Valveの新VRヘッドセット「Steam Frame」先行体験:SteamOSがVRとリビングに攻め込む – CNET Japan

 「Steam Deck」とVRヘッドセットが合体して、新しいゲーム用デバイスになったところを想像してほしい――半分は「Meta Quest」、半分は携帯ゲーム機のような存在だ。実際に目の前に「Steam Frame」を装着し、手にコントローラーを握ったとき、まさにそんな“新しい生き物”に触れた感覚があった。

 Steam Frameは、PCゲームプラットフォーム「Steam」を手がけるゲーム大手Valveが開発する新しいVRヘッドセットだ。ただし今回Valve本社で筆者が数時間かけて触った新ハードウェアは、それだけではない。「Steam Machine」というコンソールサイズのPCと、「Steam Controller」という新しいワイヤレスコントローラーも用意されていて、この3つが1つのエコシステムとして一体で機能する。

 この新しいSteamハード3製品は、いずれも2026年初頭に発売予定だが、価格はまだ非公開だ。筆者は少人数の記者グループの一員として、世界で初めてこれらを体験する機会を得た。いくつかの疑問は残ったものの、いくつかの答えも持ち帰ることができた。

 まず大事な点として、どのデバイスも新しいSteam Deckではない。Steam Deckはいまも最高クラスの携帯ゲーム機だが、Valveが2026年に次世代Steam Deckを出すとは思っていないし、取材中に話を聞いた同社の担当者からも、そう期待できそうなコメントは出てこなかった。また、Steam Machineも「Xbox」や「PlayStation」に真正面からぶつけるゲーム機という感じではない。むしろ3つをまとめて眺めると、PCゲームというものをまったく新しい方向に押し広げる試みだと分かる。Valveのハードウェアの歴史を考えると、今回の技術が将来はサードパーティー製品に組み込まれていく可能性も高い。

 3つの中で、筆者をもっともワクワクさせたのは、スタンドアロン型VRヘッドセットのSteam Frameだ。Valveが「Valve Index」を出したのは2019年で、あれから6年たち、ここ最近は新型VR機のうわさも増えていた。だが、AIやARを取り込んだMRヘッドセットやスマートグラスがあふれる2026年に、Valveが再びVRに戻ってくる文脈はかなり違う。Valveは今のところARに興味はなく、AIにもこだわっていないという。Steam Frameは、あくまでゲーム専用のマシンだ。

 それとは別に、筆者は立方体のコンソール風PCであるSteam Machineも触ることができた。テレビに接続してゲームをプレイし、その操作には新しいSteam Controllerを使った。これは単体で発売されるワイヤレスコントローラーで、Steam Deckに近いボタンレイアウトと、新しい低遅延の無線プロトコルを備えている。

 ここからは、特に印象に残ったポイントと、2026年にこれらの製品が発売されたときに何が期待できるのかを、もう少し掘り下げていきたい。

Steam Frame:顔につけるSteam Deck

 外観上、Steam Frameに特にユニークな点はない。しかし、デザイナーのAndrew Yang氏を中心とするValveのエンジニアリングチームが、黒くてスリムなVRヘッドセットとコントローラーを披露し、それがMeta QuestやAppleの「Vision Pro」、サムスンのXRヘッドセット「Galaxy XR」のように、単体で動作するスタンドアロンデバイスだと説明するのは、やはりワクワクする光景だ。

 とはいえ、Steam Frameはそれらとはまったく別物だと感じる。筆者にとっては「顔につけるSteam Deck」という表現が一番しっくりくる。Valveは、このデバイス最大の持ち味は、Armチップ上で「SteamOS」を動かしている点だと強調する。つまり、手持ちのPCからSteamゲームライブラリをmicroSDカード経由で丸ごとコピーし、VRゲームだけでなく通常のPCゲームも外出先で遊べるし、自宅のPCからワイヤレスでストリーミングして遊ぶこともできる。

 「これは、VRをどう捉えるかという観点そのものの根本的な転換だと見ている」とSteam Frameを頭に装着した筆者に向かってYang氏は語る。「Steam Frameを、Steamライブラリ全体を遊ぶための新しい手段だと考えている。VRタイトルだけではなく、非VRタイトルも含めてだ」

