AI技術のめざましい発展はさまざまなタスクを便利にする一方で人間の仕事を奪うという懸念もあり、2025年の1年間でAIが純雇用をイギリスで8%・日本で7%・ドイツで4%減少させたという調査結果もあります。そのような中で、「大規模言語モデル(LLM)が私のソフトウェアエンジニアとしてのキャリアを侵食しており、どうすればいいのか分かりません」というブログ記事が大きな反響を集めています。
LLMs are eroding my software engineering career and I don’t know what to do | the human in the loop
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Replies to comments on my “LLMs are eroding my career” post | the human in the loop
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ブログ記事を書いたのは2026年で実務経験10年を迎えるというソフトウェアエンジニアです。著者はウェブのフロントエンドエンジニアからキャリアをスタートさせ、すぐにバックエンドに転向してしばらく活躍した後、金融や簿記、決済処理といった分野のソフトウェア開発の仕事に携わってきたそうです。そして、その分野向けに効果的なプログラムを作成する方法について多くを学び、自分自身を他のエンジニアと差別化するためにその分野の専門家になることにキャリアの焦点を当てるべきと考えていたと話しています。
著者は2025年に金融業界の企業に就職しました。その企業はAIを積極的に活用しており、入社初日からChatGPTとClaude Enterpriseのアカウントを与えられて研究や調査、さらにはコーディングにもそれらを使うよう勧められました。ただし、本番環境に導入されるコードはすべて自分で確認し、責任を持つべきだという注意も受けました。
著者は自分の知識を高く評価しており、LLMがそれに取って代わることはできないと考えていたことから、AIの支援を最小限に抑えながらコーディング前に書く設計ドキュメントを作成しました。すると上司から連絡があり、「コードの納品ペースは良いが、設計ドキュメントの納品に時間がかかりすぎている。AIは使っているか?もっとAIを使うべきだ」と言われました。そこで実際にAIツールを使用したところ、執筆作業や意思決定のスピードアップに大いに役立ったと感じたそうです。
著者は「私は気づき始めました。決済システムの設計方針や実装上のトレードオフ、二重請求防止のための設計など、私が長年蓄積してきた専門知識は、AIへのプロンプト入力で呼び出せるものになっていました。AIモデルはまだ多少の調整が必要だったものの、長年の実務経験を経て初めて脳内で身につく最も難しい部分を適切に整理できました。それが私にとって最初の衝撃でした」と語っています。
著者が次に「AIにできない人間の優位性」と考えていたのはデバッグ能力でした。分散システムの障害解析やレースコンディション(競合状態)の調査には長年の経験が必要であり、それは著者が長期的な雇用を獲得するきっかけとなった能力だといいます。ところが、2025年にAnthropicがAIエージェント搭載のコーディングツール「Claude Code」をリリースし、OpenAIも2025年9月に「GPT-5-Codex」を発表するなど、AIコーディングツールやエージェント機能が進化していく中で、以前なら丸一日かけてデバッグしていたようなバグがAIコーディングツールによって一撃で解決されるのを目にしたと著者は話しています。
ブログ記事で著者は「もちろん、コードをレビューしてロボットを操縦する人が必要なので、私はまだ雇用される意味があります。しかし、今の私はただの代替可能なエンジニアの一人に過ぎません。LLMを操縦する他のシニアエンジニアが持ち合わせていないような専門知識は、私には何もありません。金融と決済に関する私の専門知識、何時間もの汗と涙で培ったデバッグの直感力と分散システムに関する知識は、今やプロンプトで引き出せるものになっています。私たちは、ジェネラリスト(総合型人材)とスペシャリスト(専門家)はそれぞれの役割を常に担うものだと教えられてきました。しかし今や、市場は誰もがジェネラリストになるよう促しています。それ自体は悪いことではありませんが、需要と供給の経済学の観点から見ると、誰もがジェネラリストになれば、需要がなくなるためジェネラリストの価格は下がります。そして、需要が枯渇しつつあることは明らかです」と主張しています。
