直径5mm未満の微細なプラスチック粒子であるマイクロプラスチックが、母胎と胎盤循環系を隔てる胎盤関門を通過して、胎盤におけるホルモン産生を変化させる可能性があるとの研究結果が報告されました。
Effects of different micro- and nanoplastic polymers on steroidogenesis in a feto-placental in vitro model – ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0303720726001486
AURORA research finds micro- and nanoplastics can cross placental barrier and alter hormone production – AURORA
https://auroraresearch.eu/aurora-research-finds-micro-and-nanoplastics-can-cross-placental-barrier-and-alter-hormone-production/
New Evidence That Microplastics Can Cross Placental Barrier And Alter Hormone Production : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/new-evidence-that-microplastics-can-cross-placental-barrier-and-alter-hormone-production
マイクロプラスチックはさまざまなプラスチック製品や歯磨き粉、洗顔料などから発生するプラスチック粒子であり、海や土壌など環境中のさまざまな場所から発見されています。また、マイクロプラスチックは人間の体内に取り込まれることもわかっており、脳・肺・血液・精巣などさまざまな部位から検出されています。
いくつかの研究ではマイクロプラスチックが腸で炎症を引き起こす可能性や、パーキンソン病の原因になっている可能性が指摘されており、健康被害も懸念されています。2020年の研究では母胎と胎児をつなぐ胎盤からもマイクロプラスチックが検出されており、発達中の胎児に与える影響が問題視されています。
体内のマイクロプラスチックがおなかの中の胎児に達する可能性が浮上 – GIGAZINE
マイクロプラスチックが人間の胎児の発育を阻害するのかどうかは不明ですが、マウスを用いた実験では妊娠中に母マウスが吸い込んだマイクロプラスチックが、生後2週間にわたり子どもの臓器に存在し続ける可能性が示されました。また、マウスを用いた別の研究では妊娠中にマイクロプラスチックやより微細なナノプラスチックにさらされると、胎児の脳の発達を阻害する可能性があると示唆されています。
しかし、マウスと人間にはさまざまな解剖学的違いがあるため、マウスの実験結果がそのまま人間に適用できるわけではありません。そこで、オランダのアムステルダム自由大学の研究チームは新たな研究で、マイクロプラスチックが人間の胎盤にどのような影響を与えるのかを調査しました。
まず研究チームは、数日間にわたる操作で生きたヒト細胞を3層に重ね、人間の胎盤関門を模倣したモデルを作成しました。モデルの最上層は胎盤の繊毛を覆う上皮組織を模倣したBeWo b30細胞、第2層は人間の胎盤と胎児を結ぶ臍帯(さいたい)静脈から分離したヒト臍帯静脈内皮(HUVEC)細胞、第3層は胎盤の主要なホルモン産生器官である胎児副腎を模倣したH295R細胞で構成されています。
研究チームはモデルの最上層にさまざまな種類のマイクロプラスチックやナノプラスチックを添加し、胎盤関門を通過するのかどうかやホルモン産生に及ぼす影響について調べました。その結果、プラスチックの添加から72時間後には、ほとんどすべてのプラスチック粒子は胎盤関門を模倣したモデルを通過し、反対側から検出可能になることが判明しました。
以下のグラフは、縦軸が第3層に到達したプラスチックの割合を、横軸がプラスチックの種類を示したもの。PSはポリスチレン、PMMAはポリメタクリル酸メチル樹脂(アクリル樹脂)、PVCがポリ塩化ビニル、PETがポリエチレンテレフタラートであり、ポリスチレンは粒子径ごとに50nm・200nm・1000nmに分けられています。蛍光顕微鏡観察では、第3層を除く細胞層全体にこれらのプラスチック粒子が存在していたとのことです。

また、胎盤関門模倣モデルではプラスチック添加前に19種類のステロイドホルモンが検出されており、主要なステロイド生成経路が活性化していることが確認されていました。複数のプラスチックの添加後、テストステロンの代謝物であるエチオコラノロンが減少したほか、ポリスチレンは女性ホルモンであるエストロゲンの濃度に影響を与えたことが示されました。
論文の筆頭著者であり、アムステルダム自由大学の元研究員であるイェスケ・ファン・ボクセル博士は、「私たちの研究は、数種類のマイクロプラスチックおよびナノプラスチックがヒト胎盤モデルを通過し、ホルモン産生に影響を与えることを示しています。これは必ずしも妊娠中に害を及ぼすことを意味するものではありませんが、これらの粒子が胎児の発育にどのように影響するかをより深く理解する必要性の高まりを示しています」と述べました。
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