チャンピオン氏はムービーで、「目に見えない電波が見えるようになるとはどういうことか」を説明するため、古いデジタルカメラを分解して赤外線カットフィルターを外し、さらに可視光を遮断するフィルターを追加して、赤外線だけが写るカメラに改造しました。

アンテナの代わりの表現装置として強力な赤外線LEDを用意し、制御回路で光の強度を変化させてWi-Fiトラフィックの増減を光として再現します。

ノートPCに赤外線LEDの装置をつなげて、普通のカメラで撮影するとこんな感じ。

そして、赤外線が写るように改造したデジタルカメラで撮影すると、ノートPCの画面や周りにある豆電球の光は写らなくなっていますが、ノートPCの横に接続されている赤外線LEDの光はしっかりと写っています。

このように、Wi-Fiの電波という本来見えない光を見える光に変換することで可視化することが可能になります。そこで、HackRF Oneで電波を感知すると、周波数に対応したLEDフィラメントを光らせるというアイデアを採用します。

金属フレームはCADで板金のフラットパターンとして設計し、切断や穴あけ、曲げまで製造業者に発注。そして、届いた金属フレームにHackRF OneとRaspberry Piを搭載し、信号処理と発光制御の中枢にします。

LEDを個別制御するために、フィラメントを直接はんだ付けできる背面基板を設計し、16本ずつ駆動する基板を4枚に分割してI2Cで連結できる構成にします。

取り付け用ホルダーも設計して3Dプリントし、基板固定とフィラメントのガイドを兼ねさせます。フィラメントは片側をはんだ付けしてからシャーシにきつく巻き回し、反対側も固定する手順で装着し、合計64本にします。

各フィラメントは2Wで130ルーメン相当として、全点灯時に非常に強い光量になるよう意図的に設計。

狙いは2.4GHz帯と5GHz帯の電磁波活動を拾い、それをリアルタイムに64本のフィラメントへ翻訳することです。まずLEDドライバの制御コードを書き、トラブルシュートしながらコードで点灯制御できる状態にします。

チャンピオン氏によれば、「LEDドライバ回路のコイルが高速スイッチングで微振動し、明るさに応じてピッチが変わる音が出る」という現象が想定外に発生したとのこと。結果として64本がそれぞれ違う条件で動くことで倍音的な響きになったため、視覚に加えて聴覚的なレイヤーも作品に加わることになりました。

実際に「Spectrum Slit」を自室に置いてみると、昼間は都市の背景ノイズ程度で目立つ活動が少ない一方、近隣住民が帰宅して端末を使い始めると活動が強まるとのこと。また、検索や写真のアップロード、メッセージ送信、アプリ更新を行なうと光が強く輝き、夜に高画質動画をWi-Fiで連続ストリーミングすると、広い範囲が持続的に明るくなってスペクトル全体がすさまじい光の壁になるそうです。
