全世界でビジネスを最大化するため地域ごとに価格を設定する「地域別価格」の実例を「Chess.com」で見た分析結果 – GIGAZINE


メモ


オンラインショッピングやデジタルコンテンツの配信により、誰でも世界中の顧客を相手に商売をすることができます。例えばAmazonのKindleストアで電子書籍を販売する場合、日本向けの価格を設定するだけで、為替に応じた各国向けの価格が設定され、海外からも購入できるようになります。しかし、単純に為替通りに変換しただけでは、ある国では手ごろな価格でも、別の国では高すぎるようなケースがあります。そのようなケースに対応する「地域別価格設定」の重要さを、ソフトウェアエンジニアのモー・ベイギ氏が実例を挙げて解説しています。

Chess.com Regional Pricing: A Case Study – Mo Beigi
https://mobeigi.com/blog/economics/chesscom-regional-pricing/


あらゆる企業は利益の最大化を目標としており、最大の利益を生み出すためには価格設定が重要です。価格が低すぎると、たくさん売り上げても利益が少なくなります。一方で、利益を大きくするため価格を高くしすぎると、潜在顧客が購入できなくなってしまいます。そのため、企業は利益最大化を念頭に置いた上で、価格と需要のバランスを取りながら利益が最大となる最適価格を決定する必要があります。

グローバルに展開している企業の場合、利益最大化を目標とするなら、各国の購買力や税金、送料、関税などの要因に基づいて、地域ごとに価格を調整する必要があります。例えば、アメリカでは一杯4ドル(約600円)で提供されるコーヒーが、同じ会社の同じメニューでもインドでは1.69ドル(約257円)で販売されているというケースが考えられます。


同様の地域別価格は、オンラインコンテンツでもしばしば採用されます。NetflixやSpotify、Disney+、YouTube Premiumといった多くの人気オンラインサービスは地域別価格設定を採用しています。例えば、YouTube Premiumの日本での価格は月額1280円ですが、タイでは159バーツ(約691円)、インドネシアでは5万9000ルピア(約553円)と安くなっています。一方で、オランダやイタリア、ベルギーでは11.99ユーロ(約1913円)と比較的高く、スイスでは15.90スイス・フラン(約2697円)と日本の倍以上の価格になっています。値下げや値上げなどの変動も、地域ごとに実施されています。

YouTube Premiumの料金が一部の国で値上げ、日本は対象外 – GIGAZINE


ベイギ氏は、地域別価格をどのように設定するのが良いか知るためのサンプルとして、人気のオンラインチェスプラットフォームであるChess.comが採用している地域別価格設定戦略を分析しています。Chess.comには、無制限に遊べたりインサイト機能を使えたりするプレミアムプランについて、「ゴールド」「プラチナ」「ダイヤモンド」の月額プランと、よりコストパフォーマンスが高い年間プランがあります。

Chess.comのプレミアムアカウントの価格は、IPアドレスに基づいた地域情報によって変わります。そこでベイギ氏は、VPNを使用して位置情報を偽装することで、IPアドレスを変更し、別の地域における価格を確認しています。一部の国では、IPアドレスを変更しただけだとその地域の価格が表示されなかったため、その地域のアカウントを別途作成しています。

以下は、Chess.comにおけるプレミアムアカウントの価格を世界地図にマッピングしたもの。色が濃い地域の方が価格は高く、色の薄い地域は安い価格で提供されています。色がついていない地域はサービスが提供されていないもしくはデータが得られなかった地域です。世界地図を見ると、アフリカや南アジア、東南アジアでは特に安くなっており、現地の購買力をおおよそ反映していると考えられます。


「ゴールド会員(月額)」において最も安いのはナイジェリアで0.67ドル(約102円)、最も高いのはデンマークで9.42ドル(約1435円)と、約14倍の価格差がありました。また、「ゴールド会員(年額)」の場合、最も安いナイジェリアは3.10ドル(約472円)、最も高いアイルランドは 65.19ドル(約9900円)と、約21倍の価格差が生まれています。

また、その他の興味深いポイントとして、「Friends&Familyプラン」の地域差があります。Friends&Familyプランは、プレミアムアカウント1個で6人まで家族や友達と共有できるというもの。地域別に価格が異なるため、「価格が安い国でアカウントを作成し、それを別の国で共有する」ということができないように、調査対象となった126カ国のうちFriends&Familyプランの国境を越えた利用が可能なのは47カ国のみで、79カ国では国内のみとなっています。国境を越えた利用が可能なのはいずれも、ある程度プレミアム会員価格が高い国のみです。

ベイギ氏のサイトでは、調査対象となった126か国全ての価格ランキングが表で確認できるほか、JSONデータファイルがGitHubで公開されています。なお、2025年10月1日時点の価格において日本は安い順で77位であり、アメリカを基準とした価格割合は「22%安い」とされていました。なお、日本ではFriends&Familyプランの国境を越えた利用はできません。

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