2025年6月22日、アメリカ軍がイランの核施設を攻撃したことへの報復として、イランがイスラエルに対してミサイル攻撃を実施しました。この攻撃に使用されたのは、「Fattah-2」と呼ばれる極超音速ミサイルで、このミサイルがなぜイスラエルの防空システムを突破できてしまうのかを、チャンネル登録者数150万人超のYouTubeチャンネルであるAiTellyが解説しています。
イランはいかにしてイスラエルの防空網を突破するのか?ファッター極超音速ミサイル #イラン #イスラエル – YouTube

イランは極超音速ミサイルの「Fattah-2」を利用して、イスラエルの防空システムであるアイアンドーム・ダビデスリング・アロー3を突破したと報じられています。
Fattah-2はアイアンドームのような防空システムが脅威を検知・追跡・迎撃する前に標的に到達することができるため、迎撃が極めて困難です。
Fattah-2は固体燃料ブースターを搭載した状態で発射されます。
Fattah-2が高高度まで上昇すると、その速度はマッハ15(時速約1万8500km)を超える模様。その後、大気圏に到達するとFattah-2は固体燃料ブースターを分離し、極超音速滑空体となります。
弾頭を搭載した極超音速滑空体は独立した状態で大気圏に再突入。
極超音速滑空体は空気力学をベースに設計されており、エンジンとしては小型液体燃料エンジンを搭載しています。予測不能な操縦を行いながら、通常は地上から12~30km上空を飛行。
標的に近づくと、マッハ5(時速約6200km)を超える速度で急激な回避行動をとります。
この速度・機敏性・飛行経路の変更の組み合わせにより、防空システムによる追跡・迎撃が非常に困難になるわけです。
従来のミサイルは予測可能な放物線状の軌道を描きます。
一方で、Fattah-2の軌道は複雑です。
これはFattah-2が空気力学的な制御面と水素燃料で動く可動ノズルを保有しているためです。可動ノズルを動かすことで大気圏再突入後の滑空経路を調整するというわけ。
継続的かつ予測不可能な軌道の変化により、ミサイルの追跡は極めて困難になります。
防空システムに搭載されている従来のレーダーシステムは、安定した軌道のミサイルを処理するよう設計されているため、不規則な軌道には対応しきれません。
Fattah-2の推進システムの中核となるのは大気圏に再突入する際に、正確な操縦と制御された加速を実現する可動ノズルを備えた球形の固体燃料エンジンです。なお、イラン当局はFattah-2にレーダー探知を回避する機能も搭載されていると主張しており、ステルス性や低視認性技術を活用している可能性もあります。
また、イランはFattah-2がすでにイスラエルの防空網を突破して軍事施設やイスラエルの防空本部を含む標的を攻撃していると主張しています。
なお、Fattah-2の前モデルであるFattah-1は、中間コース調整および独立飛行が可能な機動性再突入体を備えた2段式固体燃料ミサイルでした。弾頭には推力ベクトル制御機能が備わっており、これにより飛行の中間段階および最終段階の両方で軌道変更が可能でした。
イスラエルの大きな欠点のひとつは、国土が小さいことです。国土面積でみると、イスラエルはイランのおよそ75分の1です。
イスラエルは国土が狭く、イランから発射されたミサイルは事実上、数分以内に標的に到達します。そのためミサイルの検知・追跡・迎撃に利用できる時間は非常に限られています。この点もミサイルへの対処を困難にする原因のひとつです。
地理的にみると、イスラエルの国土は南北約470kmの長さとなっています。しかし、最も狭い部分ではわずか15kmの幅しかなく、最も幅が広い場所でもわずか135kmしかありません。
一方で、イランは広い国土のあらゆる場所にミサイルの備蓄を隠すことが可能。そのためイスラエルがイランのミサイル保管場所をすべて破壊することが困難になっています。
続いて、イスラエルの防空システム目線で、Fattah-2の攻撃を分析。
アイアンドームの射程距離は約40マイル(約64km)です。
一方、ダビデスリングの射程は180マイル、アロー3の射程は1500マイル(約2400km)と非常に広大です。
イランからイスラエルへのミサイル攻撃を分析した結果、イランはイスラエルの防空システムを圧倒するためにドローンや巡航ミサイルを混ぜた約100発のミサイルを発射したあとにFattah-2を発射していることが明らかになっています。
イスラエルの防空システムはイランからのミサイル攻撃の多くを迎撃したものの、迎撃をかいくぐったミサイルも多くあります。その主な原因は、滑空体が発射装置から外れた後に軌道を複数回変更できるためです。
イスラエル国防軍がイランからの発射体の90%を迎撃したと仮定すると、防空システムをかいくぐった発射体はわずか10発ということになります。それでもイスラエルの被害は壊滅的なものとなる可能性があります。
過去のテルアビブへの攻撃でみられたように、ミサイルの弾頭ひとつで街区全体が破壊される可能性もあるためです。
Fattah-2の射程は約1500kmで、Fattah-1と比べるとわずかに長くなっただけ。しかし、Fattah-2には大気圏外で加速する能力があり、空力制御によりイスラエルの防空システムを回避するための細かな軌道制御も可能です。
Fattah-2以外の極超音速ミサイルの場合、例えばアメリカのスクラムジェットミサイルはマッハ5以上の速度でわずか18分で中国を攻撃することが可能。スクラムジェットミサイルは移動しながら大気中から酸素を集め、それを水素燃料と混合して燃料を生成します。
一方、中国の東風17のような滑空極超音速ミサイルは、弾頭と核弾頭を統合して生産されており、飛行中の軌道変更も可能。
なお、極超音速ミサイルとはマッハ5以上の速度で飛行するミサイルを指します。スペースシャトルは極超音速で飛行する乗り物の一例で、マッハ20~24の速度にも達します。ただし、スペースシャトルがこの速度で飛行できるのは非常に短い距離のみだそうです。
「イランは長年にわたって分散性と残存性を重視したミサイルを開発してきました。イランのミサイル発射装置は移動式であったり、隠されていたり、施設に保管されていたりすることが多く、イスラエルの攻撃によってすべてを無力化することは極めて困難です。また、これらのミサイル発射装置は激しい爆撃を受けた後でも動作を継続できるだけの冗長性も有しています」とAiTellyは指摘しました。さらに、イランには依然として300~1300発のミサイルを保有しているとみられているため、イスラエルの安全保障に対する脅威となり続ける可能性があるとAiTellyは指摘しています。
なお、実際にイランの超低音速ミサイル・Fattah-2がイスラエルを攻撃するのに使用される様子は、以下の映像で確認できます。
イランが「オネスト・プロミス2作戦」でイスラエルを攻撃するために「ファッターフ2」極超音速ミサイルを使用した理由が明らかに – YouTube

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