筋力トレーニングはたった数週間で腸内細菌叢に変化をもたらす可能性 – GIGAZINE


筋力トレーニングは健康にとって非常に重要であることが示されており、糖尿病や心血管疾患などのリスクを下げることや、睡眠の改善にも役立つといわれています。プレプリントサーバーのbioRxivに掲載された論文では、週2~3回の筋力トレーニングがわずか8週間で腸内細菌叢(そう)に変化をもたらすとの研究結果が報告されました。

Resistance Training Reshapes the Gut Microbiome for Better Health | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2025.08.13.670057v1


Does resistance training really improve your gut microbiome?
https://theconversation.com/does-resistance-training-really-improve-your-gut-microbiome-265221

腸内にはさまざまな細菌や真菌、ウイルスなどが大量に生息しており、腸内細菌叢と呼ばれています。これらの微生物は人体の機能だけでは消化できない食物を分解し、より多くの栄養素やビタミンを摂取できるようにしてくれます。また、一部の細菌は心身共に健康な人の腸内に多く生息し、健康をサポートすると考えられる化合物を生成しているとのこと。

腸内細菌叢の構成は一定ではなく、食事の内容や年齢、睡眠の質、運動習慣などによって異なります。そこで、ドイツ・テュービンゲン大学の研究チームは、普段運動をしていない被験者に筋力トレーニングをしてもらい、腸内細菌叢がどのように変化するのかを調べる実験を行いました。

実験には普段運動をしていない150人の被験者が参加し、8週間にわたって週2~3回の筋力トレーニングを行いました。被験者は軽い重量で回数を多め(15~20回)に行うか、重い重量で回数を少なめ(8~10回)に行うかを選択できました。筋力トレーニングのメニューには、チェストプレスや腹筋、レッグカールレッグプレス、背中のトレーニングなどが含まれ、それぞれ2セットずつ行ったとのこと。

回数多めのグループと少なめのグループの両方で、8週間のプログラム終了時に筋力と体組成に改善をもたらしました。研究チームはプログラム前、プログラム開始から4週間後、プログラム開始から8週間後に便サンプルを採取し、被験者の腸内細菌叢がどのように変化したのかを追跡しました。


実験では被験者ごとに筋力向上の度合いが異なっており、研究チームは実験開始前からの筋力向上が多かった上位20%の被験者を「高反応者」、筋力向上が下位20%にとどまった被験者を「低反応者」に分類して、腸内細菌叢の変化と合わせて分析しました。

その結果、高反応者では他の人々にはみられなかった、腸内細菌叢の顕著な変化が起きていたことが示されました。高反応者のグループでは、腸内細菌叢に含まれる16種類の細菌が増加し、11種類の細菌が減少していました。

特に有意な増加がみられたのは、健康的で抗炎症性の腸内細菌叢と関連付けられているFaecalibacterium(フィーカリバクテリウム属)と、Roseburia hominis(ロゼブリア・ホミニス)という細菌です。これらの細菌は短鎖脂肪酸の一種である酪酸を生成することで知られています。酪酸は腸内細菌が食物繊維を分解する際に生成され、体にエネルギーを供給したり、腸内壁の健康を維持して有害な細菌が血流に入るのを防いだりと、複数の役割を果たします。

なお、便サンプル中の酪酸が実際に増加したことは確認されておらず、あくまで酪酸を生成する細菌のみが増加したと報告されています。また、今回の実験では一般的に良好な健康状態と関連付けられている細菌が減少し、健康状態の悪化と関連付けられる細菌が増加する例も確認されており、腸内細菌叢の多様性が浮き彫りとなりました。


今回の研究は、あくまで筋力トレーニングと腸内細菌叢の変化の関連性について示したものであり、「筋力トレーニングをしたから腸内細菌叢が変化した」「腸内細菌の変化が筋力の向上をもたらした」といった因果関係は不明です。

被験者は実験中に食生活を変えないように指示されていましたが、筋力トレーニングに触発されて無意識のうちに食事内容が変わり、それが筋力トレーニングの成果と腸内細菌叢の変化をもたらした可能性もあります。

なお、論文はプレプリントサーバーで発表された段階であり、記事作成時点では正式な査読プロセスを通過していないという点にも注意が必要です。

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