 Steam Frameは、SteamOSをArmプロセッサーに載せるValve初の試みでもある。QualcommのXR向けSoC「XR2」シリーズではなく、「Snapdragon 8 Gen 3」のArm64チップと16GBメモリを採用している。この構成は、VRかどうかを問わず、今後ほかのスタンドアロンハードウェアで大量のゲームを動かすための新しい選択肢になるかもしれない。

 ヘッドセット本体は二分構造で、前面にコンピューティング部分とレンズ、クッション付きフェイスパッドがあり、背面には21Whの充電式バッテリーパックがケーブルと柔軟なヘッドストラップでつながっている。Valveはバッテリー駆動時間を具体的には明かさず、パフォーマンスによって異なるとした。Meta Questと初代Steam Deckの中間、だいたい2〜3時間程度ではないかと予想しているが、実際は気になるところだ。度付きレンズインサートにも対応しているが、今回のデモでは筆者の強度のレンズが用意されておらず、自前の眼鏡を押し込んで装着することになった。なんとか入ったが、余裕はほとんどなかった。

 視野角は110度と広く、片目あたり2160×2160ピクセルのLCDディスプレイを搭載している。見た目の印象としてはQuest 3と同等、あるいはそれに近いクオリティという感じだ。パンケーキレンズはクリアで、映像はくっきりしていて濁りがない。リフレッシュレートは最大120Hzに対応し、実験的な144Hzモードも用意されている。前面付近に搭載されたスピーカーからの内蔵オーディオも十分な音量があり、もちろんワイヤレスヘッドホンも使える。Steam Frameにはパススルー用のカメラがあり、赤外線による暗所でのトラッキングも可能だ。モノクロパススルーなのでMR用途というよりは、自分のプレイエリアを簡単に設定し、周囲を確認するためのものだ。

 コントローラーは、ボタンとスティック、デュアルトリガーという見慣れたレイアウトで、Questのものに似ている。ただし、右コントローラーには4ボタン、左コントローラーには十字キーが付いている。タッチパッドを除いたSteam Deckのような印象だ。

 十字キーはVRゲームに理想的とは思えないが、SteamOS上でValveの既存のコントローラーマッピングを利用するゲームにはうってつけだ。SteamOS上で動くゲームは、VRかどうかを問わずこのデバイスで扱える。

Steam FrameのPC接続型VRストリーミング

 ただしFrameはスタンドアロン専用ではない。PCと組み合わせて使うことも前提に作られている。ValveはFrameを、ワイヤレスとスタンドアロンのハイブリッド的なデバイスだと位置づけていて、そのために用意した新しい無線技術がかなり有望に見えた。6GHz帯を使った独自プロトコルと、PC側に接続するドングルを組み合わせており、通常のワイヤレスSteam Linkより高速に配信しつつ、家庭内のWi-Fiに負荷をかけたり、クラウドサービスに頼ったりせずにVRストリーミングができる。

 Frameにはアイトラッキング用カメラも搭載されていて、筆者のように眼鏡をかけた状態でも動作していた。これを視線操作に使っているわけではなく、フォビエイテッドレンダリングとストリーミングのために使っているのがポイントだ。フォビエイテッドレンダリングとは、ユーザーの注視点は高解像度で描画し、周辺視野は解像度を落とすことで、体感的な画質を損なわずに負荷を下げる技術だ。Steam FrameはこれをPCゲームのVRストリーミングにまで拡張しており、Valveはこれを「フォビエイテッドストリーミング」と呼んでいる。無線接続の帯域負荷を減らし、ストリーミング全体の品質を高める狙いだが、その処理はユーザーから見て完全に“見えない”かたちで行われる。PCからストリーミングした「Half-Life: Alyx」をSteam Frameでプレイしているあいだ、視界の端のほうの解像度が落ちていることには全く気づかなかった。

 筆者はSteam Frameのスタンドアロンモードで、まず「Ghost Town」というPC VRゲームを少しだけプレイした。船のデッキを歩き回るようなシーンだ。そのあと「Hades 2」を遊んだが、これは目の前に浮かぶ巨大なスクリーンに映し出される映像を調整しながらプレイする形になる。どちらのゲームもx86版で、スタンドアロンモードで動いていた。

 Yang氏は「PCにあるゲームをそのままFrameに持ってきて遊べる」と強調する。初期のSteamVRタイトルのように、今のQuestでは見つからないクラシック作品も含まれる。ストレージ拡張用のmicroSDカードスロットがあり、本体ストレージは256GBか1TBを選べる。

