チャットAI「Claude」の開発元であるAnthropicが著作権侵害で作家グループから訴えられた件で、同社は和解のために15億ドル(約2200億円)を支払うことが明らかになりました。
“First of its kind” AI settlement: Anthropic to pay authors $1.5 billion – Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2025/09/first-of-its-kind-ai-settlement-anthropic-to-pay-authors-1-5-billion/
2024年8月、作家のアンドレア・バーツ氏、チャールズ・グレーバー氏、カーク・ジョンソン氏らが、LibGenやBooks3などの海賊版サイトのデータや物理書籍のスキャンデータをClaudeのトレーニングに使用することで著作権を侵害したとして、Anthropicを訴えました。
Anthropicが著作権侵害で3人の作家に訴えられる、Claudeのトレーニングに著作権で保護された何十万冊もの本を使用したとの主張 – GIGAZINE
その後、訴訟を担当したカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所は「著者の許可がなくても、合法的に購入した書籍でAIをトレーニングすることはフェアユースに当たり、著作権侵害にはならない」という判決を下しました。
「AI企業が合法的に取得した書籍でAIをトレーニングするのに著者の許可は必要ない」という判決が下される – GIGAZINE
しかし、2025年8月末に裁判所に提出された書類から、Anthropicと作家グループの両当事者が和解に合意したことが明らかになっています。Anthropicが和解に合意した理由は、高額な損害賠償金を避けるためと指摘されました。
AnthropicがAI学習の著作権侵害訴訟で作家グループと和解へ、最大約150兆円の損害賠償を回避か – GIGAZINE
さらに、2025年9月6日になって作家グループはテクノロジーメディアのArs Technicaに対してプレスリリースを提供し、和解の詳細を公表しました。プレスリリースには「アメリカにおける著作権訴訟史上、公表された和解金としては最大の金額(15億ドル)を回収することに成功した」と記されています。今回の和解は「AnthropicがAIのトレーニングに利用した海賊版コンテンツ50万作品」を対象としており、裁判所が和解を承認した場合、作家グループは盗用された作品1点につき3000ドル(約44万円)を受け取ることが可能とのこと。なお、作家グループによると「提出された請求の数により、最終的な金額は作品1点あたりさらに高くなる可能性もある」そうです。
Anthropicは既に和解条件に合意していますが、和解が確定するには裁判所の承認が必要です。プレスリリースによると、暫定承認は2025年9月の第1週にも得られる可能性があるものの、最終決定は2026年まで延期される可能性があります。
集団訴訟のきっかけとなった最初の訴訟を起こした3人の作家の代理人を務めるジャスティン・ネルソン弁護士は、「AI時代」で「初」となる和解が承認されれば、支払われる金額は「他の既知の著作権回復額をはるかに上回るだろう」と認めました。
ネルソン弁護士は「この和解は、各クラスワークに対して意味のある補償を提供し、AI企業が著作権者に支払いを義務付ける前例となるでしょう」「この和解は、AI企業とクリエイター双方に、著作権のある作品を海賊版サイトから持ち出すのは間違っているという強いメッセージを送るものです」と語っています。
全米作家協会のメアリー・ラゼンバーガーCEOは、これは「著者、出版社、そして権利保有者全体にとって素晴らしい結果です」「企業がAIのトレーニングに著者の作品を海賊版として入手し、最も経済的に余裕のない人々から奪うことで、深刻な結果を招くことを示しています」と語りました。
全米出版者協会のマリア・パランテ会長兼CEOは、この和解は金銭面を超えて関係者にとって「有益」なものであると同意しており、「提案された和解は、AI企業がモデルの構築ブロックとしてシャドーライブラリやその他の海賊版ソースからコンテンツを違法に取得することはできないというメッセージを送る上で大きな価値があります」と述べています。
今回の訴訟において注目すべき点は、この和解により著者は訴訟の対象とならない作品に対する権利と法的請求権を保持できるという点です。また、Anthropicが著作権を侵害した可能性がある作品に対する過去および将来の請求権も放棄されません。
今後数週間のうちに和解が暫定承認された場合、著者は以下のウェブサイトを検索し、自身の作品が集団訴訟の対象となっているかどうか、そして支払いの対象となるかどうかを確認することが可能です。補償を求める著者は、和解が成立した際に通知を受け取るために連絡先情報を提供することもできます。
Home | Bartz, et al. v. Anthropic PBC
https://www.anthropiccopyrightsettlement.com/
Ars Technicaは「Anthropicは訴訟の長期化や、海賊版書籍へのさらなる支払いを回避できたことに安堵のため息をついているでしょう。しかし、AI業界全体は、今回の和解に恐怖を感じているはずです。支援者たちはこの和解がAnthropicのようなAIスタートアップを経済的に破滅させる恐れのある前例となる可能性があると指摘していました。
Ars TechnicaがAnthropicにコメントを求めたところ、同社の副法務顧問を務めるアパルナ・スリダール氏は「本日の和解が承認されれば、原告側の残された訴訟は解決されるでしょう。私たちは、人々や組織の能力拡張、科学的発見の推進、そして複雑な問題の解決を支援する安全なAIシステムの開発に引き続き尽力していきます」と回答しました。
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