TVアニメ『マリッジトキシン』堀元宣監督インタビュー、原作と同じくどんどんハチャメチャへ – GIGAZINE


集英社のマンガ誌アプリ『少年ジャンプ+』にて連載中の『マリッジトキシン』がTVアニメ化され、2026年4月7日(火)より毎週火曜23時(よる11時)からカンテレ・フジテレビ系全国ネット”火アニバル!!“枠で放送中です。今回、本作で監督を務める堀元宣(ほり もとのぶ)さんにインタビューする機会を得たので、作品制作について、そして堀監督自身について、お話をうかがいました。

TVアニメ『マリッジトキシン』オフィシャルサイト
https://www.marriagetoxin-anime.com/

GIGAZINE(以下、G):
『マリッジトキシン』は連載を第1話から追っかけて読んでいるので、まずアニメ化の話を聞いた時に「マジかよ!?」と思い、さらにアニメーション制作がボンズフィルムだと知った時に「!?!?」となってしまいました。

TVアニメ『マリッジトキシン』監督・堀元宣さん(以下、堀):
普段の作品とはちょっと毛色が違う感じはあるかもしれません(笑)

G:
それで「監督:堀元宣」と名前があり、いったいどういう作品ができあがるのだろうかと思ってPVを見たらとてもスタイリッシュで「すごいことになるかもしれない」とビックリしました。本作について、監督のところに話があったのはいつごろのことだったのですか?

堀:
メタリックルージュ』をやっている途中、あと1~2カ月で作業が終わるかなというときだったと思います。その前から、自分としてはあちこちのスタジオに行くよりも、周囲に自分のニュアンスが伝わるようなスタッフがいる環境で経験を積み重ねていったほうがいいと思い、ずっとボンズさんと仕事ができればいいなと考えていたので、ボンズ代表取締役の南(雅彦)さんに「次の仕事、ありますか?」と聞いていたんです。そうしたら、しばらくして社長室で原作を手渡されました。読んでみたらとても面白かったので「やらせていただきます!」となりました。

G:
YouTubeで公開されている「メイキング・オブ・マリッジトキシン Vol.1 キャラクターデザイン篇」では、キャラクターデザイン・総作画監督の徳岡紘平さんから「360度動いて破綻しない絵に調整する」という発言がありました。堀監督自身も「顔をぐるっと回してみて矛盾がない方がアニメーターも描きやすい」とおっしゃっていて、「言われてみれば確かにその通り」だと思ったのですが、漫画を読んでいる時のことを思い出すと、すでに360度どこから見たとしても破綻していないのではないかと感じました。アニメを作るにあたっては、どういった点を調整することでアニメ向けのキャラクターデザインとして仕上げるのでしょうか?

メイキング・オブ・マリッジトキシン Vol.1 キャラクターデザイン篇 – YouTube


堀:
僕も作画出身なのですが、アニメーターになってみないとわからない部分というのが結構あるなと思います。たとえば「リアルな絵柄」というとき、アニメーターのいう「リアル」と、漫画家やイラストレーターの方のいう「リアル」はちょっと違っているんです。アニメーターとしての立場から見ると、漫画やイラストの「リアル」というのは絵柄の問題で、「顔のこのあたりに目があり、目と口の距離感はこれぐらい」というような対比のことなのではないかと思うんです。でもアニメーターとしては、たとえば子ども向けにデフォルメされたような絵柄であっても「ちゃんと360度回せるのか」のが「リアル」の指すところというか、立体が把握しやすい絵のことを指しているという部分があります。

G:
立体を思い浮かべた時に、頭の中でぐるぐる回せる人と回せない人がいると聞きます。監督は脳内でぐるぐると回せるタイプですか?

