
「AI対策のためにAI専用サイトを用意すべき」と主張
博報堂の「メディア環境研究所フォーラム2025」での発表内容が、SEO業界関係者の間で物議を醸しています。特に注目を集めているのは、AI対応に関する以下の発言です。
さらに彼らは、次のように話す:
AI対応を、今のウェブサイトですべてやろうとしないでください。AI専用のドメインを持つべきですChatGPTのような生成AIは整理されていて、すばやく情報が手に入るウェブサイトを好むため、整理されたデータを既存の自社サイトではなく、「AI向けサブドメイン(例:AI.ブランド名.com)」のような独立したドメインに格納することが有効だという。これによりAIからの推奨度が向上する可能性があるのだ。
[AIが台頭するインターネット空間で、企業が生き残るためのWeb戦略【AI as Media 後編】, Web担当者フォーラム、9/11/2025]
メディア環境研究所公式サイトに掲載されている詳細なレポートにも当該の発言が紹介されている。
では、このように整理されたAI向けの情報はどこに置いておくべきなのでしょうか?
Adam Behrens氏 多くのブランドは「サイトにチャットボットを置けばいい」「検索窓をAIに置き換えればいい」と考えているでしょう。しかし、私たちは専用の場所「AIサブドメイン」を作っています。「AI.###.com」のような、いわば、AI専用のウェブサイトのようなものです。
Jonathan Arena氏 私たちは「AIエージェントは、整理されていて素早く手に入るデータを好む」と考えています。そのようなデータとAIエージェント専用のウェブアドレスを持っていれば、より高いランキングを得られるはずです。
まとめると、AIが話し言葉(自然言語検索)で出力しやすいよう、製品の基本情報である「構造化データ」と、より人間的な「非構造化データ」を、AIが扱いやすい形式に整えてパッケージ化する。さらにそのデータを、今ある自社サイトではなく、AI向けのサブドメインに格納する。
そうすることで、AIが「ここに整理された読みやすいデータがある」と認識し、優先的に読みこむような兆候をつかんでいるそうです。
[Jonathan Arena, New Generation, 「AIに向けた情報発信」をどうするか? @メ環研フォーラム2025 レポートvol.3]
「AI対応を、今のウェブサイトですべてやろうとしないでください。AI専用のドメインを持つべきです」
この発言は、登壇したNew Generationの共同CEO、Jonathan Arena氏とAdam Behrens氏によるものです。彼らは、ChatGPTのような生成AIは、整理された情報を好むため、既存のウェブサイトではなく「AI向けサブドメイン(例:AI.ブランド名.com)」のような独立したドメインにデータを格納することが有効であり、AIからの推奨度が向上する可能性があると主張しました。
なぜこの主張は不適切なのか
現在のSEOに明るい方であれば、この主張は評価するに値しないと容易に理解できるでしょう。サブドメインは新規ドメインと同様に扱われるため、サイトの信頼性や権威性(オーソリティ)をゼロから構築する必要があります。これは、時間と労力がかかるプロセスであり、既存のドメインが持つ強みを捨てることになります。「サブドメインだとAIは情報を取得しやすい」という発言に対する具体的な裏付け(エビデンス)が示されていないことも含め、この仮説はSEOの基本的な知見と矛盾しており、考察する価値は低いと言わざるを得ません。
最近では、「AIO」や「LLMO」「AEO」「GEO」といった造語が飛び交い、不適切な情報が広まりやすい状況にあります。このような誤った情報に企業が惑わされ、非効率な手法に手を出してしまう事態を未然に防ぐため、今回の記事を通じて注意を喚起します。
登壇者の専門性から見える背景
この発言は博報堂によるものではなく、取材した外部のAI専門家たちの意見です。オキシジェンテクノロジーズの董浩宇氏、New GenerationのJonathan Arena氏とAdam Behrens氏、BrandlightのImri Marcus氏、そして株式会社GenesisAIの今井翔太氏が主体対象者でした。彼らの取材を紹介したあと、博報堂DYホールディングス 執行役CAIO・森正弥氏とメディア環境研究所所長・山本泰士氏のお二方が対談をしています。
彼らの経歴を見てみると、検索領域・従来検索・SEOに詳しい専門家が誰もいないことがわかります。たとえば、AI検索最適化事業を立ち上げたImri Marcus氏は、過去にGoogleに在籍していましたが、検索事業に直接関連するキャリアは確認できませんでした。同様に、発言者の二人がCEOを務めるNew Generation社もeコマース領域が専門であり、SEOに関する深い知見は持ち合わせていない可能性が高いと考えられます。
このように、SEOの基礎的な知識が不足している専門家による発言であると理解すれば、今回の発言が初歩的な誤解に基づいていることも納得できます。本来であれば、メディア環境研究所はレポート作成時にセッションの発言内容を精査すべきだったと思います。
森正弥:AI向けにデータを整備して専用サイトを作るというのは、かなり重要なアドバイスだなと思いました。これまでは、基本的には人間にとって扱いやすいデータを作ってきました。しかし、AIにとって読みやすいデータ形式は人間向けとは別の形であるわけですよね。
ただ、重要なのは「AIにおもねるのではない」ということです。主体はあくまでも私たち人間にある。その上で、企業ブランドとしての目的を叶えるためにAIとの関係を考え、その後にデータを整備していく、という順番で考えることが大事です。
山本泰士:生活者とAIが強固な関係になる時代「そこにどうやって企業が入り込むか?」という話になりがちですが、必ずしもそうではないんですね。
[森正弥, 博報堂DYホールディングスCAIO, 山本泰士, メディア環境研究所所長
, 「AIに向けた情報発信」をどうするか? @メ環研フォーラム2025 レポートvol.3]
専門家の発言を受けて博報堂DYホールディングスの方がアドバイスとして受け止めているのですが、この記事をお読みいただいている方は騙されないようにしてください。取材段階あるいはセッションの事前準備段階で社内の誰も助言しなかったのでしょうか。検索・AI領域に明るい方がいらっしゃないのですかね。
信頼性が問われるWeb空間の課題
さて、私が言いたいことは辻正浩氏が全部投稿しているので詳細は彼の一連のポストを参照してください。
玉石混交の情報が溢れるインターネット空間では、情報の真偽をどう判断するかが大きな課題となっています。Googleは、特に医療や金融、政治といった分野で、誤った情報が拡散するのを防ぐため、サイトや組織の「信頼性」や「権威性」を非常に重視しています。このような背景を考えると、あえて信頼性の低い新規ドメイン(サブドメイン)にAI専用サイトを構築するという主張には、合理的な理由が見当たりません。
今回の件は、AI技術の進化に伴い、AI検索専門家と称する人々の発言を鵜呑みにせず、情報の信頼性を多角的に検証する重要性を改めて浮き彫りにしています。
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