
OSやアプリのメモリ使用量がPCのメモリ(RAM)容量を上回るとPC全体のパフォーマンスが大きく低下します。ベンチマークソフトを開発するPuget Systemsの検証で、コンテンツ制作向けアプリにおいてメモリ容量16GBではコンテンツ制作中に性能が全体的に低下し、32GBと64GBの差は作業内容によって大きく変わることが示されました。
When Does RAM Capacity Impact Performance? | Puget Systems
https://www.pugetsystems.com/labs/articles/when-does-ram-capacity-impact-performance/
Puget Systemsは「重要なのは作業中のアプリが必要とするデータ量に対してRAM容量が足りているかどうかであり、容量に余裕がある状態ではさらに増やしても体感できる差が出にくくなる」と述べています。
一方でRAM不足が起きるとCPUやGPUが本来の性能を出し切る前に、処理待ちやキャッシュ不足がボトルネックになってしまいます。特に写真編集や動画編集、モーショングラフィックス、VFXのように大量の画像データや動画フレームを扱う作業ではこの影響が表面化しやすくなるとのこと。
今回Puget Systemsは、AMD Ryzen 9 9950X3D2 Dual Edition、ASUS ProArt X670-E-Creator、GeForce RTX 5080、DDR5-5600 32GB RAM2枚を搭載した環境で、64GB・32GB・16GB相当のメモリ容量を比較検証しました。Adobe Lightroom Classic(バージョン15.3)、Photoshop(バージョン27.6)、After Effects(バージョン26.2.1)、Premiere(バージョン26.2.2)、DaVinci Resolve(バージョン20.3.2)で、PugetBench for Creators(バージョン2.0.0)を使って、各アプリの実用的な処理性能を測定しています。
Lightroom Classicでは、RAMは写真編集で生成されるデータを保持するキャッシュとして使われます。64GBと比べると32GBの総合スコア低下は2.5%にとどまりましたが、16GBになると影響はさらに明確で、64GBと比べて総合スコアは45%低下しました。
AI関連処理では、64GBと32GBでパフォーマンスに大きな差はみられませんでしたが、16GBだとほぼ半分にまで低下しています。
さらに16GB環境だと64GB環境と比較してインポートでは8.5%、エクスポートでは118%の性能低下が示されており、大量の写真を扱う作業では16GBが明確な制約になり得ることがわかりました。
Photoshopでは調整やレイヤー、エフェクトなどによって生成される編集データをRAMに保持します。総合スコアでは32GBと64GBの間にほぼ差はありませんでしたが、16GBでは64GBより20%低い結果になりました。
Photoshopで特に差が出たのはフィルター処理で、16GBは64GBより31%低いスコアでした。軽い写真編集や簡単な合成であれば32GB以上であればOKですが、高解像度画像の複雑な合成や他アプリを同時に使う作業では64GB以上が推奨されます。
After Effectsでは、RAMは主にプレビュー再生のためにレンダリング済みフレームを保持する用途で使われます。32GBと64GBでは総合スコアに差がありませんでしたが、16GBだとパフォーマンスが64GBより43%低い結果になりました。
特にRAM不足の影響が大きかったのは2Dコンポジションとトラッキング系の処理で、2Dコンポジションだと16GBはパフォーマンスが32GBの約58%にとどまっています。
そして、トラッキング系処理のパフォーマンススコアでも、16GBは32GBや64GBの約56%という結果に。
一方で3Dスコアはメモリ容量の影響を大きく受けておらず、16GBのパフォーマンススコアは32GBや64GBとほぼ並びます。After Effectsでもすべての処理が同じようにRAM依存というわけではありません。
PremiereではRAMがデコード済みの動画フレームや音声バッファを保持し、編集や再生を支えます。Puget Systemsによる検証では、16GBと32GB・64GBの総合スコア差は7%にとどまり、RAM容量の影響は他のアプリより小さい模様。
ただし、総合スコアの結果は実際の動画編集プロジェクトの複雑さを完全に反映するものではありません。LongGOP形式の動画編集だと、16GBのパフォーマンスが32GB・64GBより約12%低くなりました。
また、RAW動画では14%低下しており、素材の形式や解像度、尺、レイヤー数によってはメモリ不足が編集体験を悪化させる可能性があります。
Premiereのベンチマーク結果から、Puget Systemsは「GoProやDJI Osmo Action、Mavicドローンなどで撮影したH.264 8-bit 4:2:0のような軽めの素材を編集する趣味用途であればRAM容量は32GBで十分といっていいだろう」と論じています。一方で、より本格的な動画編集では64GBがやはり適しており、RAWや長尺の編集ではさらに多い容量が必要になることもあるといえます。
同じく動画編集ソフトのDaVinci Resolveでは編集やFusionによる合成、Fairlightでの音声処理、GPUエフェクト、AIツールなど、作業ページごとにRAMの使い方が異なります。32GBは64GBより総合スコアが2.5%低く、RAWスコアは3%、Fusionスコアは5%低い結果でしたが、いずれも通常のばらつきの範囲とされています。一方、16GBでは総合スコアが64GBより9%低下しています。
特にFusionでのテストでは、16GBのパフォーマンススコアは64GBの31%に低下。Fusionはノードベースで処理結果を次々に受け渡すため、メモリに保持されるデータ量が増えやすく、容量不足の影響が出やすいと考えられます。
Puget Systemsは今回の結果から「16GBは現在のコンテンツ制作向けPCでは厳しい容量になりつつある」と論じています。上位CPUやGPUを搭載していても、メモリが足りないと処理全体の足を引っ張り、せっかくのハードウェア性能を生かし切れません。
一方で、32GBと64GBの差は常に大きいわけではありません。軽めの写真編集、単純な画像加工、軽量な動画素材の編集などでは32GBでも十分な場合があり、学生や趣味用途ではコストを抑える選択肢になります。ただし、Puget Systemsは「プロの制作環境や複雑なプロジェクトであれば64GBが現実的なスイートスポットだ」と述べています。高解像度素材、AI処理、複雑な合成、長尺の映像編集、複数アプリの同時起動が重なるほど、メモリ容量は単なる余裕ではなく、作業速度と安定性を左右する要素になるためです。
Puget Systemsは「PCのメモリ容量がパフォーマンスに影響するのは、アプリの処理データやキャッシュが搭載メモリに収まり切らない時だ」と述べ、制作向けPCで長く安定して使うことを考えるなら64GBを基準にし、作業内容によってはそれ以上を検討するのが妥当だと主張しました。
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