チームコミュニケーションツールのSlackが非営利団体に対し3000万円近い値上げを突然通告し大騒ぎに、猶予期間もわずか5日間と異常に短期間 – GIGAZINE


チームでの使用が想定されたコミュニケーションツール「Slack」は、チャットルームやチャンネルを使ってやりとりしたり、その他のクラウドサービスやタスク管理サービスなどと連携したりすることが可能なため、ビジネスの場面などで重宝されています。そんなSlackが「今週中に5万ドル(約740万円)の追加支払い、以後は年額20万ドル(約2900万円)の支払いに同意しない場合は、Slackワークスペースを無効にしてすべてのメッセージ履歴を削除する」という脅迫的なメッセージを送ってきたと、エンジニアコミュニティに所属するマハド・カラム氏が報告した結果、SlackのCEOまで登場する大騒ぎになりました。

Slack is extorting us with a $195k/yr bill increase – Mahad Kalam
https://skyfall.dev/posts/slack


カラム氏は世界中のティーンエイジャーにコーディング教育とコミュニティを提供する「Hack Club」という非営利団体に所属しており、Hack Clubではコミュニケーションツールとして11年近くにわたってSlackを使用していたと話しています。Slackは2022年7月にサービス開始以来初の値上げをしていますが、カラム氏は「Slackが無料の非営利団体向けプランを撤廃し、年間5000ドル(約74万円)のプランに移行する必要ができた際も、喜んで支払いました。妥当な料金であり、コミュニティに提供されているサービスの価値を高く評価していたからです」と語っています。

そんな中、2025年9月16日にHack ClubはSlackから「今週5万ドル、年間20万ドルの追加支払いに同意しない場合は、Slackワークスペースを無効にして、すべてのメッセージ履歴を削除する」というメッセージを受け取りました。突然約740万円の支払いをふっかけられ、年額も3000万円近く増加するという点も問題ですが、何より問題なのは猶予期間が「今週中」とわずか数日しかなかった点にあります。

コミュニケーションツールなどが料金の値上げやプランの変更を実施することはしばしばありますが、多くの場合で値上げの告知は実施の数カ月前に告知されるものであり、カラム氏は「私見では、このような大幅な値上げには6ヶ月の猶予期間が最低限、場合によってはそれ以上が必要です」と述べています。猶予期間が与えられれば、ユーザーは料金の値上げやサービスの変更に応じるか、従来使用していたデータをまとめて他のサービスに移行するかを選ぶことができます。しかし、Slackの勧告は「今週中」と猶予期間をほとんど設けていないため、カラム氏および数十人のスタッフとボランティアは、ごく短期間でシステムの更新や新しいチームコミュニケーションの再構築、長年蓄積されたデータの移行に大慌てで奔走する必要が発生しました。


カラム氏は「この強制的な移行による機械的損失は計り知れないほどです。時価総額数兆円の企業が、10代の若者向けに展開している小さな非営利団体に、1週間足らずで巨額の資金を拠出するか、すべてのコミュニケーションを遮断するかの選択を迫るという、強引な手段を講じているのです。全く馬鹿げています」と非難しています。その上で、「今回の経験から、データの所有権を確保したサービスを利用することが非常に重要だと学びました。特に中小企業の方は、ぜひ同様の移行をオススメします」とアドバイスしています。

今回の件はソーシャルニュースサイトのHacker Newsに取り上げられて話題を呼びました。Hack Clubの共同創設者と名乗るクリスティーナ氏は、「これを読んでくださっている皆様、Slackの担当者と連絡を取り、移行期間についてご相談いただければ幸いです。たった5日だと、Hack Clubや卒業生の何千人もの10代のプログラマーたちの成果が不必要に損なわれてしまいます。私たちはメッセージサービスを無料で求めるつもりはありません。Slackの目的が、法外な料金を徴収するかプロジェクトと成果を永久に破壊するかのどちらかを選ぶことに変わったのならそれでも構いません。移行には妥当な時間を与えてください」と呼びかけました。

クリスティーナ氏の投稿に同情の声とSlackへの非難が集まった結果、Slackの最高製品責任者(CPO)と名乗るロブ氏が反応し、「これは間違いでした。修正中です」とコメントしたほか、「今回のケースは、請求プロセスにおける不備が原因でした。私たち自身と顧客基盤が拡大するにつれて、再び間違いを犯さないという保証はできません。非営利団体の成長に合わせて、より明確なガイダンスと十分な猶予期間を提供できるよう、請求およびコミュニケーションプロセスを必要に応じて見直し、変更していきます」と説明しています。さらに、SlackのCEOであるデニス・ドレッサー氏もHacker Newsにコメントしており、「ご心配をおかけしました。誠に申し訳ございません。チームがこの件を把握し次第、修正を行い、Hack Clubの非営利団体向け価格を元に戻しました。私たちに責任を負わせてくれてありがとうございます」と述べました。

その後、Slackは公式Xで「私たちはミスを犯しました。これは私たちの請求プロセスにおける見落としの結果であり、Hack Clubを以前の非営利団体向け価格に戻し、彼らのワークスペースが完全にアクセス可能な状態を維持できるように直接協力しています。私たちはHack Clubが若者をコーディングとテクノロジーの分野で刺激し教育する活動を高く評価しており、この状況が引き起こした懸念を申し訳なく思います。私たちは、請求およびコミュニケーションのプロセスを見直し、非営利団体に対してより明確なガイダンスと成長に伴う適切な猶予期間を提供します」と問題の修正と謝罪を含めた声明を発表しました。


ブログで問題を報告したカラム氏の元にも、SlackのCEOから連絡があり、事態を修正する旨の申し出があったそうです。カラム氏は「今回の件を広めてくれた皆さんに心から感謝します。これほど多くの人が私たちをサポートし、この問題を解決するのに協力してくれたことは、信じられないほど心温まることでした。とはいえ、今回の出来事は、外部ソフトウェアサービスへのデータ委託についてより深く考えるきっかけとなり、今後は自社データの所有権の確保が極めて重要な課題となることを改めて認識させてくれました。皆さんにもぜひ同じように考えていただければ幸いです」と語りました。

一方で、Hack Clubの問題が解決した後も、Slackに対して批判的な意見を送るコメントが集まっています。あるユーザーは、Slackについて「ユーザーが提供した重要なデータへのアクセス権を販売するという、ランサムウェアと同じようなビジネスモデルです。このような企業では、時間の経過とともに請求額が大幅に増加することを覚悟しておくべきでしょう。仮にこれで一部の顧客を失ったとしても、残った顧客からの高い収益によって損失は穴埋めされます」と指摘しています。また、Hack Clubと同じようなケースは別の独立した技術教育チームでも発生しており、Slackの衰退を嘆くコメントが寄せられています。

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