堀:
そうですね……アニメーターはちょっと作業的な、具体的なプロセスで考えているところがあって、横顔と斜め顔があると、その間を中割りするような感覚があるんです(笑)

G:
えっ(笑)

堀:
たとえば、顔が回っている間に、耳がむにっと動いちゃう。漫画家さんの絵は、リアルっぽく見える絵柄でも正面と横顔と斜め顔でルールが違っていたりするんです。

G:
ああー、なるほど。

堀:
目の描き方にしても、アニメーターは「目は球体」というのがまず前提にありますから、その上で原作の絵柄を踏襲しなければいけないので、「この部分はちょっとリアルさを離れた絵柄にしていますけれど、それはここだけです」というルールを、キャラ表を見て読み取ります。「目の描き方は原作を踏襲したものだからほかのルールを無視してください」とかもありますね。

TVアニメ『マリッジトキシン』では徳岡紘平さんが、原作の絵そっくりに見えるのに、実は原作の絵からいろいろアニメ向きにルールを整理してアニメーターが描きやすくしてくださっています。印象としては原作と一緒に見えるのに中身は全然違うという、かなり特殊なことをしています。キャラクターデザインというのは、原作に似ている絵が描けるというだけではなかなか難しい役職なんです。

G:
そういうことだったんですね。同じ動画内では、徳岡さんが「『四白眼』『三白眼』の設定を増やしてください」と監督から要望があったと話していましたが……。

堀:
これはアニメーター的なルールとはまた違ったところなのですが、たとえば城崎はわりと、黒目の周りが全部白目になっているような、びっくりしたような表情なんです。いまメジャーな絵柄だと、上まぶたと下まぶたの間にかかるように黒目があるんですが、城崎の場合は黒目が上まぶたからも下まぶたからも離れているんです。だから「四白眼」が必要だなと(笑)


G:
なるほど(笑)

堀:
下呂くんについても、黒目がすごく小さくて原作の時点でぱっと見で暗そうなキャラクターだとわかるデザインになっていて、黒目が大きくなると下呂くんっぽくなくなるので「三白眼」にと。だからこれは単純に、原作の特徴を拾おうという意図だったんです。


G:
メイキングの「Vol.2 色彩設計篇」では、監督が「単行本の表紙のような色鮮やかなものをアニメでも目指した」と話をする中で、「アニメーションになるとどうしてもリアル寄りになってしまうので」という発言がありました。「リアル寄りになってしまう」ことは、堀監督が懸念したポイントだったのでしょうか?

メイキング・オブ・マリッジトキシン Vol.2 色彩設計篇 – YouTube


堀:
よく「作画崩壊」と言われますけれど、「なぜ人は作画崩壊していると感じるのか?」といえば、なにか正解があって、そこから外れているから崩壊していると感じているんだと思うんです。

G:
なるほど。

堀:
ではその正解、基準は何かと考えると、普段見ている現実世界なんです。手に持っているペットボトルを落としたらこれぐらいの速度で落ちるというのが、何十年も生きていると想像がつくようになります。その常識から外れていると崩壊しているように感じるんです。それこそが「作画崩壊」なのだろうと思います。

G:
おお、なるほど。

堀:
色の点でも、2000年代の初期にアニメがだんだんとセル画からデジタルへと移行した時期に、急に色鮮やかな絵になった時期があると思います。

G:
はい。

堀:
それは、「セルに塗って撮影してフィルムにする」という工程を経る前提で決められた色を、そのままデジタルでも塗っていたからなんです。いったん写真に撮る工程を挟むと、どうしても色がくすむんです。でも、デジタルは塗った色がそのまま画面に出て、緑がそのまま緑として出るので、鮮やかすぎるんです。だんだんと落ち着いてきたのは、「この色をそのまま出すと鮮やかすぎる、派手すぎる」ということがわかって、くすませたような自然な色にしたからなんです。これも1つの「作画崩壊」だと思うんですよね「草の色ってこんなに鮮やかじゃないよね?」と、みんなの中にある基準から外れてしまうから蛍光グリーンの草はおかしいと思うわけで、ある程度、色をくすませないと自然に見えないんです。でも、『マリッジトキシン』の表紙って、すごく色鮮やかじゃないですか。

G:
確かに。

堀:
あの色のままの人が世界に存在していると浮いてしまうんです。まるで、全身蛍光色の服を着ている人みたいな。歯も、あまりにもホワイトニングしすぎると不自然になるじゃないですか。

