2025年ノーベル化学賞を受賞した北川進氏らの「金属有機構造体(MOF)」は何に役立つのか? – GIGAZINE

By Ill. Niklas Elmehed © Nobel Prize Outreach

2025年ノーベル化学賞は「金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks、MOF)」を開発した北川進氏、リチャード・ロブソン氏、オマー・ヤギー氏に贈られることが決定しました。MOFは多孔性配位高分子(PCP)や多孔性金属錯体とも呼ばれており、「空気中の二酸化炭素の回収」や「砂漠で空気中の水を回収」といった幅広い用途での活用が期待されています。

Nobel Prize in Chemistry 2025 – Popular information – NobelPrize.org
https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2025/popular-information/

北川進 理事・副学長、高等研究院特別教授がノーベル化学賞を受賞しました | 京都大学
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2025-10-08-2

MOFは金属イオンを利用して有機化合物を3次元的な構造に組み上げたもので、ナノメートルクラスの微小の穴が無数に空いた多孔性構造を特徴としています。MOFの穴には気体を吸着させて貯蔵することが可能。また、MOFの構造は柔軟に制御可能であり、穴のサイズを調整することで水分子や二酸化炭素分子など目的の気体のみを選択的に貯蔵することができます。


MOFは「大気中の汚染物質の効率的な除去する」「化学プラントにおいて、有用な気体を効率的に分離する」「危険なガスを貯蔵して安全に輸送する」「砂漠の空気中の水分子を収集して水を提供する」といった用途での活用が期待されています。ノーベル賞選考委員会は「一部の研究者は、MOFが『21世紀の材料』となるほどの大きな可能性を秘めていると考えています。(その成果は)時がたてば明らかになるでしょう。北川進氏、リチャード・ロブソン氏、オマー・ヤギー氏の3名は私たちが直面する課題を解決するための新たな機会を提供しました」と述べ、北川氏らの功績をたたえています。

記事作成時点では、北川氏は京都大学の「理事」「副学長」「高等研究院特別教授」として活動しているほか、化学企業の顧問なども務めています。北川氏は1990年に多孔性材料に関する研究を始め、1992年に多孔性配位高分子の合成に成功。そして1997年には気体分子を大量に貯蔵可能な多孔性配位高分子を世界で初めて合成しました。なお、MOFの理論そのものはロブソン氏が1989年にアメリカ化学会誌に掲載した論文で提唱しています。また、ヤギー氏は「金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks、MOF)」という名称の名付け親であり、MOFの多様性を実証した功績が認められています。


ノーベル化学賞の受賞発表直後に実際された北川氏への会見の様子は以下の動画で確認できます。会見の中ではMOFの開発にまつわる興味深い話題が複数上がっており、37分9秒頃からは「1992年に結晶材料の構造を決定するために京都大学の大型計算センターを利用していた。計算機の待ち時間に中途の構造を見ていたら、無数の穴がキレイに空いていて、中に有機の分子が入っていることに気付いた。それを見た時に『これは面白い』とピーンと来た」とMOFの構造をひらめいた際のエピソードが語られています。

【ノーカット】ノーベル化学賞 北川進 京都大特別教授 記者会見 – YouTube

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