生成AI時代の創作と権利のあり方に関する共同声明 | 漫画家協会WEB

生成AI時代の創作と権利のあり方に関する共同声明

2025年10月31日

1.経緯と現状認識
2025年10月、OpenAI社から映像生成AI「Sora2」がローンチされ、同AIを用いて生成された画像・映像がSNS等で公開・送信されました。これらの画像・映像の中には、著名な創作物や表現への依拠性・類似性が強く疑われるものが散見されました。
OpenAI 社は「Sora2」において、権利者から明示的なオプトアウト申請がない限り著作物が生成・公開・公衆送信されるシステムを採用しました。このことは、我が国の著作権法の原則のみならず、世界 194 ヵ国が加盟する WIPO(世界知的所有権機関)の著作権条約の原則にも反すると私たちは認識しています。
「Sora2」については OpenAI 社の経営者個人が SNS 上でオプトインへの転換を示唆したものの、これが企業としての正式な方針なのかどうかは現時点で確認されていません。さらには「第二、第三の Sora2」とも言うべき新たな生成 AI が登場することも容易に予見されます。
以上をふまえ、私たちはコンテンツ産業の一員として原則的立場を改めて表明する必要があると判断し、本声明を公表することとしました。

2.基本的な考え
私たちは生成 AI 技術の進展を歓迎し、その可能性を正しく活かすことで、より多くの人々が創作の喜びを分かち合える社会が望ましいと考えています。一方で、著作権侵害を容認しないという原則を改めて確認します。文化的創造の持続可能性と技術革新の恩恵を両立させるためには、生成AI によって人の創作物が学習され、新たに生成物が創出される際、以下の原則が遵守・実行されるべきだと考えます。
① 学習段階および生成・公表段階の両方において、著作権法の原則に沿って権利者に必要な許諾を得る等の対応を AI 事業者が取る
② 学習データの透明性が担保されている
③ 権利者が利用を許諾した場合、権利者への適正な対価還元が行われる
加えて、生成 AI の利用者が他者の著作物をもとにしたことを知らずに生成物を作成・公開し、結果として他のクリエイターの権利を損なう状況を防ぐことも、私たちは必要と考えます。このためには、権利者と AI 事業者、関係省庁をはじめとしたステークホルダー間の連携・協力が不可欠です。

3.現時点での懸念
• 権利者によるオプトアウトが原則では権利侵害につながる
権利者の明示的な使用許諾なく、生成 AI がアニメや漫画等の著作物を学習し、特定の作品を再現した映像等の生成・公開が可能なシステムを提供することは、著作権法の「権利者の許諾を得てから利用する」という原則に反する行為です。この原則に基づき、権利者が AI 事業者へオプトアウトを申請するのではなく、AI 事業者が権利者に対してオプトインを申請し使用許諾を得ることの徹底が、いま一度求められます。
• データの学習段階における透明性担保が不十分である
生成 AI が学習するデータにおいて、どの著作物や表現をもとに生成されたかが不明なままでは、権利侵害の検証が困難であり、創作への信頼の基盤が損なわれます。また、作品のイメージや創作者の評価を毀損する悪質な行為に適切に対応するためにも、生成 AI が学習するデータの透明性担保は不可欠です。

4.権利侵害への対応
私たちは、生成AIを活用しているか否かを問わず、著作権侵害に対して法的・倫理的観点から適切に行動します。この姿勢は、生成 AI をはじめとした新しい技術を拒絶するものではなく、創作に携わるすべての人の努力と尊厳を守るための責任であると考えています。同時に、現在まで続くインターネット文化がそうであったように、利用者の創意や遊び心を尊重しながら、クリエイターとユーザーの双方が安心して創作・利用できる環境を整えることを重視します。

5.今後に向けて
これからも私たちはコンテンツ産業の一員としてクリエイターに寄り添いながら、著作物や創作物の「利用と保護」の両立を模索します。このために業界内外のステークホルダーと協調・協力し、AI 時代における公正で透明、かつ持続可能な創作環境の構築・維持に努めます。

【共同発出者】(五十音順)
一般社団法人 日本動画協会※1
株式会社秋田書店
株式会社一迅社
株式会社宙出版
株式会社 KADOKAWA
株式会社コアミックス
株式会社講談社
株式会社小学館
株式会社少年画報社
株式会社新潮社
株式会社スクウェア・エニックス
株式会社竹書房
株式会社 TO ブックス
株式会社日本文芸社
株式会社白泉社
株式会社双葉社
株式会社芳文社
株式会社リイド社
公益社団法人 日本漫画家協会※2
※1 我が国のアニメーション製作業界の意思を統合し、関連する諸企業・団体との連携を保ち、アニメーション産業全体の持続的発展を目指している。正会員 43 社・準会員 58 社。理事長・石川和子(日本アニメーション株式会社 代表取締役社長)
※2 健全なる漫画の普及に関する事業を行うと共に、漫画創作活動を奨励し併せて諸外国との漫画文化の交流を図り、漫画に関する調査研究を行い、もって我が国文化の発展に寄与することをもって目的とする。会員総数:4,013 名(うち賛助会員 51 法人、名誉会員 4 名) 、正会員 3,958 名(2025 年 9 月 30 日現在) 。理事長・里中満智子




元の記事を確認する

関連記事