生成AIが自然な文章を手軽に作成できるようになったことで、職探しをする人がAIで履歴書を書く時代が到来しつつあります。企業にはAIが作成した履歴書が山のように送られてきており、あまりに膨大な量の履歴書を企業は処理しきれず、AIでさばいているそうです。
Employers Are Buried in A.I.-Generated Résumés – The New York Times
https://www.nytimes.com/2025/06/21/business/dealbook/ai-job-applications.html
The résumé is dying, and AI is holding the smoking gun – Ars Technica
https://arstechnica.com/ai/2025/06/the-resume-is-dying-and-ai-is-holding-the-smoking-gun/
ニューヨーク・タイムズによると、ビジネス系SNSのLinkedInで提出される履歴書は2025年時点で1分間当たり1万1000件に上っており、この数は2024年からの1年間で45%も増加したとのこと。
これらの履歴書の一部にはAIが寄与しています。2022年から「ChatGPT」をはじめとするAIチャットボットが登場して以来、求職者向けのAIツールが発達しており、職探しから履歴書の作成、面接の予定決めなど求職にかかわるいくつもの作業をAIで代行できるようになっています。
これにより求職者はいくつもの企業へ簡単に応募できるようになりましたが、企業側は多すぎる求職者に辟易しているそうです。
ニューヨーク・タイムズの取材を受けたコンサルタントの1人は、単一のリモートワーク職の募集に1200件を超える応募が殺到し、募集を完全に停止せざるを得ず、それから3カ月たってもまだ候補者の整理を続けなければならなかったと話しました。
不満は、AI企業自身が採用プロセスでAIから距離を置くほど深刻化しています。例えばAI企業のAnthropicは、求職者に対して応募時にAIを使用しないよう忠告しています。
チャットAI「Claude」を開発するAI企業のAnthropicが履歴書作成にAIを使わないよう要請 – GIGAZINE
また、企業がAIを使って求職者をさばくという逆の事例も起きています。例えば、LinkedInは採用担当者向けのAIツール「Hiring Assistant」をリリースし、求職者の選別や面接のスケジュール決め、求職者へのフォローアップなどを自動で実行できるようにしています。
LinkedInが求人担当AIエージェント「Hiring Assistant」をリリース – GIGAZINE
しかしながら、AIを使って楽をしようとした結果、批判を浴びるという事例もあります。以下の記事では、面接官を担当したAIが不具合を起こす動画を確認できます。
AIが就職の面接をして不具合を起こす動画が話題に – GIGAZINE
面接官だけでなく、求職者さえもこの世に存在しないケースがあります。特にフルリモート勤務になる職種では、人と会うことがないという特性をいいことに、産業スパイがディープフェイクなどで自分の顔を合成して面接に挑むこともあるそうです。
AIの普及により就職活動と採用活動の両方で不信感が広まる、ディープフェイクで作成された「存在しない人物」を採用しそうになった企業も – GIGAZINE
このようなディープフェイクに対する防御策も生まれています。Personaという企業が作成したディープフェイク検知ツールは、入力された内容、デバイスの特性、ネットワーク信号などを根拠にAIを割り出すというもので、AIによる顔認証のなりすましを2024年だけで7500万件以上ブロックすることに成功しています。
テクノロジー系メディアのArs Technicaは「誰でも数回のプロンプトで自分に合った履歴書を生成できる時代において、かつては努力や興味関心を示す文書だったものが、単なるノイズに成り下がってしまいました。もはや履歴書は無意味なものになってしまったのかもしれません。未来の雇用は、履歴書を完全に放棄し、対面でのセッションや使用期間などを用いた、AIが容易に再現できない方法を採用するものになるのではないでしょうか。究極的には、AIが他のAIを面接し、AIが仕事をして、我々人間はビーチでくつろぐようになるのかもしれません」と述べました。
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