肥満は必ずしも当人の意識や生活習慣だけの問題ではなく、さまざまな要因が絡み合ったものだということがわかっています。新たな研究では、肥満と「地元のレストランのメニュー」が関係していることが示されました。
Data-driven nutritional assessment of urban food landscapes: insights from Boston, London, and Dubai | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-025-08098-9
Study shows a link between obesity and what’s on local restaurant menus | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2025/study-shows-link-between-obesity-and-local-restaurant-menus-0711
健康の専門家らは長らく、食料品店や外食の選択肢が少なくて安価で栄養価の高い食品にアクセスしにくい食の砂漠(フードデザート)と呼ばれる地域が、肥満を増やす原因のひとつになっていると考えてきました。
マサチューセッツ工科大学やオランダのワーゲニンゲン大学の研究チームは、食の環境と肥満との関連性を調べるため、アラブ首長国連邦のドバイ、アメリカ東部のボストン、イギリスのロンドンの3都市を対象にした分析を行いました。
研究では、2023年夏の時点でフードデリバリープラットフォームに掲載されていた3都市のレストランからメニューを抽出。各メニューをアメリカ農務省の食品情報バンクであるFoodData Centralデータベースと照合しました。
対象となったレストランとメニュー数は、ボストンが2000軒以上の約22万2000品目、ドバイが約9000軒の約160万品目、ロンドンが約1万8000軒の約310万品目でした。機械学習を用いてこれらのメニューをFoodData Centralデータベースと照合し、メニューごとの栄養素を分析しました。
さらに、各都市を地域ごとに区分けして、それぞれの地域にあるレストランがどれほど栄養価の高いメニューを提供しているのかを評価。地域ごとの肥満率や住宅価格といった項目との関連性を調べました。
研究の結果、ロンドンでは地元のレストランが提供するメニューの栄養素と肥満率に明確な相関関係がみられました。以下の図は、ロンドンの地域ごとの「a:成人の肥満率」「b:メニューの栄養素バランス(meal balance index)」「c:メニューの栄養価スコア」「d:メニューの食物繊維の量」「e:メニューのカリウムの量」「f:住宅価格」を色で表したもの。色が濃いほど肥満率や栄養価スコアが高いことを示しており、地元レストランで食べられるメニューの栄養価が高いほど、肥満の人が少ないことがわかります。
一方、ボストンではやや相関関係が弱まりましたが、依然として地元のレストランのメニューに食物繊維が豊富で、その他の栄養豊富なメニューの選択肢が多い地域では肥満率が低い傾向がみられました。
ドバイでは肥満率のデータが得られなかったため、以下の図は「a:メニューの栄養素バランス」「b:メニューの栄養価スコア」「c:メニューの食物繊維の量」「d:メニューのカリウムの量」「e:住宅価格」を示したものとなっています。分析の結果、住宅価格と地元レストランのメニューの栄養価に強い相関関係がみられ、裕福な住民ほど栄養素の選択肢が豊富であることが示唆されています。
論文の筆頭著者であり、ワーゲニンゲン大学の博士課程学生であるマイケル・トゥファノ氏は、「食品レベルで見ると、栄養価の高い食品が少ないほど肥満が増えます。貧困地域ではファストフードが多いだけでなく、栄養価も異なるというのが事実です」と述べました。
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