手の震えや歩行困難といった運動障害を示す神経変性疾患であるパーキンソン病に関して、近年は農薬への暴露がパーキンソン病を引き起こすのではないかという指摘がされています。新たに、農薬として使われるクロリピリホスが、パーキンソン病のリスク上昇と関連しているとの研究結果が報告されました。
The pesticide chlorpyrifos increases the risk of Parkinson’s disease | Molecular Neurodegeneration
https://link.springer.com/article/10.1186/s13024-025-00915-z
Widely used pesticide linked to more than doubled Parkinson’s risk | UCLA Health
https://www.uclahealth.org/news/release/widely-used-pesticide-linked-more-doubled-parkinsons-risk
Common Pesticide Exposure Linked With 2.7x Risk of Parkinson’s Disease : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/common-pesticide-exposure-linked-with-2-7x-risk-of-parkinsons-disease
農薬はパーキンソン病と関連していると指摘されていますが、具体的にどの農薬が関連しているのかや、農薬がパーキンソン病を引き起こすメカニズムについてはよくわかっていません。そこでカリフォルニア大学ロサンゼルス校の科学者が率いる研究チームは、パーキンソン病の危険因子とされている農薬のクロリピリホスについて研究を実施しました。
クロリピリホスは有機リン系の殺虫剤であり、作物の虫よけや建築物のシロアリ除去などに用いられてきました。イギリスでは2016年に使用禁止となったほか、ヨーロッパでも2020年に農薬承認が取り消されて全面禁止、アメリカでも2021年に全面禁止となりましたが、かつては農薬として広く使用されていました。
まず研究チームは、パーキンソン病患者829人と非パーキンソン病患者824人を対象に、自宅や職場の住所と1974年までさかのぼるカリフォルニア州の農薬使用記録を組み合わせ、それぞれがどの程度クロリピリホスにさらされたのかを推定しました。
その結果、長期にわたって自宅や職場でクロリピリホスにさらされた人々は、そうでない人と比較してパーキンソン病の発症リスクが2.5倍以上高いことが判明。特にクロリピリホスにさらされたのが10年以上前にさかのぼる人々では、パーキンソン病の発症リスクが大幅に上昇していました。これは、症状が現れるずっと以前から始まることが多いパーキンソン病の性質と一致しています。
続いて研究チームは、クロリピリホスにさらされることとパーキンソン病の発症の因果関係を調べるため、マウスとゼブラフィッシュを用いた実験を行いました。
実験では、人間がクロリピリホスを吸入する方法を模倣して、マウスにエアロゾル化したクロリピリホスを11週間にわたり吸わせました。すると、クロリピリホスにさらされたマウスは運動障害を呈したほか、パーキンソン病患者と同様にドーパミン作動性ニューロンの喪失がみられました。これらのマウスでは脳の炎症に加え、パーキンソン病患者の脳で凝集することが知られるα-シヌクレインの異常蓄積も示されたと報告されています。
また、ゼブラフィッシュを用いた実験では、クロルピリホスが蓄積したタンパク質を分解するオートファジーが阻害され、ニューロンが損傷を受けることが確認されました。研究チームがオートファジーを刺激したりα-シヌクレインタンパク質を除去したりすると、ニューロンは損傷から保護されたとのことです。
論文の上級著者であり、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の神経学教授を務めるジェフ・ブロンスタイン博士は、「この研究は農薬一般としてだけでなく、クロルピリホスがパーキンソン病に対する特定の環境リスク要因であることを証明しました」「動物モデルで生物学的メカニズムを示すことにより、この関連性が因果関係にある可能性が高いことを実証しています」とコメント。また、オートファジーの機能不全がニューロンへの毒性を示したという発見は、農薬の影響からニューロンを保護する潜在的な治療戦略の開発につながるかもしれないと主張しました。
なお、厚生労働省や経済産業省が2025年9月に作成した資料によると、日本では過去10年間でクロルピリホスの製造や輸入は確認されていないそうです。
第一種特定化学物質に指定することが適当とされたクロルピリホス、中鎖塩素化パラフィン(MCCP)並びに長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)とその塩及びLC-PFCA関連物質が使用されている製品で輸入を禁止するものの指定等について(案)
(PDFファイル)https://www.meti.go.jp/shingikai/kagakubusshitsu/anzen_taisaku/pdf/2025_02_01_01.pdf
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