覚せい剤の一種である「アンフェタミン」の効果や副作用を、チャンネル登録者数2400万人超のサイエンス系YouTubeチャンネルのKurzgesagtが解説しています。
The Drug That Works TOO Well? – YouTube

アンフェタミンは過酷な労働シフトを乗り切らせたり、退屈な勉強を押し進めたり、夜明けまで踊り続ける力を与えたりすることができるという薬物です。
第二次世界大戦時は日本を含めた各国で覚醒レベルを高めるために兵士に用いられたほか、子どもに対するADHDの薬物治療で用いられることもあります。
過去15年間で、アンフェタミンは世界で最も急成長しているドラッグ市場のひとつとなっています。その規模は大麻に次ぐとのこと。
他の薬物と同じように、アンフェタミンも「現実逃避」に使うことができます。
しかし他の薬物と違うのは、アンフェタミンが「現代社会を乗りこなす力」にもなるという点です。
人間のほぼすべての行動は「集中」と「動機づけ」に依存しています。仕事、遊び、勉強、創作、運動、パーティー、戦い……どんな状況でも、疲労を乗り越え、気を散らすものを抑え、集中を維持する必要があります。
アンフェタミンは「刺激薬」であり、これを非常にうまくサポートしてくれます。刺激薬の代表例は「アンフェタミン」(いわゆる「スピード」や処方薬のアデラル、バイバンスなど)「メタンフェタミン」(より強力で依存性が高い)「MDMA」(エクスタシーなどの特殊な作用を持つもの)の3つです。
アンフェタミンの主な作用は、脳をだましてドーパミンとノルアドレナリンを大量に分泌させることです。
ドーパミンはやる気や興奮を促進する化学物質で、例えば「ゲームでラスボスを倒せるかも」といった瞬間などに沸く高揚感に似ています。
ノルアドレナリンは覚醒、集中、鋭敏さをもたらす化学物質で、正確かつ素早く指を動かし、必殺コンボを繰り出す力を与えてくれます。ドーパミンが「これは大事だ!」と指示し、ノルアドレナリンが「やり遂げるための力」を与えてくれるわけです。
アンフェタミンを摂取すると集中力が高まり、退屈な作業も楽しく感じ、気が散りにくくなり、心拍数は上がり、呼吸は早くなり、食欲や疲労は消え去ります。
コカインなどの他の刺激薬は効果が急激に現れ、すぐに切れて反動が来ますが、アンフェタミンは4~14時間も効果を持続することが可能です。
アンフェタミンはかつてはダイエット、うつ病、鼻づまり治療などに幅広く処方されていました。
しかし、記事作成時点では主にADHD(注意欠如・多動症)の治療薬として使われるのみです。
ADHDの脳は「報酬が得られない」ため集中が続かないのですが、アンフェタミンがそれを補う役割を担います。
ADHD診断の増加に伴い、処方されるアンフェタミンの量も爆発的に増加しました。
しかし薬としてだけでなく、「パフォーマンス向上の道具」として広く使われているのも事実で、テクノロジー業界や金融業界、料理人、トラック運転手、外科医や看護師まで、多忙で競争の激しい職種ではアンフェタミンの使用が広まっているとKurzgesagtは指摘。
アメリカだけでも400万人以上が違法に処方刺激薬を使用しており、特に大学生は「成績向上」のためにアンフェタミンを服用しているそうです。
しかし「明るい面」の裏には「暗い面」もあります。
例えば、作業ではなくゲームに夢中になってしまったり、ノルアドレナリン過多で不安・緊張・パニックを引き起こしたり、他人の話の遅さにイライラして人間関係が悪化してしまったり、食事・睡眠・水分の摂取を忘れて体調を壊してしまったり、長時間覚醒してしまい眠れず翌日に疲労を持ち越してしまったりなどなど。
また、服用後の「反動」も激しいです。ドーパミンが急落し、極度の疲労、気分の落ち込み、不安が襲ってきます。
常に人工的にドーパミンを摂取し続けると、感情の基準値が壊れ、快感を得にくくなり、耐性がつき、より多くのドーパミンが必要になります。
さらに、アンフェタミンを長期使用すると「精神病」(幻覚・妄想・統合失調症に発展する場合も)や「心血管ダメージ」(血管の損傷、心停止、不整脈、脳卒中など)といったリスクも高まります。
短期的な低用量の医療使用は比較的安全とされますが、健常者が長期的に大量に摂取するのは非常に危険です。
アンフェタミンは本来は病気の治療に有効な薬ですが、不適切に使えば確実に健康面に悪影響を及ぼします。そのため、「社会を高速で回す燃料でもあり、健康リスクでもある」とKurzgesagtは指摘し、「短期的には役立つかもしれませんが、長期的には持続可能な解決策にはならない」と結論付けています。
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