中国がレアアースの輸出規制を拡大、国家安全保障のためHDDなどの材料に対する規制を強化でPC部品供給にリスク – GIGAZINE


メモ


中国政府はレアアース(希土類元素)に対する輸出規制を拡大しました。輸出規制は2025年12月に発効予定で、ホルミウムツリウムエルビウムイッテルビウムといった元素の輸出が規制されるだけでなく、それらを磁石に加工する技術の輸出も規制対象となります。

China expands rare-earth export controls, creating risks for PC component supply — Beijing tightens grip on materials for HDDs and more to protect national security | Tom’s Hardware
https://www.tomshardware.com/tech-industry/china-expands-rare-earth-export-controls

China unveils sweeping rare-earth export controls to protect ‘national security’
https://www.ft.com/content/c4b2c5d9-c82f-401e-b763-bc9581019cb7

China tightens export controls on rare-earth minerals once again | TechCrunch
https://techcrunch.com/2025/10/09/china-tightens-export-controls-on-rare-earth-minerals-once-again/

China Tightens Grip on Rare Earths Ahead of Expected Trump-Xi Meeting – WSJ
https://www.wsj.com/economy/trade/china-imposes-new-controls-over-rare-earth-exports-35a4b106

Shares of rare earths miners rise after China tightens export controls | Reuters
https://www.reuters.com/world/china/shares-rare-earths-miners-rise-after-china-tightens-export-controls-2025-10-09/

アメリカは中国に対する半導体輸出を規制していますが、これに対抗するかのように、中国政府はレアアースの輸出を規制しています。2024年12月には兵器や半導体といった製品の製造に使用されるガリウム、ゲルマニウム、アンチモンといったレアアースのアメリカへの輸出を禁止すると発表。

中国が半導体とバッテリーに使用される主要鉱物のアメリカへの輸出を禁止、軍事転用防止で半導体の規制を強めるアメリカへの対抗策として – GIGAZINE


2025年4月には、さらにサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムといったレアアースが輸出管理対象となりました。これに続く形で、中国の商務省が「国家安全保障上の責務」として、レアアースの輸出規制を拡大すると発表。これにより、新たにホルミウム、ツリウム、エルビウム、イッテルビウムが輸出規制の対象となります。

また、今回の新規制では、レアアースの採掘技術を少しでも使用した製品を輸出する外国企業に対して、政府当局に対して輸出許可の申請が義務付けられました。これにより、外国企業が「中国産のレアアースを微量に含む磁石」や「中国の製造方法で製造された磁石」を輸出するには、当局からの許可が必要となります。なお、防衛機関には輸出許可が与えられない一方で、半導体製造にレアアースを使用する機関には個別の審査に基づいて輸出許可が与えられることとなるそうです。なお、公衆衛生上の緊急事態や災害救援といった人道支援を目的とした輸出には、輸出許可は不要となります。

中国は世界最大のレアアース供給国であるため、レアアースの輸出を規制すればHDDなどのPC関連製品の製造に影響が及ぶ可能性もあるとテクノロジーメディアのTom’s Hardwareは指摘。


例えば、高密度HDDでは回転するプラッターからデータを読み取るアクチュエーターアームを駆動させるために、ネオジム-鉄-ホウ素磁石を利用しています。このネオジム-鉄-ホウ素磁石を利用したボイスコイルモーターでは、高温下での保磁力を維持するために、ジスプロシウムやプラセオジムを利用しているそうです。そのため、中国がレアアースの輸出を制限すれば、これらを利用する製品のコストと納期に影響を与える可能性が高いとTom’s Hardwareは指摘しました。

また、ディスプレイも影響を受ける可能性があります。LEDバックライトや液晶パネルは、鮮やかな色彩を実現するためにユーロピウム、テルビウム、イットリウムといったレアアースを添加した蛍光体化合物を利用しています。ユーロピウムとテルビウムはどちらも新しい輸出規制の対象となっているため、ディスプレイのサプライチェーンで使用される数十種類の品目に輸出許可が必要となってしまう可能性があるわけです。もしもそうなれば、ディスプレイメーカーは厳しい状況に陥る可能性があるとTom’s Hardwareは指摘しています。

輸出規制がリサイクルや加工装置にまで拡大すれば、シリコンにも悪影響を及ぶ可能性があります。これは、シリコンウェハーの研磨やガラス仕上げに酸化セリウムスラリーが利用されているためです。これは目玉となる材料ではないものの、半導体製造工場やパネル組み立てラインの生産フローにおいて重要な役割を担っています。そのため、ライセンスの取得が遅れたり価格が変動したりすれば、「部品製造の遅延はほぼ避けられなくなる」とTom’s Hardwareは指摘しました。


明日突如これらの製品の価格が高騰するというわけではありませんが、「サプライチェーンのしばしば見過ごされがちな部分で、突発的な摩擦が生じる可能性を高めます。磁石や蛍光体は目新しいものではありませんが、交換が非常に困難です。2025年4月にはHDDメーカーのウエスタンデジタルが使用済みドライブからレアアースを回収するプログラムを開始しましたが、これはまさに今回のような輸出規制に備えた取り組みです」とTom’s Hardwareは記しています。

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