 もっとも、Steam Deckで「Deck Verified」(動作確認済み)になっているすべてのゲームが、そのままArmチップ上で即座に動くわけではない。Yang氏によれば、Frame向けの動作確認と最適化は時間をかけて進めていく必要があるという。Valveは、ウィッシュリストや購入データなどユーザーの関心を反映したアルゴリズムを使って、どのゲームを優先的にFrame向けに最適化するかを決めているが、その選定プロセス自体はまだ調整中だ。

 興味深いのは、Android XR向けアプリも含めて、AndroidベースのVRゲームもSteam Frame上で動かせる可能性がある、という話だ。「取り込めるものの1つとして扱うことになるだろう」と、Valveのハードウェア/ソフトウェアエンジニアであるJeremy Selan氏は語る。「Android XRのAPIやプログラム群がより充実して、対応コンテンツが増えてくれば、SteamOS自体にそのサポートを追加するのは難しくない」。

 ヘッドセット前面にはカスタムポートも用意されていて、Valveはここに高速カメラなどを接続する拡張の可能性を示唆していた。

 Steam Frameは、将来のSteam Deckに向けた足がかりのようにも感じられる。XRグラスと連携し、テレビ用コンソールやヘッドセットとストリーミングでつながるSteam Deckだ。筆者がこれについて尋ねると、Selan氏は「あなたが描いたそのエコシステムの夢の一部に、今回の製品群がそのまま組み込まれる可能性も十分にある」と答えた。

Steam MachineとSteam Controller:テレビで遊ぶPCゲーム

 Valve本社では、VR以外の2つのデバイスも体験した。Steam Machineはゲーム機と同程度のサイズの黒いキューブで、テレビの前にそのまま置いておけるような見た目だ。Steam Frameへのワイヤレス配信用PCとしても使えるし、単純にXboxやPlayStationの代わりにテレビで遊ぶゲームPCとしても使える。筆者はソファに座り、見慣れたゲームのいくつかを試すことになったが、その際に手渡されたのが新しいSteam Controllerだった。

 Steam Machineという発想自体は、実は10年前にも一度出てきたものだ。2015年にAlienwareが発売した「Alienware Steam Machine」は、コンソールサイズ(かつコンソール並みの価格)のPCゲーム機エコシステムを作ろうという試みだった。しかし、当時のコントローラーはスティックの代わりにタッチパッドを配置した独特のデザインで、歓迎されなかった。

 2026年に登場する新しいSteam Machineは、Steam Deckによって得た自信――ゲーム互換性とコントローラーデザイン両面の自信――をまとって戻ってきた形だ。Valveによると、Steam Machineのグラフィックス性能は3年半前に出たSteam Deckの6倍に達するという。ただし、あまり詳しいスペックまでは教えてもらえなかった。分かっているのは、セミカスタムのAMD製Zen 4 CPUとAMD RDNA3世代のGPU(28CU)を搭載していて、4K/60fpsのゲームプレイとレイトレーシングに対応するという点だ。

 一方の新しいSteam Controllerは、Steam Deckに合わせたフルセットの操作系を備えている。アナログスティック、十字キー、各種ボタンのほか、デュアルタッチパッドとデュアルトリガーも搭載する。スティックや背面グリップボタンには静電容量式センサーが仕込まれていて、軽く触れるだけでジャイロ操作を有効にできる。実際に握ってみると手になじみがよく、ボタンも親指の届きやすい位置にうまく配置されていると感じた(ただし、斜めに配置されたタッチパッドは少し慣れが必要だった)。

 Steam MachineはSteam Controller同梱版と非同梱版の両方が販売される予定だ。中身はあくまでSteamベースのPCなので、好きなコントローラーをつないで遊べるが、Steam Controllerならではの機能はやはり魅力的だ。

 Steam Machine向けに用意されたコントローラーの新たな無線プロトコルも興味深い。標準的なBluetoothを使わず、2.4GHz帯の独自無線で接続することで、さらなる低遅延を実現している。アナログスティックはホール効果式の磁気センサーを採用し、Steam Deckよりデッドゾーンを狭くできるため、より繊細なスティック操作や親指のフリック操作が可能になる。振動ハプティクスも強化されている。Steam Controllerは、付属のワイヤレスドングル付きケーブルを使って、ほかのPCでも利用できる。このケーブルはマグネット式充電ドックも兼ねていて、置くだけで充電できるのが賢いところだ。

