AIが広く普及するにつれて、AIが環境に与える影響についても注目されています。アメリカ電気電子学会(IEEE)が、生成AI業界全体でどれだけの電力を必要としているかの推定を発表しました。
AI Energy Use: The Hidden Cost of ChatGPT Queries – IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/ai-energy-use
AIシステムを使う際は、世界のどこかにあるデータセンターで高度な計算が実行されており、計算処理のために多大な電力が使われています。Googleが独自に算出した結果によると、Geminiは電力消費量の中央値は1プロンプト当たり0.24Whで、二酸化炭素排出量は0.03g、マシン冷却に使われる水の消費量は0.26mlであることが明らかになりました。これは「テレビを9秒みた際の電力消費量」や「5滴の水」に相当します。
Geminiは1回ごとに「テレビを9秒みるくらいの電力」と「5滴の水」を消費する – GIGAZINE
また、OpenAIのサム・アルトマンCEOが2025年6月のブログ記事で述べた内容によると、ChatGPTの平均的なクエリに必要な電力は約0.34Whで、これはオーブンが1秒強で消費する電力とほぼ同じになるそうです。OpenAIの使用統計からユーザー1人当たりの1日のクエリ数は平均25クエリと算出されているため、1人当たり1日で8.5Whの電力を消費していると言えます。
OpenAIは「ChatGPTは週に7億人のユーザーを抱え、1日あたり25億件のクエリを処理している」と発表しています。平均的なクエリが約0.34Whを消費すると仮定して計算すると、全ユーザーの合計でChatGPTは1日あたり850Mwhを消費していることになります。これは、1万4000台の電気自動車を充電するのに十分な電力に相当します。
さらに、1日あたり25億件のクエリは、年間で約9000億件になり、ChatGPTのユーザーが拡大し続ければ、年間1兆件を超える可能性が高いです。同様の計算式で年間のエネルギー消費量を計算すると、ChatGPTの年間消費は310Gwhとなり、アメリカの約2万9000世帯の年間電力供給量に相当するそうです。
AIがさらに発展すると考えている人は、1日あたりの平均クエリ数が今後5年間で劇的に増加すると予想しています。フランスに本社を置くSchneider Electricの持続可能なエネルギー管理に関する研究チームが示したレポートでは、生成AIの全体のエネルギー消費量は2025年に15TWh、2030年には347TWhまで達すると推定されています。
OpenAIが主導する5000億ドル(約73兆円)規模のAIインフラストラクチャー建設計画「Stargate」でも、全体の規模は5GWhであり、Stargateクラスのデータセンターがいくつも必要になる計算です。
IEEEの推定では、生成AIのエネルギー消費量が347TWhまで達した場合、原子力発電所を44個増やす必要があるとのこと。
Googleによると、直近1年でGeminiのエネルギー消費量は33分の1に削減され、総炭素排出量は44分の1に削減されたそうです。そのため、2030年における生成AIのエネルギー消費量がどのようになるかは不明ですが、AIは今後もさらに拡大していくことが見込まれるため、エネルギー消費量が増加していくことにどう対処するか、より効率的なエネルギー管理と技術革新に向けた課題について、注目すべき問題となっています。
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