AnthropicのClaudeがバクテリオファージからCRISPRに似た未知の酵素システムを発見、ダリオ・アモデイCEOはAIで「5〜10年以内に多くの病気を治せる」と予測 – GIGAZINE


AI企業のAnthropicが、同社のAI「Claude」がバクテリオファージのDNAを解析し、ゲノム編集技術のCRISPRに似た反復配列を伴う未知の酵素システムを発見したと発表しました。「array-associated reverse transcriptases」、略して「ART」と名付けられたこのシステムの具体的な機能はまだ分かっていませんが、Claudeが大量のDNA配列を自律的に調べ、研究対象となる新たな生物学的システムを見つけ出した事例となっています。

Autonomous AI agents discover reverse transcriptases with tandem repeat arrays
(PDFファイル)https://www-cdn.anthropic.com/22573675ada52a8ca8a97a1a4b4326b2f208a071.pdf

Claude discovers a novel enzyme system \ Anthropic
https://www.anthropic.com/news/claude-discovers-novel-enzyme-system

Anthropicは2026年春、Claudeを利用して基礎生物学の研究を進める研究チームと分子生物学研究所を設立しました。研究では、Claudeに大量のDNA配列や関連文献を調べさせ、まだ詳しく調べられていないタンパク質や生物学的システムを探し、実験する価値のある候補を絞り込んでいます。


今回Claudeに与えられたのは、巨大なDNA配列データベースから興味深い逆転写酵素(RT)を探すという課題でした。逆転写酵素はRNAを鋳型としてDNAを作る酵素で、レトロウイルスだけでなく、細菌などにもさまざまな種類が存在することが分かっています。Anthropicによると、Claudeは20万種類以上の逆転写酵素を集め、約3500種類の新しい候補システムを選び、その中から特に有望な20種類を詳しく解析したとのこと。

この作業には約950のClaudeエージェントが並列で使われ、21時間にわたって合計2億1000万トークンを処理しました。その途中で1つのエージェントが、ある逆転写酵素遺伝子の隣にDNA配列が規則的に何度も繰り返される領域が存在することに気付いたとのこと。Claudeは反復回数や間隔を調べ、既知の逆転写酵素システムと比較し、過去の研究で同じ構造が報告されていないかを確認した上で、新しい生物学的システムの候補として人間の研究者に報告しました。研究チームはClaudeが発見したシステムを「ART」と名付けています。


ARTは主に細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージから発見されました。その基本構造は、逆転写酵素を作る遺伝子、その隣にある機能不明の別の遺伝子、そして一定間隔で並ぶ長いDNA反復配列の3つで構成されています。逆転写酵素自体は過去の研究ですでに見つかっていましたが、Anthropicによると、この反復配列や隣接するタンパク質を含めて1つのシステムとして認識したのは今回が初めてだとのこと。

研究チームは、この反復配列の並び方がCRISPRに似ていると指摘しています。CRISPR-Casでは、細菌などのDNAにある反復配列とその間の配列からRNAが作られ、このRNAを目印としてCasタンパク質が特定のDNAを認識し、この仕組みを応用することで狙ったDNA配列を操作するゲノム編集技術が開発されました。


Anthropicが行った最初の実験では、ARTの反復配列から複数の短いRNAが作られていることが確認されました。これはCRISPRとの類似点の1つですが、このRNAや逆転写酵素が実際に何をしているのかはまだ分かっていません。Anthropicは、ARTが持つ特徴の組み合わせはこれまで少数のシステムでしか確認されておらず、それらの既知のシステムにはDNAを切断、複製、挿入するといった機能を持つものがあるとしています。ただし、ARTの反復配列がCRISPRに似ているからといって、ARTが同じようにDNAを編集するシステムだと判明したわけではありません。

Anthropicのダリオ・アモデイCEOは今回の成果について、「新しい遺伝子編集メカニズムとなる可能性がある分子システムをClaude主導で発見した」と投稿しています。一方でアモデイ氏自身も、その正確な機能やバイオテクノロジーへの有用性、発見としての重要性は「まだ明らかではない」としています。さらにアモデイ氏は、AIによる科学研究の加速について、今後5~10年で現在治療できない病気の多くを治療できるようになる可能性があるという見通しを示しています。


CRISPRの研究者であるルーカス・ハリントン氏は今回の発表について、「単純化すれば既知の遺伝子と新しい遺伝子の隣に、奇妙なDNA反復配列が存在することに気付いた研究だ」と説明しています。つまり、現段階で示された重要な成果は未知のシステムの候補を発見したことであり、その生物学的役割を解明したことではないと釘を刺しています。


今回の研究では、Claudeが人間から最初の課題を与えられた後、大量のDNA配列の探索、候補の比較、文献調査、候補システムの選定までを進め、最終的に人間の研究者が実験によって候補を検証しました。Anthropicは今後もARTの機能を調べる実験を続けると同時に、AIと人間の研究者を組み合わせる方法を基礎生物学における新たな研究手法として検証していく方針を示しています。

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