人間が砂糖を好むようになったのは、狩猟採集生活を送っていた時代に高カロリーな食品を効率よく手に入れるためだったといわれていますが、近年はいつでもどこでも砂糖入りのドリンクやお菓子を手に入れられるようになりました。20件以上の研究結果を対象とした新たな分析により、砂糖たっぷりの食事が脳に与える悪影響が明らかとなりました。
これまでの研究では高脂質・高糖質な食事が身体的な健康だけでなく、学習や記憶といった認知機能にも悪影響を及ぼすことが示されています。しかし、乱れていた食生活を改善した後に、これらの悪影響がどれほど持続するのかはよくわかっていません。
そこで、オーストラリアのシドニー工科大学の生物心理学者であるシモーネ・レーン氏らの研究チームは、ラットやマウスなどのげっ歯類を用いた27件の研究結果について、体系的レビューやメタ分析を実施。高脂質・高糖質な食事から健康的な食事に移行した際、認知機能にどのような影響が出るのかを調べました。研究チームは食事と記憶力に焦点を当てつつ、一般的な活動量や食欲、不安、抑うつ症状に似た行動など、認知機能への影響を示す可能性がある他の指標も追跡したとのこと。
論文の共著者であり、レーン氏と同じくシドニー工科大学の生物心理学者であるマイク・ケンディグ氏は、動物モデルは食事が脳に与える影響を理解する上で重要だと指摘。「人間の場合、食生活の変化は運動や気分、日常生活の変化などと同時に起こるため、食事だけが脳機能に及ぼす影響を切り離して考えることは非常に困難です」と述べています。
分析の結果、2週間以上にわたって不健康な食事を与えられたげっ歯類は、少なくとも24時間にわたってより健康的な食事に切り替えられると、不健康な食事を続けたげっ歯類よりも記憶力テストで一貫して優れた成績を収めたことが明らかになりました。他の認知機能指標では、食事内容の変更に伴う一貫した改善はみられなかったそうで、この効果は記憶力に特異的なものであることが示唆されています。
また、記憶力への影響はもともとの食生活の内容によって異なり、高脂質食を食べ続けていたげっ歯類では顕著な効果がみられましたが、単なる高糖質食や高脂質・高糖質な食事を食べ続けていたげっ歯類ではあまり改善がみられませんでした。
レーン氏は、「高脂質食を健康的な食事に置き換えた後、記憶力の改善がより明確に見られました。しかし、添加糖を多く含む食事、特に脂肪と糖分の両方を多く含む食事では、回復の兆候はほとんど見られませんでした。これは、糖分が記憶回復を阻害する重要な要因である可能性を示唆しています」と述べました。

今回の分析でみられた一連の影響は、学習と記憶にとって不可欠な脳領域であり、食欲の調節にも関与している海馬の機能を反映したものと考えられています。これまでの研究では、高脂質・高糖質な食事が海馬の食欲調節機能を低下させることや、海馬の容積に悪影響を及ぼすことなどが示されています。
研究チームは論文の中で、「今回の研究結果は、食生活の改善が主に海馬に依存する空間記憶を向上させることを示唆しており、海馬が食生活やその他の環境要因の変化に特に敏感であるという証拠を裏付けています」と記しています。
ケンディグ氏は、「不健康な食生活の影響は簡単に元に戻せるという考え方が一般的です。しかし今回の研究結果は、特に添加糖の多い食事の場合、少なくとも記憶力に関して状況はもっと複雑である可能性を示唆しています。食生活の質を改善することは依然として重要です。しかし脳の健康を守るためには、不健康な食生活に長期間さらされることを避けることも重要であり、後からその影響を完全に元に戻せると思い込むべきではありません」と述べました。
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