ボストン・ダイナミクスは電動人型ロボット「Atlas」が小型の冷蔵庫を運ぶムービーを公開しました。Atlasのエンジニアによると、実際の環境における性能と信頼性を実現するにはハードウェアと動作の両面で飛躍的な進歩が求められ、今回公開されたムービーはその進歩を示すための重要な実験であるそうです。
Training a Humanoid Robot for Hard Work | Boston Dynamics
https://bostondynamics.com/blog/training-a-humanoid-robot-for-hard-work/
Everyone asks if Atlas can bring them a drink, but this robot can bring you the whole fridge. Using AI-driven behaviors, Atlas is doing hard work and coordinating its whole body to manage heavy objects, balancing complex contact points with accuracy and reliability. pic.twitter.com/yXG0dY6Qqf
— Boston Dynamics (@BostonDynamics) 2026年5月18日
ムービーではまず、Atlasが木のブロック上にある冷蔵庫の前まで歩きます。
胴体をぐるりと一回転。
しゃがんでしっかり支える体勢を取ります。
そのまま立ち上がることで冷蔵庫を持ち上げました。背面方向に傾くことでバランスをとっています。
持ち上げた体勢のまま後退して飲み物を待つ人のもとへ移動します。
ぐるりと体を回転することで冷蔵庫を机に置きました。
冷蔵庫から飲み物を取り出しています。
このデモの技術的詳細がブログで公開されています。ボストン・ダイナミクスによると、現状の最先端技術における主流のアプローチは優れた動作を実現する一方で、世界を理解するためや動作制御を行うために継続的なカメラフィードバックに過度に依存しており、見た目だけでは判断できない重量や表面の滑りやすさなどを正確に把握できないことがあるそうです。また、指先などロボットの非常に限られた表面を通して相互作用していたり、ほぼ例外なく軽量タスクに特化していたりと、いくつかの限界も抱えているとのこと。
そのためボストン・ダイナミクスは、実際の仕事、特に重労働を伴う仕事では「身体的知能」の概念を広げる必要があると指摘しています。ただ見て手を使うだけではなく、重さを予測して体を傾け、持ち上げるものの形状に合わせて体を動かして重さに適応し持ち上げられるかどうかを確かめた上で、手だけではなく脚や胴体全体を利用して荷物を支える人間のような動作をする必要があると説明しています。
全身を使って重いものを持ち上げるデモを実現するため、Atlasは「強化学習(RL)」によって膨大な数の冷蔵庫のバリエーションを使って動作を学習することで、さまざまな形状や重量の冷蔵庫に適した持ち上げ方を理解できるようにトレーニングされました。Atlasは数百万時間分ものシミュレーションを実行し、冷蔵庫の様々なバリエーションに合わせて動作を適応させることを学んだそうです。
ボストン・ダイナミクスはシミュレーション環境の忠実度の高さを最も重要な改善点の1つとしてアピールしています。シミュレーションで良好な動作が見られた場合にはロボットでも同様に良好な動作が見られるように、シミュレーションと実機動作とのギャップが非常に小さくなっていると説明されています。
そのほかムービーからは読み取れない重要な特徴として、Atlasは量産や保守性も重視した設計になっているとのこと。胴体全体で使用する駆動装置であるアクチュエーターはわずか2種類に統一されており、大量生産による高性能化と低コスト化を両立しています。また、機体は完全に左右対称で、両腕と両脚は完全に同一とのこと。肩部や骨盤部の構造も共通化されていることで、部品点数や整備コストを削減しています。さらに、関節をまたぐケーブルを排除することでアクチュエーターの無限回転を可能にしており、故障率低下と柔軟な動作を実現したとボストン・ダイナミクスは説明しています。
ボストン・ダイナミクスは2026年1月にGoogleのAI研究開発企業であるGoogle DeepMindとAIパートナーシップを締結したことを発表しており、Google DeepMindのロボット向けAIモデルの「Gemini Robotics」をAtlasに統合する取り組みをしています。ボストン・ダイナミクスはAtlasを研究用ロボットではなく量産前提の産業用ロボットと位置づけており、Atlasの信頼性とパフォーマンスを最大限に高めると同時に、新たな機能の限界を押し広げていくと述べています。
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