肥満の増加は世界的な健康問題となっており、オーストラリアでは2024年に「太りすぎ」が「喫煙」を上回って最も主要な健康リスクになったと報告されています。合計50万人以上の人々を対象にした新たな研究で、肥満の人はそうでない人に比べ、重度の感染症で入院したり死亡したりする可能性が70%も高いという結果が示されました。
2020年から世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックでは、肥満の人の入院および死亡リスクが高いことが報告されました。そこで、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの疫学者であるミカ・キヴィマキ教授らの研究チームは、COVID-19に限らずあらゆる感染症と肥満との関連性を調査しました。
研究には、イギリスの成人の遺伝子配列と医療記録をリンクさせた大規模データベースであるUKバイオバンクと、フィンランドで収集された2つの大規模データベースが用いられました。今回の研究に用いられたデータには、合計54万人以上が含まれていたとのこと。
フィンランドのデータベースでは、参加者らが自己申告した身長・体重を元にボディマス指数(BMI)が算出されました。UKバイオバンクの参加者は体組成計を用いてより正確な測定が行われたほか、ウエスト周囲径も測定されました。
今回の研究では、肥満について「BMI30以上」「ウエスト周囲径が男性で102cm以上/女性で88cm以上」「ウエスト周囲径/身長比が0.6以上」の人と定義されました。
研究チームが年齢や性別を考慮に入れて分析したところ、肥満の人は感染症による入院または死亡リスクが70%高いことがわかりました。この関連性はその人が肥満に当てはまった定義に関わらず当てはまったほか、細菌・ウイルス・真菌・寄生虫といった病原体の種類、社会経済的地位、身体活動レベル、糖尿病の有無などに関係なくみられました。
さらに研究では、肥満度が高いほど感染症によるリスクが高いことも判明しました。BMIが「30~34.9」の人はBMIが「30未満」の人に比べて、感染・入院・死亡のリスクが50%高くなりました。そしてBMIが「35~39.9」の人はリスクが2倍、BMIが「40以上」の人はリスクが3倍になったと報告されています。さらに、最初のベースライン測定後に体重が増加または減少した人は、重度感染症のリスクもそれに伴って増加または減少したとのことです。
研究チームが肥満による感染症のリスク推定値を全世界のデータに適用すると、感染症に関連する死亡に肥満が寄与している割合は、2018年で約8.6%、2021年で約15%、2023年で約10.8%と推定されました。
キヴィマキ氏は科学系メディアのLive Scienceに対し、「肥満の人は感染症と戦うのが難しくなるかもしれません。余計な体脂肪はリンパ機能の障害、肺機能の低下、長期的な低レベル炎症の増加など、免疫系にさまざまな影響を与える可能性があります」とコメントしました。リンパ系は体内の液体バランスを維持するだけでなく、免疫細胞の訓練や輸送に役立っていることが知られています。

今回の研究はあくまで肥満と感染症の関連性を示したものであり、何らかの因果関係を証明するものではありません。しかし、後に脂肪細胞に分化する脂肪前駆細胞は免疫細胞のように機能することや、脂肪組織から炎症誘発性物質が分泌されて慢性炎症が引き起こされることなど、肥満と免疫を結びつける証拠が多数報告されています。
さらに、過去の研究では肥満が感染リスクに影響を与えるだけでなく、特定の病原体が肥満の発症と関連していることも示されています。しかし、これを示唆する証拠は主に実験動物から得られたもので、人間から得られたデータはまだ決定的なものではないとのこと。
肥満は本人の意志力だけでなく、遺伝や幼少期の経験、文化的規範、経済的な不利、メンタルヘルス、精神疾患、職業など多岐にわたる要因が絡み合ったものであり、そう簡単に治療できるものではありません。しかし、近年はセマグルチドのようなGLP-1受容体作動薬が登場し、一部の人々では肥満が治療しやすくなっています。
キヴィマキ氏は、セマグルチドのような薬剤が感染症のリスクに及ぼす影響はまだ明らかではないと指摘。その上で、「今後の研究では、肥満がなぜ重度感染症のリスクを高めるのか、そのリスクを減らすために何ができるのかをより深く理解したいと思います」と述べました。
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