野球で時速160kmを投げるピッチャーは、2010年頃にはMLBですら「数年に1人現れる怪物」という印象でしたが、現代では1チームに複数人いることも珍しくなくなっています。なぜ野球界全体で時速160kmピッチャーが増加しているのかについて、スポーツジャーナリストのジュン・リー氏と元MLB選手のアダム・オッタビーノ氏が解説しています。
最初にピッチャーの球速が記録されたのは1946年8月20日のことです。砲弾の速度を測定するための「lumiline chronograph」と呼ばれるアメリカ陸軍の装置がワシントンD.C.の野球場に持ち込まれました。野球殿堂入りした名投手であるボブ・フェラーがMLBの投手として初めてレーダーで投球速度を計測された選手になり、結果としてその日記録された最速の球速は時速98.6マイル(約158km)で、「人類史上最速の投球」と呼ばれました。
オッタビーノ氏は「ボールのスピード測定はそこから急速に普及しました。具体的にどうしたら測定結果を上げられるかは誰も理解していませんでしたが、誰もが速度を求めていたのです」と語っています。オッタビーノ氏もロングスローやウェイトトレーニングなどを行い、体を鍛えることで速い球を投げようとしていたそうです。
しかしリー氏は、野球のトレーニング業界では「90マイル(約145km)までなら鍛えることができる、92マイル(148km)までなら運が良ければ教えられる、95マイル(153km)以上は教えられないため才能が物を言う」という考えがあったと指摘しました。実際に、オッタビーノ氏は大学1年生で95マイル前後を投げられたことでドラフト1巡目候補と注目されましたが、2年生時点でそこからあまり伸びず、3巡目から5巡目くらいの指名候補と低く見なされるようになったと話しています。
そのような球速トレーニングの常識を変えた人物としてリー氏が挙げたのが、ピッチングトレーナー兼コンサルタントのカイル・ボディ氏です。ボディ氏はMicrosoftなどさまざまな職場でデータサイエンティストとして従事した後、野球においてデータを重視して選手の評価や戦略を考えるセイバーメトリクスに関する本「マネー・ボール」を読んだことをきっかけに、選手育成方法の研究とテストを始めました。
ボディ氏は2000年代後半から2010年代初頭にかけて、まだほとんどのプロチームが実施していなかったアプローチを試みました。「ドライブライン・ベースボール」と名付けられたトレーニング施設では、センサーや高速カメラを使った独自のバイオメカニクス研究で投球に最適なフォームを分析し、野球のボールではなくより軽いボールと重いボールを投げると球速の向上に大きな効果があること、適切なメカニクスと十分な回復を前提にすれば投球数を増やすことが故障につながるわけではなくむしろ腕が強化されることを発見しました。
そんなボディ氏の最初の弟子で大きな成功例とされているのが、NPBでも2023年と2025年に横浜ベイスターズに所属したトレバー・バウアー選手です。バウアー選手は2011年にアリゾナ・ダイヤモンドバックスに指名された後、2012年にボディ氏と出会いその科学的根拠を高く評価し、2013年にマイナーリーグのトリプルAで苦戦した後にドライブライン・ベースボールでボディ氏の指導を受け始めました。結果としてバウアー選手の速球は「野球界で最も速い球の1つ」と呼ばれるようになるまで球速を伸ばしました。
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