ハイキングや登山などを趣味にしている人の中には、付近にトイレがないタイミングで便意を催してしまい、やむにやまれず野外で排便した経験がある人もいるかもしれません。ペンシルベニア州立大学で自然公園や保護区における人間の影響を研究しているシャリ・エデルソン氏らが、「環境や他のハイカーに害を与えずに屋外で排便する方法」についてレクチャーしています。
How to poop outdoors in a way that won’t harm the environment and other hikers
https://theconversation.com/how-to-poop-outdoors-in-a-way-that-wont-harm-the-environment-and-other-hikers-262426
エデルソン氏らは、人間の排せつ物による汚染は自然地域における重大な公衆衛生上の懸念事項だと指摘。人間の排せつ物に含まれる病原菌は長期間、時には1年以上も屋外で活性を保つ可能性があり、将来その場を訪れた人々に胃腸疾患やその他の病気を引き起こす可能性があるとのこと。
また、嵐や雪解けなどによって排せつ物が水源に流れ込むと、水質汚染が引き起こされる場合もあります。そしてもちろん、ハイキングや登山中に誰かの排せつ物や汚れたトイレットペーパーを目にすることは、レクリエーションに訪れた人々の気分を害してしまいます。
アパラチア山脈やエベレスト、ノルウェーやニュージーランドの国立公園など、世界の至るところで人間の排せつ物が問題となっています。コロラド州ホワイトリバー国有林のイーグル・ホーリークロス地区では、問題が深刻化したことを受けて、訪問者に対して排せつ物の持ち帰りが義務づけられました。
野外での排せつを減らすのに最も効果的な方法は、当然ですが「公衆トイレの設置」だと考えられており、ハイカーも登山口などにあるトイレを好んで利用することがわかっています。
しかし、公衆トイレの設置には維持管理のためのアクセス性や廃棄物の処理費用が必要であり、自然保護区の奥地や険しい山道の途中などにはトイレがないことも多々あります。さらに、たとえ登山口にトイレがあったとしても、トイレを利用したいと思った時には登山口から遠く離れているということも珍しくありません。
加えて、ハイキングや登山に訪れた人の過半数は、排せつ物が環境問題になっていることを知らないという調査結果もあるのこと。また、知っていても面倒だと思ったり、重要性が低いと見なしたりして事前に準備しないこともあるそうです。
以前の研究では、自然保護区への影響を抑えるには明確で実行可能なメッセージを発信することが重要だと示されています。30年以上にわたり、野外での排せつに関する野外レクリエーション愛好家の啓発に取り組んできた団体・Leave No Traceは、「野外で排せつする2つの方法」を推奨しています。
◆1:すべて持ち帰る
野外で排せつする時は、すべての排せつ物とトイレットペーパーを携帯トイレや専用の袋に入れて、登山口や自宅で捨てることで環境への悪影響を抑えられます。
携帯トイレには中身が漏れない頑丈な内袋や外袋に加え、臭いを抑えるための乾燥剤が含まれています。ノルウェーの自然公園を訪れた人々を対象にした調査では、ハイキング中に排便した人のうち30%が携帯トイレを使っており、そのうち87%は今後のハイキングでも携帯トイレを使用する意思を示したとのことです。エデルソン氏らは、「これらの結果は、適切なツールと情報が与えられれば人々は正しいことをする意志があること、そして人々に野生空間を保護する方法を効果的に教えられることを示唆しています」と述べました。
また、携帯トイレは災害時にも役立つため、アウトドア趣味がない人でも持っておく方がベターです。
トイレ備蓄 忘れていませんか(METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/jyutaku/toirebichiku.html
◆2:地面に埋める
また、地面に小さな穴を掘り、そこに排せつ物を埋めるという方法もあります。この際、排便を直接穴にするのが難しい場合は、付近に排便して後から穴に入れればOKです。穴を掘るのに適しているのは、「土壌を手の長さくらいの深さに掘ることができる」「湿っていて排せつ物が分解されやすい」「穴を掘っても環境が乱される可能性が低い」などの条件を満たす場所となっています。
また、穴は水源や歩道、キャンプ場などから70歩ほど離れた場所に掘り、水質汚染や誰かが誤って排せつ物を触れる可能性を減らします。穴に埋める際に注意する点として、生分解性がないウェットティッシュは絶対に持ち帰ることが挙げられます。ティッシュやトイレットペーパーも簡単には分解されないという実験結果もあるため、これらも気を付けて持ち帰るか、最初から携帯トイレを用意するのが安心かもしれません。
ティッシュやトイレットペーパーは山に捨ててもいいの? | 北海道地方環境事務所 | 環境省
https://hokkaido.env.go.jp/blog/page_00016.html
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