書店に並んでいる本の価格を見て「えっ、昔はもっと安かったのに!」と思う人は少なくないはず。かつて老舗出版社のトーマス・ネルソンで副社長を務めていたジョエル・J・ミラー氏が、「本の価格が高騰しているのは誤解だ」という意見をブログで発表しています。
No, Books Are Not Remotely Too Expensive – by Joel J Miller
https://www.millersbookreview.com/p/no-books-are-not-remotely-too-expensive
1950年代にJ・R・R・トールキンの指輪物語の第1巻が出版された時、本に定価は記載されていませんでした。本に定価が記載されるようになったのは1961年で、指輪物語には5ドル(約800円)の価格が付けられました。
60年以上が経過した2026年に同じ本を購入しようとすると、20ドル(約3200円)から30ドル(約4800円)、もしくはもっとかかる場合もあります。こうした状況を見て、「本の価格が高すぎる!」と驚く人もいます。
確かに名目上の価格は5ドルから数倍に跳ね上がっていますが、ミラー氏は価格を比較するには「インフレを考慮する必要がある」と述べます。実際、インフレの影響を計算するツールでは、1961年の5ドルは2025年の53.85ドル(約8600円)に相当すると算出されますが、2025年の実際の本の価格はその半分程度です。
ミラー氏は「確かに書籍はインフレの影響を受けるが、それでも驚くほどインフレに強い」とむしろ本が安価になっていると主張しました。
日本では全国出版協会の出版科学研究所が消費者物価指数と出版物の価格指数を比較した図を公開しています。月刊誌や週刊誌は付録が一般化したことにより1990年代後半から消費者物価指数を上回る勢いで価格が上昇していますが、一般書籍の価格指数は消費者物価指数を下回っており、日本でも「書籍はインフレに強い」と言ってよさそうです。
一方、消費者物価指数ほどではないにしても書籍の価格が上昇していることは間違いありません。ミラー氏は「著者への前払い金」「紙の価格」「印刷・製本のコスト」「運送料と倉庫保管料」「開発編集・コピー編集・校正」「表紙デザイン」「レイアウトと組版」「索引」「引用資料の権利と許可」「販売手数料」「マーケティング費」「返品への対応」と費用をリストアップし、「書籍の制作コストは膨大だ」と価格が上がる理由を説明しています。
また、書籍の価格が上昇しても出版業界は全然利益が出ていないことにも言及しています。例えば、再生可能エネルギー業界の利払い前・税引き前・減価償却前利益(EBITDA)の売上に対する比率は58.45%で、非常に利益を出しやすい業界であることが分かります。その他、石油・ガス業界であれば43.21%、半導体は36.77%など景気の良い数字が出ていますが、出版業は売上高EBITDA比率が13.18%しかありません。
ミラー氏は「出版社にこれ以上値下げを行える余地はない」と述べ、「人類が生み出した最も没入感のあるエンターテインメントを10時間から20時間も提供してくれる」と本の利点を強調。「本の価格は上昇したが、他の物価ほどは上昇していない。人々が安さに慣れすぎたせいでそれがお得だったことを忘れてしまっただけだ」と本が安いことを再び訴えました。
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