脳卒中で話す能力を失った女性がAIの力でコミュニケーション能力を取り戻す – GIGAZINE


カリフォルニア大学バークレー校と同サンフランシスコ校の研究者らが、脳幹梗塞を発症して話せなくなってしまった女性の電気信号を読み取って言葉にする実験に成功しました。この研究がさらに進歩して、当初より大幅に遅延が短縮されたことが伝えられています。

A stroke stole her ability to speak. Eighteen years later, scientists used AI to bring it back. – Berkeley News
https://news.berkeley.edu/2025/08/13/a-stroke-stole-her-ability-to-speak-eighteen-years-later-scientists-used-ai-to-bring-it-back/


Brain-to-voice neuroprosthesis restores naturalistic speech – Berkeley Engineering
https://engineering.berkeley.edu/news/2025/03/brain-to-voice-neuroprosthesis-restores-naturalistic-speech/

カナダのサスカチュワン州にある高校で数学と体育を教え、バレーボールとバスケットボールのコーチを務めるなど多忙な日々を送っていたアン・ジョンソンさんは、友人とバレーボールをしていた際に脳幹梗塞を発症し、30歳で話す能力と体の筋肉を動かす能力をほとんど失ってしまいました。

ジョンソンさんはほぼ完全な麻痺(まひ)と自然なコミュニケーション能力の喪失を特徴とする閉じ込め症候群(ロックド・イン症候群)と呼ばれる状態に陥り、話そうとしても口は動かず、声も出ません。時間の経過と共に首を動かすことが可能になり、泣いたり笑ったりすることもできるようになりましたが、依然として声は出ず、アイトラッキングシステムを用いたコミュニケーションを行っていました。

ところが18年後、カリフォルニア大学カリフォルニア大学バークレー校とカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者らが実施した臨床試験に参加したことで、ジョンソンさんは話す能力を取り戻しました。

頭で考えるだけでアバターから声を出せる技術が登場、脳卒中で話せなくなった女性が253個の電極とAIの力で声と表情を取り戻す – GIGAZINE


研究者らは脳の言語処理部位から情報を読み取る「脳コンピュータインターフェース(BCI)」を使った臨床試験を行っており、ジョンソンは2022年に3人目の被験者として参加しました。

研究者らはジョンソンさんに自分のアバターを選択させ、ジョンソンさんがかつて結婚式でスピーチをしたときの録音を用いて声を再現しました。そして、脳の言語処理領域にインプラントを埋め込み、ジョンソンさんに文章を見せて読み上げるように求めました。この際に脳から発せられた信号をAIで処理して実際の言葉に変換し、アバターで表情を作りました。


以下の動画で、ジョンソンさんが実際に話している様子が確認できます。

How a Brain Implant and AI Gave a Woman with Paralysis Her Voice Back – YouTube


この試験が行われた2023年当時は、脳波を読み取ってから言葉に変換するまでに8秒の遅延があり、決して流ちょうとは言えませんでした。ところが、2025年3月に新たな研究内容が発表され、この遅延がわずか1秒程度に劇的に短縮されたことが明かされました。

これにより、ほぼリアルタイムで被験者の思考を言葉にできるほか、継続的に変換処理を行うので途切れることなく話し続けることも可能とのことです。

研究者らによれば、試験に使われている装置は「話そうとする神経活動」を読み取るだけであるため、人間が考えていることをそのままのぞき見るようなものではないそうです。研究に参加したゴパーラ・アヌマンチパリ氏は「私たちは彼女の心を読みたいと思ったわけではありません。彼女が何かを話そうとしているときにのみ作動するのです」と述べました。


2024年2月、ジョンソンさんは試験とは無関係の理由でインプラントを除去しましたが、研究チームとの連絡を続けているとのこと。ジョンソンさんは「自分の声を聞けて楽しかった」と感じており、将来的にはリハビリテーション施設でカウンセラーとなり、理想的には神経を読み取って稼働する義肢を使って会話したいと考えているとのことです。

研究者らは、話者が興奮しているときなど会話中に起こるトーンやピッチ、音量の変化を反映する方法のほか、BCIをワイヤレス化する方法も模索しています。

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