それでも著者は、ソフトウェアアーキテクチャやコード品質の維持は依然として人間の役割だと考えています。AIエージェントはコードの重複や循環依存などを引き起こしやすく、人間による設計上の判断が必要だというわけです。しかし一方で、業界全体では「コードは人間ではなくAIが読むものになりつつある」と感じられることがあるほど、高品質な設計を追求する価値そのものが「趣味レベル」と言われるほど低下しているのではないかと危機感を示しています。
著者は最後に「私は当面の間は同じ職種で働き続けるだろうと思っています。しかし、長期的なことについてはどう考えればいいのか分かりません。そして、これは私だけの問題ではないと分かっています。当社は現在、いくつかの職種で採用を再開しており、専門分野の知識はもはや大きな差別化要因ではありません。もちろん、これまで専門分野を深く掘り下げる機会がなかった優秀なエンジニアにとっては、就職のチャンスが増えるという意味で良いことですが、専門分野の知識を蓄積することに人生を費やしてきた他の優秀なエンジニアたちが、今や同じ土俵で競争しなければならないというのは、悲しいことでもあります」と結論付けました。
このブログ記事はSNSや掲示板などの開発者コミュニティでも大きな話題となりました。ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでは「手作業でコードを書くことは楽しい挑戦と見なされ、AIは電卓のように見なされるようになるでしょう」と著者の考えに共感する声のほか、ブログ記事の「私は10年間かもっと長い期間かけて、ますます自分の価値が下がっていくようなことを上達させてきました」という部分に共感しつつ、「これが現実であり、この業界では昔からずっとそうでした。そして、それに気づくには約10年かかります。私は数年後に定年退職を迎える予定ですが、私が40年近くかけて学んできたことのほとんどは、もはや通用しなくなっているか、せいぜい今日のソフトウェア開発のやり方にはそぐわなくなってきています。そして、それは昔からずっと変わらないことです」と種類が変わっただけでAI技術によって対応を迫られるのはエンジニアとして良くある流れと指摘する意見もあります。
一方で、「著者と同様に金融系でLLMを使っているが、AIエージェントは定期的に間違えるため、専門知識を持ったエンジニアが修正する必要がある」と専門知識の重要性を強調する意見や、「ブログの著者が最初にAIに崩壊させられると考えている分野は、今のところ私が最も無傷だと感じている部分です。LLMは税制や会計処理の特殊性などに理解が不十分なことが多く、常に多くの微妙な問題点が見つかります」と反論するコメントもあります。また、エンジニアとして活躍してきたような人物はウェブサイトやアプリが流行していた頃にその波に乗っていたのであり、AIが発展して根付きつつあるならそれに反発して悩むのではなく、その波に乗ることが重要だとするコメントもありました。
ブログ記事が大きな反響を呼んだことで、著者は寄せられたコメントへ返信する形で別の記事を投稿しました。まず「自分も金融系でLLMを扱っているが、それで金融商品の責任者になることなどなく、専門家に判断を委ねている」という意見については、著者はAIがすべてを理解していると主張しているわけではなく、実際に複雑な部分は法務部門が担っているものの、自身が長年かけて習得した決済処理や会計システムなどに関する実務知識の多くは、現在では高性能なLLMに適切な指示を与えるだけで引き出せるようになったと経験を語りました。また、「波に乗ることが重要」というコメントに同意し、著者自身もAIが生成したコードのレビューや修正を行う「AIネイティブエンジニア」になりつつあると認めています。しかし、それは現在の最適解にすぎず、将来的にはその役割すら不要になる可能性を懸念していると述べました。また、ブログの著者が匿名であることから「これはAI業界の不安や疑念をあおる記事だ」という指摘も寄せられましたが、著者は実際に実務で経験したことを語っており、「SFの世界としか思えないAIの能力に、相応の対応を取るべきです」と警告しています。
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