2025年8月下旬、虚偽の銃乱射通報などを行って警察官や特殊部隊を派遣させるスワッティングの被害が、アメリカ各地の大学で相次ぎました。一連のスワッティングの背後には、格安で虚偽の脅迫電話を請け負う「Purgatory(煉獄)」というオンライングループがあると報じられています。
Bomb hoax clears Vassar College dormitory in Poughkeepsie
https://www.nydailynews.com/2025/08/29/vassar-college-bomb-threat-hoax/
Online group ‘Purgatory’ behind wave of fake shooter threats at universities: Report
https://www.newsnationnow.com/crime/purgatory-group-active-shooter-hoaxes/
2025年8月21日、アメリカのテネシー大学チャタヌーガ校とビラノバ大学で、銃乱射事件が起きたという通報がありました。両大学では学生たちが新学期の開始を祝うために集まっており、大学や警察が銃乱射事件について警告したことで、学生らはパニックに陥ったとのこと。
以下の動画を見ると、ビラノバ大学の学生らが避難する様子が確認できます。
しかし数時間後、これらの通報はいずれも虚偽のものであったことが判明。それ以来、コロラド大学やテキサス工科大学、ジョージア大学などを含む少なくとも20校で、同様のスワッティング被害が発生したことが確認されています。ヴァッサー大学では銃乱射の通報ではなく、建物に爆弾を仕掛けたという爆破予告の電話があったそうです。
アナリストらは、スワッティングに使用された戦術や技術を分析した結果、一連のスワッティングのほぼすべてが単一のグループによって行われたと結論付けました。報道によると、大学を狙ったスワッティングを実行したのは「Purgatory」という名称で活動するというオンライングループだとのこと。
インターネットセキュリティの強化を目的とした非営利団体・Center for Internet Security(CIS)のジョン・コーエン氏は、「Purgatoryはスワッティングや学校への攻撃、そして全米各地の様々な場所を標的とする、緩やかに連携した個人集団です。CISのアナリストは、これらの活動のほとんどが単一のグループによって実行されていると評価しており、そのグループこそがPurgatoryでした」と述べています。
Purgatoryはインターネットベースの技術や商用サービスを利用して、自分たちの身元や所在地を隠しつつ、背景にリアルな雑音や銃声を流しながら通報を行っているとのこと。また、新たなグループメンバーや仕事を獲得するため、頻繁に通報の様子をライブ配信しているそうです。
コーエン氏は、「図書館への直接的な言及は、これらの通話の大部分に共通していることがわかりました。また、背景で聞こえる銃声の模擬音声も、多くの通話で確認されました。発信者は特定の商用インターネット音声機能を使用していました」と説明しました。
コーエン氏によると、Purgatoryのようなスワッティング代行業者の実行犯は、10代か20代の若者である場合が多いとのこと。これらの若者は、スワッティングが警察の大規模な反応を引き起こすことや、人々が恐怖を感じることを楽しんでいるそうです。しかし、スワッティングが増加することで、本当の銃乱射事件の際に「スワッティングではないか?」という疑念が挟まることも考えられるため、スワッティングは大きな問題だとコーエン氏は警告しています。
また、海外メディアのWIREDはPurgatoryのリーダーを自称する「Gores(ゴアズ)」という人物に取材することに成功しています。
More university swatting calls yesterday, despite the fact WIRED revealed the identity of the group behind these hoax calls earlier this week.
The FBI has declined to comment, and the group told me they saw the whole thing as a “joke.”https://t.co/oprpfkZFSS
— David Gilbert (@daithaigilbert) August 29, 2025
An Online Group Says It’s Behind a Campus Swatting Wave
https://www.nytimes.com/2025/08/30/us/school-shooting-hoax-universities-purgatory-swatting.html
Purgatoryは主に暗号化メッセージングサービスのTelegramで活動しており、かなり安い価格でスワッティングを請け負っています。オンライン上のメニューによると、学校へのスワッティングは95ドル(約1万4000円)、ショッピングモールは120ドル(約1万7600円)、空港は140ドル(約2万600円)、病院は150ドル(約2万2000円)で請け負うとのこと。
Purgatoryは、10代の若者をターゲットにした脅迫やスワッティングなどを行うオンライン集団「764」と関係があるとみられています。
DiscordとTelegramを駆使して10代の若者を性的に恐喝するオンライン集団「764」の存在が暴露される – GIGAZINE
Telegramで取材を受けたゴアズはWIREDに対し、自身と「tor」という名前の別のメンバーが大学へのスワッティングの犯人だと主張。スワッティングの請負事業を始めてから、Purgatoryは10万ドル(約1460万円)を稼いだと語っています。
Purgatory側もまったく無傷というわけではなく、2024年にはPurgatoryのメンバーであるオーウェン・ジャーボー、ブレイデン・グレース、エヴァン・ストラウスの3人がサイバーストーカー行為や脅迫の罪で逮捕されています。このうちジャーボーとグレースの2人はわずか19歳でした。
WIREDがゴアズに対し、FBIによるスワッティング事件の捜査を懸念しているかと尋ねると、「クソ、俺を怖がらせるなよ。いつもの日常さ、わかるだろ?」と返答したとのこと。また、今後も2カ月にわたりスワッティングを続けると宣言したとのことです。
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