 今回Steam Machineで実際に試せたゲームは多くなかったが、初期のパフォーマンスの印象はタイトルによってまちまちだった。あまり重くない「Balatro」や「ホロウナイト: シルクソング」は、予想どおり問題なく快適に動いていた。「Cyberpunk 2077」も短時間のプレイではあったが、見た目はかなり良好に感じた。一方で、「サイレントヒル」では描画のカクつきが目立つ場面もあり、Valveのチームは今後のゲームアップデートで解消されるはずだと説明していた。「ソニックレーシング クロスワールド」もグラフィックスまわりのパフォーマンスに課題がある印象だった。

 Valveが振り返るように、初期のSteam Deck登場時には、Steamライブラリの中で最適化されているゲームはごく一部だったが、時間とともに対応タイトルは大きく増えていった。Steam Machineの発売は2026年なので、その頃には状況がどう変わっているのか気になるところだ。最終的には、価格と実際のパフォーマンスのバランス次第で、Steam Machineが成功と見なされるのか、それとも期待外れと受け止められるのかが決まってくるだろう。

 デザイン面は素直に気に入っている。コンパクトな筐体は、前面のフェイスプレートがマグネットで着脱できる仕組みになっていて、カスタマイズも可能だ。筐体の底部にはLEDバーがあり、ダウンロード時に進捗をアニメーション表示するなど、ちょっとした演出も効いている。

 コントローラーについても、Steam DeckとSteam Frameの両方で使えるクロス互換性がうれしい。Steam Deckをドックにつないでテレビに映す場合でも、このコントローラーを使うだけでリビングでのプレイ感が大きく変わり、「Nintendo Switch」にかなり近い感覚で遊べるようになる。Steam Machineやドック接続したSteam Deckの電源をリモコン的に入れることも可能だ。

これが次世代ゲームエコシステムの兆しなのか

 これら3つのデモを一通り体験しながら、筆者はどうしても「これはゲーム全体にとって何を意味するのか」ということを考えずにはいられなかった。Valveは、PC、周辺機器、ヘッドセットがすべてつながった未来像を見せているのか。それともPCそのものを分解し、SteamOSをハンドヘルド、コンソール、ヘッドセットなど、あらゆるフォームファクターに拡張しようとしているのか。おそらく答えは“両方”であり、特定の一製品というより、相互接続性を軸にした哲学に近いのかもしれない。

 そして何より重要な疑問は、2026年初頭にこれらが市場に出るとき、一体いくらになるのかという点だ。Valveのチームは、まだ価格の検討を続けているとだけ話し、具体的な価格帯のヒントはくれなかった。

 ゲーム機の世界は今、すでにかなり不思議な過渡期にある。Microsoftは「Xboxをどこでも」という方針を打ち出し、PlayStationはストリーミング対応携帯機やVRヘッドセットなど、さまざまな試みを重ねている。Nintendoの「Switch 2」もモジュール的な構成になっている。Valveは2026年に向けて、こうした“マルチデバイス化”の流れをSteamにも一気に持ち込み、Steam Deck以外のあらゆる方向から攻め込もうとしているように見える。

 ValveはSteam MachineとSteam Frameの技術を、自社製品だけでなくサードパーティー製品にも広げていく計画のようだ。すでにSteamOSは複数のWindows系携帯デバイスで動いているし、VR向けのSteam LinkもQuestや「PlayStation VR」で利用できる。Steam Machine、Steam Frame、Steam Controllerという3つのピースを組み合わせることで、ValveはSteamゲームのためのSteam Deck的な新しいプレイ環境を形にしようとしているのかもしれない。

 筆者はPCゲーマーというほどではないが、Steam Deckに夢中になった。Steam Frameには、VR版Steam Deckになりうる同じポテンシャルが感じられる。ただし、そのエコシステムの中心に据えるべき次世代Steam Deckがまだ存在しない、という大きな空白も同時に見えてしまう。

 Valveも新しいSteam Deckへの期待が高まっていることは認めているが、本当に世代が変わったと言えるレベルのハードウェアになるまで次世代機を出したくないという。

 そのあいだ、筆者としてはSteam Machineが本当に自分にとって使えるPCコンソールになりうるのかを見届けたい。そしてそれ以上に、Steam FrameがMeta Questに対する初の本格的ライバルになりうるのかどうかが気になっている。その答えは、結局のところ2026年になってみないと分からないのだが。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。

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