チャットAIはさまざまな質問に答えてくれたり、友人には話せないような相談に乗ってくれたりしますが、AIとのやり取りが原因で妄想にとりつかれてしまう「AI psychosis(AI精神病)」の報告も増えています。カナダのモントリオール大学で精神医学・依存症学部門の臨床助教を務めるアレクサンドル・フドン氏が、そんなAI精神病についての見解を示しています。
チャットAIはユーザーと感情豊かで親身なやり取りを行うため、一部の人々はチャットAIとの会話に没入してしまうことがあります。そんな中で精神疾患の臨床医らは、「生成AIが脆弱(ぜいじゃく)な人々の精神病(psychosis)を悪化させたり、引き起こしたりする可能性があるのか?」という疑問を抱きつつあるとのこと。
実際に、AIのせいでスピリチュアルな妄想や陰謀論にはまってしまう人が続出していることが報じられています。
AI精神病は正式な医学的診断名ではなく、AIシステムとの相互作用によって形成・増強・構造化された精神病の症状を説明するために臨床医や研究者が使う用語です。そもそも精神病は妄想や幻覚、思考の混乱といった症状を指す言葉であり、精神病患者は現実と妄想を区別するのが難しくなってしまいます。
精神病の妄想には宗教やテクノロジー、政治権力などの文化的な素材が含まれることが多く、今日ではAIが妄想の土台になることも増えているとのこと。一部の患者は「チャットAIが知能を持っている」「秘密の真実を伝えてきた」「思考をコントロールしようと試みた」「特別な任務のために自分と協力した」といった妄想を報告しています。これらのパターンは以前から精神病に見られる妄想と一致していますが、チャットAIは従来のテクノロジーにはなかった双方向性と強化をもたらす点で注意が必要です。
フドン氏は、精神病患者は中立的な出来事に過剰な意味づけをする傾向があると指摘しています。たとえば、道行く人が何の気なしに振り返って偶然こちらを見ることはよくありますが、妄想にとりつかれている人はこれを「自分を監視するために振り返ったんだ」「あの人物は政府のエージェントだ」といった風に、過剰に自分と結びつけて考えてしまうというわけです。
チャットAIはその設計上、ユーザーの言葉に対する応答性が高く、内容の一貫性を保とうと試み、ユーザーの文脈を考慮した返答を生成します。これはほとんどのユーザーにとっては無害なものですが、妄想と客観的な現実を区別するのが難しい人ではゆがんだ解釈を意図せず強化してしまう可能性があります。フドン氏は、「精神病の初期段階にある人にとって、 これは不気味なほどに自己肯定感を高めるものとなるかもしれません」と懸念を示しています。
また、社会的孤立や孤独が精神病のリスクを高めるということも報告されています。チャットAIは短期的には孤独感を軽減してくれるかもしれませんが、使用時間が長くなるにつれて孤独感や問題的な使用傾向が高まる傾向があるとの研究結果もあります。
孤独な人はAIチャットボットを使うとさらに孤独感が増すことが研究で判明 – GIGAZINE

記事作成時点では、チャットAIが精神病を引き起こすという直接的な証拠はありませんが、感受性の高い一部の人々に対し、チャットAIが精神病の発症因子になったり妄想を強化したりすることが懸念されています。ソーシャルメディアのアルゴリズムに関する研究では、自動化システムが強化ループを通じて極端な信念を増幅させる仕組みが実証されており、チャットAIも同様のリスクをもたらす可能性があるとのこと。
また、そもそもAI開発者のほとんどが重度の精神疾患を考慮してシステム設計をしていない点にも注意が必要です。チャットAIに備えられたユーザー保護機能は精神疾患ではなく、自傷行為や暴力などに焦点を当てる傾向があるため、メンタルヘルスに関する知識とAI導入のギャップが生じているとフドン氏は指摘しています。
メンタルヘルス的な観点からすると、特定の薬物や物質が精神疾患を持つ人にとって危険であるのと同様に、チャットAIとのやり取りにも注意が必要です。また、患者とチャットAIのやり取りを評価・対処する臨床ガイドラインや、AI開発者が負うべき注意義務や患者の妄想を助長した場合の責任の所在などについても議論する必要があります。
フドン氏は、「AIは消え去ることはありません。今こそ、メンタルヘルスの専門知識をAI設計に統合し、AI関連の経験に関する臨床リテラシーを高め、脆弱なユーザーが意図せず被害を受けないようにすることが課題です」と述べ、臨床医・研究者・倫理学者・技術者の連携が不可欠だと主張しました。
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