G:
(笑)

堀:
なので、色を鮮やかにするというのは、結構難しいんです。浮いてしまうのではないかと、ちょっと怖いというか……。でも本作は「漫画を読んでいた時の印象がそのままアニメになればいいな」というのを目指しました。漫画は基本的に白黒だし音もありませんが、みんななんとなく「ここはこんな色だろうな」とか「こういう音で、これぐらいの勢いでジャンプしているんだろうな」とか、自分で補完しながら読んでいると思うんです。そのときに拠り所になっているのは、色がついている表紙の絵だと思うので、表紙の絵に近づけられればいいなと。僕自身がそうで、読んだとき、表紙のような色使いでドラマが描かれていると思ったんです。そこに、淡い色遣いの人が出てきたら「ちょっと違うな?」となると思うんです。きっと、鮮やかな方が『マリッジトキシン』らしいと思ってもらえるだろうと。

G:
色もですが、原作では動きもかなりハチャメチャな、現実離れしたものも出てきます。そこも同じように調整しつつ、という感じですか?

堀:
さすがはアニメ化されるぐらいヒットする作品は違うなと思ったポイントなんですが、原作の第1話は、下呂が城崎を監禁していたヤクザを倒すまでで、意外とおとなしいんです。原作をご存じの方は、結構ハチャメチャなアクションをしている作品という印象があると思いますが、それは単行本が2巻、3巻と進んでいってからの話で、だんだんとリミッターが外れていってるんです。

G:
そうでしたか。

堀:
偶発的にそうなったという部分もあるかもしれませんが、読み進めていくと段階的にリミッターが外れているなと。なので、アニメの第1話は、原作の第1話と第2話を1つのお話として構成しているんですが、PVにも登場した車を真っ二つにする描写まで、同じように段階的にリミッターを外していっています。この段階を30分で描いているのが第1話だと思っていただけるといいかなと思います。


G:
ということは、話が進むとハチャメチャが増えていく感じですか?

堀:
そういった部分ではなるべくリアリティを考えずに、原作通りにハチャメチャにしていきたいなと思っています(笑)


G:
めちゃくちゃ楽しみですね(笑) ちなみに、堀監督は作画出身ということなのですが、アニメ業界を目指したきっかけは何かありましたか?子どものころから絵を描いたりはしていたのでしょうか?

堀:
中学生ぐらいのころには漫画の模写とかをやって、面白いなと思っていました。だんだんと熱中してしまって、高校生ぐらいになると、どの授業のときでも落書き帳にずっと絵を描いていました。当時は漫画家やイラストレーターになりたいと思っていたのですが、ものすごい田舎出身だったので誰も応援してくれる人がおらず……(笑)

G:
あらら。

堀:
美大に行きたいと思っても、父親に相談すると猛反対されて言い返せず……。そんなことがあったので漫画家やイラストレーターになりたいとは言えず、大学は経済科に行ったものの、勉強せずに漫画をただひたすら練習して(笑)

G:
(笑)

堀:
漫画家になりたいという思いはあったものの、本当に勉強しなかったもので、結局2回ぐらいダブってしまったので大学を辞め、ほぼ家出みたいな形で東京に出ることになりました。それからはフリーターをしていて、ヘトヘトで家に帰ると絵も描けなかったんですが、そのころ『もののけ姫』を見たんです。

G:
おお。

堀:
「アニメ会社なら、働きながら絵の練習もできるんじゃないか?」と思い、電話帳で調べてスタジオジブリに電話したら「秋ぐらいに『アニメージュ』に募集が出ます」と言われ、秋に本屋でアニメージュを確認したら本当に載っていたので応募したら一次試験は通ったんですが、二次がダメ。「一次は受かったのに!」と悔しくて翌年も挑戦したものの、またダメでした。さすがにもう25歳ぐらいになっていて、就職しないとダメだとなり、『もののけ姫』のパンフレットでクレジットされていた他のアニメスタジオの名前を確認して、電話帳で探して五十音順で電話をかけました。

