デジタル画像にディザリングが必要な理由 – GIGAZINE


デジタル画像には、画像の色数を削減したり異なる色で置き換えたりする際に使われる「ディザリング」という技法があります。ディザリングはどのようなもので、なぜ必要なのかについてデザインエンジニアのダン・ホリック氏が解説しています。

Why do we need dithering? | Dan Hollick
https://typefully.com/DanHollick/why-do-we-need-dithering-Ut7oD4k

デジタル画像における色表現法のひとつが、「RGB(赤、緑、青)」です。RGBでは赤、緑、青の3要素を8bitずつ、合計24bitで扱うことで、約1670万色という色数を表現できます。しかし、すべての色をRGBで表現できるわけではありません。古いゲーム機や初期のウェブ画像形式のように、限られた色数しか使えない環境では、わずか16色や256色といった制約の中で、「できるだけ滑らかに見える画像」を作る必要がありました。

限られたパレットや低いビット深度の色で代替して画像内の色数を減らすことを「量子化」と呼びます。量子化はビット数を削減できる一方で、本来緩やかなグラデーションであるべきところに、急激な色の変化が生まれてしまうという問題があります。そこで、隣接する2つの色にノイズを加えることで、人間の目の錯覚を利用して「存在しない色をあるように見せる」ことによってグラデーションを近似する技術がディザリングです。

以下は、1670万色を使ったフルカラー(左)、216万色だけで描画したWebセーフカラー(中央)、ディザリング後のWebセーフカラー(右)を比較したもの。フルカラーのなめらかなグラデーションがWebセーフカラーでは段差になってしまいますが、ディザリングを加えるとフルカラーに近いグラデーションになっています。画像の黄色い四角はグラデーションの中から1ピクセル相当の色を拡大表示したサンプルで、フルカラーでは均一なイエローですが、Webセーフカラーでは使える色が少ないため似た色の差がわかりやすくなっており、これが階段状の見た目を生みます。そこでディザリングでは、ピクセル内でノイズを微細に散らすことで、滑らかっぽく見せているそうです。


ディザリングを理解するための基本的な方法として、「オーダード(配列)ディザリング」というものをホリック氏は例に挙げています。配列ディザリングはランダムではなく決まったパターンを使ってノイズを加える方式で、ピクセルを処理する順序を表す「ベイヤーマトリクス」という小さな表を作成します。ベイヤーマトリクスに使える色をスケーリングしたら、明るさのしきい値を決めます。

描画したい画像を2×2のピクセルグループに分割したら、ベイヤーマトリクスのしきい値の表と比較しながら、どのピクセルを明るくしてどれを暗くするか規則的に決めていきます。これにより、例えばモノクロ画像におけるさまざまな明るさのグレーは、白と黒の分布だけで再現できるというわけ。


配列ディザリングは計算が軽く均一なパターンを得られるという利点がある一方で、しきい値マップによって生成されるパターンがかなり目立つという欠点があります。「フロイド-スタインバーグ・ディザリング」はディザリングが目立たないようにするためのアプローチで、「あるピクセルが元のピクセルよりもはるかに明るい場合、隣接するピクセルを暗くすることで補正する」という誤差を拡散する仕組みにより、全体として量子化誤差がゼロに近づきます。

ディザリングアルゴリズムは他にも、広範囲の周囲ピクセルに誤差を分配する「ジャービス・ジュディス・ニンケ誤差拡散」、より簡略化して高速化した広範囲誤差拡散「ストゥッキ誤差拡散」、周囲少数ピクセルに誤差を分散させる高速・軽量誤差拡散「アトキンソン誤差拡散」など複数の種類があります。


しかし、現代ではフルカラーよりも滑らかな色彩表現ができる高ビット深度カラーが主流になっています。ホリック氏は「ディザリングはもはや必要ありません。ディザリングは、レトロな美的感覚を演出するだけなのです」と述べています。

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