
Natureは、Microsoftが2025年に発表した量子コンピューター技術に疑問を示す査読済みの論評を掲載しました。論評を執筆したセント・アンドルーズ大学のヘンリー・レッグ氏は、Microsoftのデータ解析とソフトウェアに問題があると主張しています。
On the robustness of topological gap detection via transport | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-026-10567-8
Boffin claims Microsoft’s supposed quantum leap does not compute due to ‘basic Python errors’
https://www.theregister.com/research/2026/06/24/boffin-claims-microsofts-supposed-quantum-leap-does-not-compute-due-to-basic-python-errors/5260489
Top quantum computer expert claims Microsoft’s ‘topological qubit’ doesn’t hold up | Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/top-quantum-computer-expert-claims-microsofts-topological-qubit-doesnt-hold-up/
Microsoftは2025年2月、特殊な導電性ワイヤーに生じる小さなギャップを見つけるソフトウェアを開発したとNatureで報告しました。同社は、このギャップの安定した検出が壊れにくい量子ビットにつながると説明しています。この発表の際、Microsoftは「Majorana 1」と名付けた量子チップも公開し、将来のトポロジカル量子ビットの実現に向けた基盤技術として位置付けました。
Majorana 1の発表内容については、以下の記事を読むとよくわかります。
Microsoftが量子プロセッサー「Majorana 1」を発表、「数年内に産業規模の重要な問題を解決できる」と期待 – GIGAZINE
ただし、このMicrosoftの論文に対して、発表当時から一部の物理学者によって反論が唱えられました。
Microsoftは量子プロセッサー「Majorana 1」によるブレークスルーを主張する一方物理学者は「発表された論文にはデータが不足している」と懐疑的 – GIGAZINE
そして、レッグ氏もMicrosoftのソフトウェアが示した結果にはばらつきがあり、ギャップを確実に見つけられた証拠にはならないと指摘しました。
Microsoftの論文における問題の1つはデータの見せ方についてです。レッグ氏によると、Microsoftのグラフ作成コードは、条件に合った領域のうち最も大きな1つだけを表示する設定だったとのこと。そのため、同じ検出手順を通過した別の領域が画面上から除かれ、研究者が都合のよい結果だけを中心に示したように見えると主張しています。
もう1つの問題はPythonによるデータ処理の方法です。レッグ氏は、ソフトウェアのコードが電圧の実際の値ではなく、データ配列の中での位置を基準にして一部のデータを反転していたと指摘。つまり、数値そのものではなく並び順を使って計算していた可能性があり、測定結果の解釈を誤らせるおそれがあるというわけです。
さらにレッグ氏は、元の論文には含まれなかった広い範囲のデータに、明確なギャップではなくランダムなノイズが見られるとも指摘しています。レッグ氏はこのノイズとなるデータが装置内の乱れを示しており、Microsoftが主張する状態の前提条件を満たしていない可能性があると述べ、「見つけたい信号だけを詳しく調べ、信号の存在に疑問を投げかけるデータが十分に示されなかった」ことを問題視しています。
レッグ氏の論評に対し、Microsoftは研究結果と開発計画を支持するという反論をNatureに掲載し、指摘されたコード上の問題は軽微であって測定結果を適切に考慮していないと述べています。
Reply to: On the robustness of topological gap detection via transport | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-026-10568-7
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