評価させ、人間による先行研究や貢献を過小評価させるだけでなく、特定の数学課題を商用AI製品の一般的推論能力の指標として使うことにもつながるとしています。

◆第5の脅威:数学研究の自律性の喪失
技術企業の関与が強まることで、数学的に深い意義を持つ問題ではなく、自動化しやすい問題や企業の製品を目立たせる問題が優先される恐れがあると宣言は述べています。


こうした問題への対応として、宣言は論文内で大規模言語モデル、機械学習システム、証明支援系、数学ソフトウェアなどの利用を明示する「ツールおよび計算資源の開示」欄を設けることを数学者に推奨しています。また、AIを使った場合でも、証明の正しさ、議論の妥当性、先行研究への引用の完全性については人間の著者だけが責任を負うべきだとしています。

宣言はさらにAIを著者として扱うべきではなく、信用と責任は数学共同体に属する人間に残るべきだとしています。AIが適切な帰属を行えない限界がある以上、新しい結果の基礎となった出典を積極的に探して示し、十分な帰属ができない場合はそのことを明記する必要があるという考えを示しました。

研究機関や学会、非営利の研究助成機関に対しては、AIを使った論文投稿や査読に関する方針、著者性、透明性、知的財産、行動規範を整備することが求められます。AIで得られた結果については、人間が中心的な議論を説明できるようにすること、必要に応じて形式検証を求めること、理論的結果と計算結果を相互確認することなども提案されています。


加えて、宣言は数学的成果は引き続き査読付きの学術誌、会議録、書籍などで発表されるべきであり、プレスリリースやブログ記事は補助的役割にとどまるべきだと強調しています。さらに、産業界から独立した大学、国家、国際レベルの研究所や、個々の研究者が利用しやすい低資源型の技術を支援することも求めています。

政府や政策決定者に対しては、著者の権利を守る法的保護を強化し、AI企業による過剰な宣伝をうのみにせず、数学者を含む専門家の意見を政策判断に取り入れることが求められています。宣言はまた、AI産業の規制と、公的な計算インフラへの投資を求め、数学研究が一部の商業技術に依存しすぎる状況を避けるべきだとしています。


ライデン宣言は国際数学連合(IMU)から正式に支持されています。IMU副会長のUlrike Tillmann氏は、AIは新しく刺激的な機会を開く一方で、見過ごせない問題を生んでおり、数学研究の未来は人間の判断、公正で透明な慣行、国際的な数学共同体の共有価値によって導かれるべきだと述べています。

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