G:
えぇ……すごい……。

堀:
その中でオープロダクションに連絡した時に「じゃあ、絵を持ってきて」と言われて、住所を聞いたら「いつから来られる?」みたいな感じでした。オープロダクションはもともと有名な会社だったんですが、僕が行ったころはまだまだ小さな会社でした。「アニメ会社」というと会社のワンフロアみたいなところだと想像していましたが、畳敷きのマンションの部屋を3部屋ぐらい借りていて、畳は隣の人が立ってトイレに行くとき少し沈み込んで揺れるんですよ(笑)

G:
(笑)

堀:
……みたいな感じのところから僕は始めて、地道にやってきたという感じです。

G:
最初からアニメの監督になりたいとかではなく、アニメーターから経験を重ねて上っていったと。

堀:
最初はアニメーターになるつもりはなかったんですが、やってみたら案外向いていたのか続けることができました。向いているというよりは、ただただ辞めずに続けたという感じですが(笑)、もともと漫画家になりたかったこともあって、作画でずっと行くよりは演出もやりたいと思い、こうして監督もやらせてもらうようになりました。

G:
なるほど。最後に、今回『マリッジトキシン』をTVアニメ化していく中で、原作を読んだ時の印象と変わった部分や、うまくいった部分があれば教えてください。

堀:
だんだんとハチャメチャになっていく作品なので、最初に読んだときの印象よりもさらにアニメ映えするなと感じました。絵柄も等身が高くて、割とリアル寄りかと思っていましたが、アニメーターが描いていて楽しい、制約の少ないアクションも結構ハマる作品だなと。原作のある作品だと、アニメでやりすぎてしまうと原作の雰囲気から離れてしまうことがありますが、そういうこともなく、アニメ側が楽しんで好きにやっても受け入れてくれる、懐の深さがある作品だと思いました。

G:
話数を重ねてどう加速していくのかが楽しみです。本日はありがとうございました。

堀:
ありがとうございました。

TVアニメ『マリッジトキシン』は2026年4月7日(火)からカンテレ・フジテレビ系列全国ネット“火アニバル!!”枠にて毎週火曜23時(よる11時)から放送中です。また、同じく4月7日(火)23時30分からdアニメストア、DMM TV、Netflix、Prime Video、U-NEXTで配信がスタート。その他の配信サービスでも4月10日(金)23時から順次配信中です。


YouTubeでは作品のメイキングに迫る「メイキング・オブ・マリッジトキシン」全6回が配信されています。

メイキング・オブ・マリッジトキシン Vol.0 – YouTube


◆TVアニメ『マリッジトキシン』作品情報
・スタッフ
原作:「マリッジトキシン」静脈・依田瑞稀(集英社「少年ジャンプ+」連載)
監督:堀元宣
シリーズ構成・脚本:うえのきみこ
キャラクターデザイン・総作画監督:徳岡紘平
サブキャラクターデザイン:迫由里香
衣装デザイン:琴乃
プロップデザイン:永木歩実 ヒラタリョウ
美術デザイン:天田俊貴
美術:美峰
色彩設計:梅崎ひろこ
撮影監督:神林剛
3DCG:サンジゲン
CGディレクター:永嶋大輝
編集:坂本久美子
音響監督:山田陽
音響効果:三井友和
音楽:岩崎太整 yuma yamaguchi
プロダクション・スーパーバイズ:ボンズ
アニメーション制作:ボンズフィルム
製作:マリッジトキシン製作委員会

・キャスト
下呂ヒカル:石谷春貴
城崎メイ:若山詩音
姫川杏子:永瀬アンナ
潮雫:伊瀬茉莉也
嬉野シオリ:結川あさき
鳴子弦弥:斉藤壮馬
嵐山キミ恵:白浜灯奈乃
中川桃壱:土屋神葉
下呂アカリ:白石晴香
花巻トシキ:祐仙勇

©静脈・依田瑞稀/集英社・マリッジトキシン製作委員会

この記事のタイトルとURLをコピーする


ソース元はコチラ

この記事は役に立ちましたか?

もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

関連記事