1人のエンジニアが開発した「議員や関係者に一斉にスパムメールを送信するサイト」がEUのチャットコントロール法を防ぎつつある – GIGAZINE


EUの政策執行機関である欧州委員会は児童を保護するという名目を掲げ、すべての通信内容とファイルのスキャンを義務づける児童性的虐待規制案(チャットコントロール法)を推進しています。このチャットコントロール法は危険かつ無意味であると批判されており、さまざまなプライバシー専門家や企業が反対活動を行っています。そんなチャットコントロール法が、デンマークのソフトウェアエンジニアが開発した「議員や関係者に一斉にスパムメールを送信するウェブサイト」により、否決に向かいつつあると報じられました。

One-man spam campaign ravages EU ‘chat control’ bill – POLITICO
https://www.politico.eu/article/one-man-spam-campaign-ravages-eu-chat-control-bill-fight-chat-control/


チャットコントロール法は児童保護を目的としてEUでたびたび審議されてきましたが、検閲対象が児童ポルノだけでなく薬物使用や政府への抗議活動、政治批判などに拡大する懸念があるほか、犯罪者による悪用や誤検知による被害などが生じるリスクもあります。また、児童ポルノのやり取りの少なくない割合が10代の恋人同士で同意の上で行われていることや、児童ポルノの多くがオフラインで子どもと接触できる身近な大人によって作られているため、チャットコントロール法の導入には意味がないとの指摘がされています。

あらゆるプライベートなチャットやファイルを政府の指示で検閲する「チャットコントロール法」が危険で無意味な理由とは? – GIGAZINE


また、チャットコントロール法はSignal、WhatsApp、Telegramといったメッセージアプリだけでなく、対人コミュニケーションが含まれるサービスのプロバイダー全体に適用されます。これにより事実上あらゆるデジタルサービスが監視の対象となってしまい、暗号化が無効化されてしまうとのこと。

EUの「チャット規制法」は児童性的虐待コンテンツ対策を隠れみのにメッセージアプリだけでなく幅広いデジタルサービスの暗号化を無効にする危険な法案であるという指摘 – GIGAZINE


このように広範な問題を抱えるチャットコントロール法は、2025年10月14日にデンマークが議長となるEU理事会で最終投票が行われる予定です。そんな中、デンマーク人のソフトウェア開発者であるヨアヒム氏が開設した「Fight Chat Control」というウェブサイトが、大きな影響を与えていると政治系メディアのPOLITICOが報じました。

Fight Chat Control – Protect Digital Privacy in the EU
https://fightchatcontrol.eu/


Fight Chat Controlはチャットコントロール法の問題について解説し、各国政府の立場を示すと共に、欧州議会議員に直接メッセージを送る機能を提供しています。ページを下にスクロールすると、簡単な操作で各国政府関係者や欧州議会議員へチャットコントロール法に反対する内容のメールを一斉送信するフォームがあります。


スウェーデン社会民主党の欧州議会議員であるエヴィン・インシル氏は、「私たちはFight Chat Controlに関するメールを毎日何百通も受け取っています」とコメント。また、EU各国の常駐代表事務所に勤務する外交官3人も、大量の電子メールを受け取ったと証言しました。

雇用主が選挙運動との関わり合いを望まないため姓を公表していないヨアヒム氏は、ウェブサイト運営にかかる費用をすべて自己負担しているとのこと。関係者へ一斉にメールを送るというヨアヒム氏の手法は型破りですが、ポーランド政府がFight Chat Controlに言及する声明を発表したほか、デンマークでもFight Chat Controlが推進する嘆願書に5万人以上の署名が集まるなど大きな影響力を持っています。

ヨアヒム氏によると、10月初旬時点でウェブサイトへの訪問者数は約250万人に達し、その大半がEU域内からのアクセスだとのこと。メールは訪問者自身のメールクライアントから送信されているため、送信されたメールの総数を正確に把握することはできませんが、推定では数百万通のメールが送信されたとみられています。あるEU外交官はPOLITICOに対し、Fight Chat Controlが主導するキャンペーンの影響もあり、一部のEU加盟国はチャットコントロール法への支持をためらっていると述べました。

10月8日には、EUの大国であるドイツが複数の活動家や主要団体からの圧力を受け、チャットコントロール法に反対することを表明しました。

Germany slams brakes on EU’s Chat Control snoopfest • The Register
https://www.theregister.com/2025/10/08/germany_chat_control_opposition/


Germany will not support ‘Chat Control’ message scanning in the EU | The Record from Recorded Future News
https://therecord.media/chat-control-eu-germany-will-not-support-law

EU理事会は投票手続きに「特定多数決」という方式を採用しており、可決を阻止するには少なくとも4カ国以上の反対が必要であり、反対国の人口総数がEU人口の35%以上であることが求められます。ドイツの人口はEU人口の実に19%を占めるため、ドイツがチャットコントロール法に反対したことは非常に大きな意味を持っています。

また、40社を超える欧州企業がバックドアの義務化を懸念し、チャットコントロール法に反対する公開書簡を提出しています。

ヨーロッパの未来がかかっているチャット・コントロールに反対する公開書簡 | Tuta
https://tuta.com/ja/blog/open-letter-against-chat-control


Europe’s future is at stake: Open letter against Chat Control | CryptPad Blog
https://blog.cryptpad.org/2025/10/07/open-letter-against-chat-control/

Element signs Chat Control open letter
https://element.io/blog/element-signs-chat-control-open-letter/

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